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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第012話 3日目・2月02日『共同戦線協定(後編)』

 
前書き
更新します。 

 



――Interlude


「では衛宮志郎…お前はもしかして宝具すらも投影できるのではあるまいな?」

私は分かっていながらもあえてそれを聞いた。
当時の私と比べたら天と地ほどの差すらある完成度。
魔術回路はすべて開いている。
さらには使える魔術もすべて理解し行使できる、できないものも含めて知識も十分なほど。
魔力量も一瞬だけだったが凛に迫るものがあるほどだ。
驚くべきは放課後の凛との一戦…あそこでは手の内を見せないためにすべてのガンドを目で追い知覚、認識し最低限の力のみで打ち破り凛を圧倒させた戦闘能力。
そしてどこで誰に習ったかは知らないが黒鍵や鉄甲作用の使い方もマスターしているようだ。

「…ええ、まぁ。設計図は浮かべる事ができますから、やろうと思えば出来ると思います。でもそれはいざって時の切り札だから多用する気はないです。
無理をして力で勝っても後の宝具投影の後遺症が残るなら、そんな無茶はせずに物量作戦や事前に準備をして対策を整えておいた方が効率はいいです。
それに私はサーヴァント戦ならともかくそれ以外の魔術師戦では身体強化でお父さんに教わった色々な体術。
そして黒鍵やエモノを使った剣術、棒術。
最後に弓を使った遠距離攻撃…といったものが得意ですから」
「志郎…そう簡単にいうけど投影魔術を使わなくても貴女、十分オールラウンダーじゃない。武闘派魔術師としてやっていけるわね。
…と、いうかあなたはどうして黒鍵なんて聖堂教会の代行者が使う代物を得意としているわけ?」

いい質問をしたな凛。
私もそれは気になっていたところだ。
まさか言峰綺礼に教わったとは言うまい?
だが、彼女は私と凛の予想斜め上の回答をしてくれた。

「…えっと、実を言うとその代行者の埋葬機関の第七位の人に教わったんです」
「はぁ!? ま、埋葬機関の第七位って…! もしかして、そいつにも投影はばれているわけ!?」
「はい。でも安心してください。その人はお父さんの知り合いだったらしくて教会には内緒にしてくれていて今でもたまに連絡を取り合う仲なんです」
「シロは人脈にもツテがありますね。しかし、キリツグにそのような知り合いがいたとは…」

セイバーの言葉に私も同感だ。
どれだけ切嗣は変な言い方だが守備範囲が広かったのだろうか?

「そ、それじゃ式典とか鉄甲作用だっけ?…とかも使えたりするの?」
「使えますよ。第一凛さんのガンドを破ったのも鉄甲作用なんですよ? 気づいてました?」
「…なるほどね。だったらただの針が私の“フィンの一撃”とも言われるガンドを貫いたのも納得いくわ」
「やっぱり…避けた時に地面も抉っていたからもしかしたらと思って強化も施しておいて正解でしたね」
「先読みのセンスも中々ね」
「使える魔術が少ないから相手の出す手を読んで挑まないとやっていけませんから」
「ですがシロ。貴女はこの聖杯戦争が初の実戦だというのに妙に実戦慣れしていますね?」
「セイバーの言うとおりですわね。志郎様、実は以前にもなにかあったのではないですか?」
「まぁ、うん…」

そこで志郎は歯切れを悪くして難しそうな顔をしだした。
切嗣に真実を知らされたのだから私とは違い一緒に旅でもでたのか?

「場慣れといえば場慣れですね…何度かアインツベルンの領地にお父さんと一緒に忍び込もうとした事があるっていいましたが…」
「それで、どうしたの?」
「その道中はホムンクルスの試作品…というより番犬の役割をしていた人外の獣がそれはもうたくさんいて、それを倒すのが精一杯で何度も撤退せざるをえなかったんです」
「それは大変でしたね、シロ。あの地は篭城するにはかっこうの場所ですから」
「うん。それだけならまだよかったんだけど帰りの道でお父さんがよく道草をくう事があって…死徒の住処にも入っちゃった事があってたくさんの吸血鬼ご一行に襲われた事があったの」
「ぶっ!?」

そこで凛が盛大に吹いた。
セイバーやキャスターも目を丸くしている。
私も三人が反応しなければ凛と同じ末路を辿っていただろう。

「あんた達よく生きてたわね!? 仮にも死徒の住処でしょ!」
「…私も今思うとよく生きていたなと思います。事前に色々な武器を見ておいたからなんとか殲滅する事ができたけど、あの時ほどお父さんの放浪癖を恨んだ事はありません…他にも死徒二十七祖の第7位“腑海林アインナッシュ”の活動期の森に迷い込んだ事があって今でも少しトラウマになっています…」

志郎の顔には哀愁が漂っていてとてもではないがこれ以上は精神的にいけないだろうと感じたらしく凛が急いで志郎の思考を止めさせた。
セイバーはその切嗣の放浪癖にほとほと呆れ、そして怒りを示していた。
しかし、なにか聞き捨てならないことを聞いたような…?
そこで今度はキャスターから声が上がった。

「志郎様、一つご確認を…」
「ん? なに、キャスター?」
「先ほど志郎様は殲滅と言いましたが、この場合死徒の配下か本命かに限られますが…どちらなのですか?」
「あー、うん。それね。お父さんの手助けもあって結局大本も含めて全部退治しちゃった…最後は魔力のこもった銃弾をお父さんが叩き込んでそれでお終い」
「とんでもないわね…聖杯の泥に蝕まれていたのに死徒を倒しちゃうなんて…。
でも、それよりも切嗣さんが死ぬ前ってことはまだ志郎が小学生くらいの歳よね?
それを考えるとその歳で死徒とやりあえる志郎の方が十分規格外だと思うのは私だけ…?」

…確かに。大方全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)を叩き込んだり、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)でもして後は弓による高速射撃で切嗣の援護をしていたのだろう。
凛の疑問にほぼ肯定の意思を示す私、セイバー、キャスターに志郎はなにか裏切られたような表情をして少し泣きが入っていた。
………むぅ、今考えることではないが志郎は泣き顔もかわ―――……変な感情に流されるな!?
邪な感情をカットしている間に志郎は話題を変えていたらしく私の方に目を向けていた。

「もう私の話はここまで! それより凛さん、一ついい?」
「なに?」
「本当にアーチャーの正体は分かっていないの?」
「うっ…それを言われると弱いわね。言ったと思うけどアーチャーの記憶が戻っていないからまだ分からないわ…」
「そうですか。それじゃアーチャーに聞きたいんだけどいいかな?」
「なんだね…?」
「うん。アーチャー…校庭でランサーと戦っていた時に使っていた双剣。あれはなんですか?」

やはりきたか。と内心で思いながらも平然を装い受け応えすることにした。

「なにと聞かれても…あれが私の宝具だが…」
「ええ。確かに宝具かもしれません。でも少しおかしいんですよね」
「おかしいとは?」
「はい。あなたが使っていた双剣…あれは私の目で“視た”限りでは中国の名工、干将によって作られた宝剣…『干将・莫耶』ではないですか?」
「さて、どうかな?」
「あくまで本音は言いませんか。まぁいいですけど…。ではあれが干将・莫耶と仮定して話を進めていきます。
次ですが、確かにその二刀が作られていたという逸話はありますが、その担い手の話は一切聞いた事が無いんです。凛さんはどう思いますか?」
「そうよね…確かにその仮説が正しいならアーチャーは実在しない架空の英霊という線も出てくるわ。
もしかして記憶喪失は嘘で本当はもとから存在しないなんてことは言わないわよね?」
「当然だ。仮にそうだったとしても、それなら英霊の座まで登ることも出来まい?」
「それじゃ結局あなたは何者なのよ? 本当に二刀使いの弓兵なんて聞いた事が無いわよ?」

凛が執拗に迫ってくる。
セイバーとキャスターも興味深そうに聴く耳を立てている。
そろそろやばくなってきたな。またはぐらかす算段を計るか?
だが志郎は私の考えも見過ごしているかのように、

「では最後の質問です。アーチャー、あなたは本当は弓兵(アーチャー)じゃなくて魔術師(キャスター)、ではないですか?」
「ほう…どうしてそういう結論に至ったのだ? 理由を要求したいのだが…」
「いいですよ。ランサーと戦っていた時にアーチャーは何度も双剣を手に出現させていましたよね?
そしてランサーに砕かれた双剣はまるで崩れるように消えていった。
極めつけは私が解析したときにランサーの宝具は確かに本物だったのに対してアーチャーの双剣は…そうですね。
しいていうなら本物に近い贋作。そう、私と同じ創造の力、投影魔術に酷似しているんです。
実際、アーチャーの干将・莫耶には担い手の情報が一切なかったから」

………言い返す言葉が見つからないな。
志郎はあまりにも洞察力が優れている。
それで私もこれ以上見苦しいいい訳はしないことにした。

「ああ、そうだな。確かに私の生前は弓兵(アーチャー)ではなく魔術師(キャスター)…そして衛宮志郎、お前の言うとおり投影魔術師だ。
だがこの世界の人間ではない…凛の無茶な召喚でイレギュラーが生じて分かりやすく言えば平行世界の別世界の住人といったところだ。
だからこの世界で私の正体を知るものはおそらく誰もいないだろう。ゆえに真名は教える気はないな」
「ちょっとアーチャー! 記憶が戻ったっていうならどうして私に教えてくれなかったのよ!?」
「それについては謝罪しよう。そうだな、凛にならば後で教えてやってもいいだろう」
「…そう。それじゃ後で私の部屋に来なさい。ゆっくりと聞かせてもらうことにするわ」
「お手やらかに頼みたいものだな…」

そして話し合いはそこでお開きになった。
すると凛はやはりというべきかこの家に居座るつもりらしい。
少し言い争いが起きたがそこは志郎の一言でやんごとなく納まった。
しかしあの三人を丸く収めるとは志郎の話術の実力もすごいことなのだろう。
それで話も済んだので凛と私は遠坂邸から必要な荷物を取りにいくために一度家を出るのだった。



Interlude out──


 
 

 
後書き
今回はシロに正体を突き止められるの回でした。
ですが、シロはアーチャーが自分の兄だという想像まではできませんでした。
凛には次回に語りそうですね。 
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