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おっちょこちょいのかよちゃん

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10 守りたい清水市(まち)

 
前書き
《前回》
 杉山達組織「次郎長」は秘密基地を乗っ取った組織「義元」と対峙する。だが、彼らには異世界から来たイマヌエルと言う者から貰った武器があり、返り討ちにされてしまう。そして冬田が我慢できず、「義元」の元へ飛び出した!! 

 
 組織「次郎長」を追い払った組織「義元」は勝利の喜びを挙げていた。
「へへ、やったな山口!」
「俺の『毒矢』は結構聞くな!」
「お二人、強いでやんす!」
「ヤス太郎、お前もナイスパチンコだったぜ!」
「照れるでやんす・・・!!」
「あの・・・」
 先程から内気になって戦線に立てなかったすみ子が声を発した。
「どうした、すみ子?」
「やっぱりやりすぎだったんじゃ ・・・」
「そんな事ないぜ、今のこの町を守る為だ。それにあのイマヌエルって奴から貰ったこの武器があれば怖いものなしだぜ!」
 その時、一人の女子が絶叫して近づいてくるのが見えた。
「あなた達い!!大野君に何て事するのよお!!」

「ふ、冬田さん!」
 かよ子は慌てて冬田を追いかけた。四人組に食って掛かる冬田は好きな男子を傷つけられたあまりで怒り狂っていた。
「何だお前?」
「何か大仏みたいでやんす!」
「もう許さないわあ!」
 冬田は基地に近づく。しかし、ヤス太郎がパチンコを冬田に向けて狙撃しようとする。かよ子は小石を見つけるとそれに杖を向けて石を操る能力を得た。
(この石を壁にして冬田さんをあのパチンコから守らないと!)
 かよ子は石を巨大化させて冬田を防御しようとする。巨大化した石は冬田の頭上に浮かんだ。その時にはヤス太郎もパチンコを発射していた。パチンコの玉は石に当たると大量の水を吹き出した。
「水玉でやんす。水で押し流されるでやんすよ!」
 水が石を押し流す。このままだと冬田は巨大化した石の下敷きとなってしまう。
「きゃ、きゃああーー!」
 冬田は何もできずに悲鳴をあげた。かよ子も石を退かせば何とかなるがそうすると冬田がずぶ濡れになってしまう為、なす術が思い当たらなかった。
(ダメだ、どうすれば冬田さんを・・・!?)
 その時、冬田の周りを何らかの膜のような物がドーム状となって彼女の頭上に落ちてくる石や水を防いだ。石は粉々になり、水は周囲に跳ねてなくなった。ドームも一瞬で消えた。
(え・・・?)
 かよ子は何が起きたのか理解できなかった。冬田が何か魔法か超能力でも使用したのだろうか?それとも別の誰かが助けたのか?そう考える間もなく、謎の物体が冬田をさらった。
「向こう見ずな行動しては裏目に出ますわよ」
 冬田を救ったのはフローレンスだった。
「フ、フローレンスさん!?」
「ここは退散しましょう。私に掴まりなさい」
「はい!」
 かよ子もフローレンスに掴まった。フローレンスは飛行した。
「何だあいつは!?」
「やっちまおうぜ!」
 山口は矢をフローレンスに向けて放った。フローレンスは矢に体を向けた。すると矢は念力を受けたかのように勢いを失い、落下した。
「な、なんだ、あれは!?」
 飛び去る女性と他女子二名を見る「義元」の四人。すみ子は一人の女子を見て何かを感じた。
(あの子ももしかして私と同じように・・・)

 かよ子、冬田、そしてフローレンスは神社へと降り立った。
「冬田美鈴ちゃん、冷静さを失いすぎですよ」
「はい、ごめんなさあい・・・」
「フローレンスさん」
 かよ子は質問する。
「この喧嘩を止めるにはどうすればいいんでしょうか?それにあの子達も普通じゃない力を持ってます!」
「先ずは交渉するしかありませんわ」
「で、でもどうやって!?」
「山田かよ子ちゃん、落ち着きなさい」
 フローレンスの眈々とした口調にどこかしらの力強さを感じ、かよ子は黙った。
「あのグループの中の一人、濃藤すみ子ちゃんはこの世界の異変を恐ろしく感じています。そこで私と同じ世界から来たイマヌエルという者が彼女にこの世界を守る為の道具を授けたのです」
「この世界を守る為の道具・・・。つまり、私のこの杖と同じような物なの?」
「はい、彼等が持っています道具も私達の世界から授けた物なのです」
「それならどうしてまるちゃんや杉山君を攻撃したの!?」
「それはあの子達が「能力(ちから)」を手に入れた事で喜んで使い方を勘違いしているからですよ」
「それについて私も呆れたよ」
 どこからかまた別の人物が現れた。
「イマヌエル、貴方も聞いていたのですか」
「ああ、私はこの世界を無理に変えようとする者達に対抗する為の道具を寄越したつもりなのにこんな事に使われるとはな。これは私も責任を感じているよ」
「そうですか、山田かよ子ちゃん、冬田美鈴ちゃん、この争いを私達で止めなくてはなりませんわ」
「うん、私もそう思うよ・・・」
「それでは交渉を始めましょう。私達は貴女達を濃藤すみ子ちゃんの所へ連れていきますわ」
「はい!」
 フローレンスはかよ子を、イマヌエルは冬田を連れて飛び立った。

「あいつらまた基地を取り返しに来るかもしれねえぜ」
「ああ、また来ようぜ!」
 グループ「義元」の四人は基地を出て別れた。すみ子は基地の元の所有者に迷惑を掛けてしまったという罪悪感があった。
(あの子達に何か悪い事しちゃったな・・・)
 すみ子はイマヌエルから授かった道具として不思議な力を持つという銃があった。しかし、自分は戦闘には参加できなかった。己の罪悪感から。その時、すみ子の前に何者かが現れた。一人はイマヌエルだった。
「イマヌエルさん・・・?」
「濃藤すみ子君。君の友達は私が授けた武器の本当の目的を忘れてしまっている。君に無駄な戦いを止めるのに是非協力して欲しいのだよ」
「うん、でも私にできるかな・・・?」
「ああ、戦いを止めるのは君一人ではない。ここに君と同じ事を考えている者達を連れて来たよ」
「え?」
 すみ子はイマヌエルと共にいる別の者達を見た。
「この女性はフローレンス。私と同じ世界から来た者だよ。そしてこの二人は隣町の小学校の女子、山田かよ子君と冬田美鈴君だよ」
「え?こ、こんにちは・・・」
「こんにちは・・・」
 かよ子とすみ子はお互い挨拶しあった。
「私もこの世界の異変が気になってるんだ。それでお母さんから貰ったこの杖を武器にしてるんだよ。この杖もイマヌエルさんやフローレンスさんの世界の物なんだって」
「そうなんだ・・・」
「すみ子ちゃんって言ったよね?すみ子ちゃんもイマヌエルさんから武器を貰ったって?」
「うん、そうよ。私、この前の地震のような現象が起きてからこの清水がどうなっちゃうのか心配になってるの。そんな時イマヌエルさんと出会ってあの高台にこの世界を守る為の道具があるって言われて学校の友達と行ったらその道具を見つけたんだけど、そしたらあの秘密基地があったのよ・・・」
「そうなんだ・・・」
「でもだからって人の基地を奪っていいのお!?」
 冬田はまだ落ち着きを取り戻していないようだった。
「その基地からは私達の住んでる社宅があって海も町も私達の通う学校も見えたの。それであの風景をいつまでも残しておきたいって思ってそれで基地をとっちゃったの・・・。あの子達にも悪いと思ってるし、私もこの争いを私は止めたいの・・・」
「そっか・・・。すみ子ちゃん、私も本当はこの喧嘩を止めたいよ。でも私には基地の事を教えてくれなかったし、止めようとすると秘密を知った事になって怒られちゃうんだ・・・。それに私、秘密基地を造った一人の杉山君が好きなんだ。それで嫌われるのが怖いんだよ・・・」
「分かったわ。協力しよう!」
「うん!」
 かよ子達は喧嘩を鎮静させる作戦を立て、すみ子と別れた。

 杉山、大野、ブー太郎、そしてまる子の「次郎長」は退散したのち、街角に着いていた。ブー太郎の体の痺れはやっと収まった。
「うう、やっと動けるようになったブー」
「しかし、あいつらにどう対抗しようか・・・」
 杉山は考えた。そして数日前の山田かよ子の家での闘いがなぜか脳裏に蘇った。
(あいつらの武器、なんか普通じゃねえな・・・。山田のあの魔法の杖みたいに・・・)
 その時、四人の前に一人の人物が現れた。
「お主らが組織『次郎長』か・・・」
「誰だ!?」
 その人物はいかにも江戸時代の武士のような格好で眼帯をしていた。
「某は森の石松。嘗てこの世で次郎長の子分として生きていた者だ・・・」 
 

 
後書き
次回は・・・
「四つの不思議な石」
 杉山達は「森の石松」と対面する。石松は四人に不思議な石を託す。そしてかよ子と冬田はフローレンスから飛行が可能な羽根を貰い、「義元」のメンバーのすみ子は心の中でこの争いを止める事に努めとうと考える・・・。 
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