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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第010話 3日目・2月02日『弓兵の決断』

 
前書き
更新します。 

 



「とりあえず落ち着いた場での話し合いがしたいわね」

と、遠坂さんが言ったのでまだ協力関係はなっていないけど変に隠し事をするのはダメだと思ったのでセイバーと一回相談した。
内容は私のサーヴァントはセイバーだけではなくキャスターも含まれているというもの。
でもさすがに道中で話すとどこで誰かに聞かれているのかわかったものではないので簡潔に家に招待することにした。

「それじゃウチで話をしませんか?」
「むざむざ敵地に招待するのはなにか裏があるんじゃない?」
「変なことをしない限りはそんなことはしません。私は…」
「その最後の私は、って…なにか意味深ね?」
「まぁ…でも大丈夫ですよ」
「シロの言う通りです。変な気を起こしさえしなければ命の保障はできるでしょう」
「セイバーまで…あなたの家ってなにかあるの?」
「家に着いたら説明するね…」

それで納得はしていないようだけど遠坂さんは一緒に私の家に足を運んでくれた。
しばらく会話はしなかったがそれは当然だろう。
家に招くといえば魔術師的感覚では自身を優位に持っていくためのものだからだ。
だから私も遠坂さんの態度に触れることもなく特に気負いせずに足を働かせた。
遅い帰りともあって日も暮れていてまだ家に明かりが着いていない事から今日は誰も来ていないと確認。
おそらくキャスターはランプでも浮かばせて灯りをつけていると思う。
それで私が先に門を潜って家に入ったけど、遠坂さんは門の前で口を少し開いて唖然としている。



──Interlude


凛は門の前でわなわなと体を震わせていた。
自然と不思議に思った志郎は凛に話しかけた。

「? どうしたんですか、遠坂さん?」
「どうしたかって…なによ! この強力な結界!? おそらくウチのより格は上で私自身もアーチャーが指摘してくれなければ気づけないほどだったわよ!」
「と、とりあえず落ち着いて…近所の人が騒ぎ出すと困るから魔術的用語も…!」
「わ、悪かったわ…」

凛は正直に志郎に謝罪したが心の中では、

(出鱈目よ…確かにまだ町のすべてを管轄できていない私の不備もあるでしょうけど、今までこんな結界のついている家を見逃していたなんて…)

自問自答を少しして凛はようやく復帰した。
そしてすぐに衛宮志郎の真意を確かめるべく衛宮邸の門を潜った。
けどそこで問題が発生した。
いきなり骨組みされた人型の骸骨が数体現れて凛に襲い掛かろうとしたのだ。
凛とアーチャーはやはり罠かと思ったのだが。
志郎の「お客さんだから安心して!」という言葉によって骸骨の群れは動きを停止してすぐに土に帰っていった。
アーチャーは外面だけでも回復していたので凛の前に姿を現していたがどうにも手持ち無沙汰のように腕を構えるだけの形で終わった。

「…ごめんなさい遠坂さん。こんなつもりは無かったんだけど警戒しちゃったみたいで…」
「え……?…え、ええ。えっと、それじゃ誰が警戒したっていうの?」
「竜牙兵か…」
「アーチャー…? なにか知っているの?」

アーチャーの一言に凛は首を傾け、志郎とセイバーの顔は驚きの表情に変わった。

「アーチャー、あなたはこれがなにかを知っていたのですか?」
「少しな…。
以前に見た事があるというだけだ。
だが真名は分からんがどうやらここにはセイバー以外にもサーヴァントがいるようだ。
クラスは遠隔操作できることからおそらくキャスターか?」


―――よくわかったわね? クラス名だけでも当てるという事だけは評価してあげるわ、弓兵(アーチャー)―――


声が聞こえてきて志郎の隣にはまるで実体化するようにキャスターがその姿を現した。

「「!!」」
「志郎様、セイバー、お帰りなさいませ。しかしよく他の魔術師を招き入れる事ができましたわね? 一瞬敵かと思ってしまいました…」
「うん。今のところまともに話し合えるマスターは遠坂さん以外に思いつかなかったから…」
「確かに…バーサーカーのマスターはまだ話し合える感じではありませんし、他のサーヴァントとマスターも依然足取りが掴めませんから彼女なら適当でしょう」
「ええ。キャスターもよく物事を理解している」

志郎達三人はお互いに意見を述べていたが凛とアーチャーは考えていることは別としてもなにかを言いたげだった。


Interlude out──



「…とりあえず事情は中に入ってから説明しますから着いて来て下さい」
「ええ…。サーヴァントを二体も連れている件やモグリの魔術師のことも含めて詳しく説明してもらうわ」

遠坂さんはそれはもう怖い表情で言っている。
アーチャーも霊体化していないことからして警戒していることは確かね。
それなので早急に話し合わなければいけないわ。
そして居間に着いたところでセイバーとキャスターは私の後ろに座らせた。
あまり警戒させたくないという意もこめて。
それで遠坂さんも私に習ったのかアーチャーを後ろに待機させていた。
サーヴァント組は今回、等価交換の場ともあり必要以上は会話には参加しないことになった。

「さて、それじゃ色々聞かせてもらえるかしら? あなたに負けた私がいうのもなんでしょうけど、こっちにも冬木の管理者(セカンドオーナー)という意地があるから」
「ええ、構いません。それでまずはなにを聞きたいですか?」

実質、もうこの居間には等価交換が敷かれていた。
その辺も遠坂さんは理解しているのか要点を絞って質問してくると思う。

「まず、どうやって今までこの冬木の地に隠れ潜んでいたのか詳しく聞きたいわね?」
「…ああ、まずそれですか。そうですね…その前に私の事はもう調べているんですか?」
「ええ…詳しくは分からないけどあなたは元・ここの家の領主であった衛宮切嗣という人物の養子になって10年前から住み始めたくらいかしらね?」
「それだけですか…?」
「え…? ええ、あなたを疑い始めてから調べ始めたのは昨日からだからそれくらいしか調べられなかったのよ」
「そうですか。それでは私の出生と一緒にこの破綻している聖杯戦争の狂ったカラクリのことも話します。
この事はもう死んでしまったお父さんと私…それと、そうですね。おそらく前回聖杯戦争の生き残りである言峰綺礼ももしかしたら知っているかもしれない事です」
「綺礼が…? それより破綻しているってどういうことよ?」
「今からそれを説明します…」





──Interlude


彼女はやはりなにかを知っているのか?
凛もうまい具合に話しの流れを衛宮志郎に持っていかれている。
よもやこの場で錯乱攻撃をしてくるとも思えないが…。
それに衛宮志郎の目には話したくないけど話さなければいけないという覚悟の目をしている。
横槍を入れるのも無粋だろう。
ここはまだ当分は控えておこう。
私の質問は別に最後でも構わないことだからな。
それから衛宮志郎は前回からの聖杯戦争のことを要点だけ纏めながら喋りだした。

―――聖杯の中身は第三次聖杯戦争の折に召喚されたイレギュラーのクラス…『復讐者(アヴェンジャー)』によって汚されていた。
―――前回の聖杯戦争で衛宮切嗣は最後まで生き残り聖杯を目前にしたが、聖杯は破壊だけの願望機となっていることに気づいた為、セイバーに令呪で破壊させた。
―――だがそれでも聖杯から零れてしまった泥は防ぐことが出来ずに起こったのが10年前の500人以上の死者を出した新都の大火災。

ここまで来て凛は少し混乱しているのか、

「ちょ、ちょっと待って…! それじゃこの今起こっている聖杯戦争もその、中身が汚れているっていうの?」
「ええ、おそらく…」
「それが本当なら私達はただの道化じゃない!?」
「そうですね。でも汚れているとはいえ願いを叶えるという機能はしっかりと残されている、とお父さんは言っていました。ただ、願ってもそれは破壊という事象に修正されてしまうとも…」
「性質が悪い話ね…それじゃ汚れているとはいえうまく利用すれば、ううん…中身をどうにかすれば根源にも繋がっちゃうじゃない…最悪の形で」
「はい。だから私とセイバー、キャスターは聖杯を…いえ、本体である大聖杯をどうあっても破壊しなければと今は行動しています」
「二人はそのことに賛成の意は示しているの…?」

そこで今まで黙っていたセイバーとキャスターはその重い口を開いた。

「ええ。最初は私も信じられませんでした…ですが聖杯を破壊しても起きてしまったという大火災…これだけで私はそんなもので叶える願いはないと今は思っています」
「私もですわ。そもそも私には聖杯にまで願うほどの願いはありませんわ。だから志郎様のお話には全面的に協力いたします」
「そう…アーチャーの意見はまた後で聞くとして…それじゃ一つ聞くけど貴女が養子に取られたというのは10年前よね?」
「はい、そうです」
「それじゃ、その、もしかして貴女は新都の大火災での…」
「ええ。私は大火災での数少ない生き残り…お父さんに助けられて今も生きながらえています。代償は高くつきましたけど」
「当然よね…親兄弟、そして住む家も無くしてしまったんだから…」

…ここまでは私とほぼ一緒だということか。
だとすれば彼女は私と同じく…。
そこでセイバーが辛そうな顔になりながら、

「それだけならまだよかったのですが…」
「どういうこと、セイバー…?」
「シロは、聖杯の泥の影響によって呪われてしまい大火災以前の記憶、感情、そして自身の名すら失ってしまったのです」
「「なっ…!」」

そこで私も一緒に声を上げてしまっていた。
それはありえない…私ですら自身の名だけは残していたのだというのに…では彼女は言葉どおりすべてを失ってしまったというのか!?
私は堪える事ができずに衛宮志郎に凛を無理やりどかして詰めより話しかけた。
衛宮志郎はそれで少し怯えてしまっていた。
凛がなにか言っているがこの際無視だ。

「衛宮志郎…では、貴様のその名はなんなのだ?」
「えっ…?」
「アーチャー! いきなりどうしたっていうのよ!?」
「シロになにをしようとするのですか、アーチャー!?」
「無礼者ね…消し炭になりたいらしいようだわ…!」
「全員少し黙っていてはくれまいか!? これだけは聞きたいのだ!」

そう、ではこの名はどうやって生まれてきたのか、衛宮切嗣が思いつくわけも無い。
だがそこで衛宮志郎は少し暗い表情になって、

「私…本当はすべてを失ったわけではないんです」
「なに…?」
「唯一覚えていることがあったんです。それは私を庇って代わりに死んでしまった兄さんの名前…今の名はそれをお父さんが少しいじって私に授けてくれた名前なんです」

兄、だと…?
それは一体どういった偶然なのだろうか?
私の思考回路は少しショートしながらもその兄という奴の名を衛宮志郎に尋ねた。

「アーチャーが何でそんなに拘るのかわかりませんけど…兄さんの名前は『士郎』です」
「!?」

そこで私の思考回路は完全に真っ白になった。
なんだ、それは?
これは…夢なのか? それとも聖杯が私を導いたのか?
うまく思考がまとめられない…。
だが、最後にこれだけは聞かなければいけない。
これによって私の行動は大きく変わってくる。

「では…最後の質問だ。衛宮志郎、お前が目指しているものはなんだ…?」
「私の目指しているものですか…? 恥ずかしいですけど、最初はお父さんと同じ『全てを救う正義の味方』を目指していました。
でもその考えはすぐにやめました。
そもそも私にそれは目指せないんです。
お父さんは聖杯にまで願おうとして、その思いすらも裏切られてしまいました。
そして『全てを救う正義の味方』を継いでいたはずの人は私を助けた代わりに死んでしまった兄さんの方がきっと似合っていますから。
だから私はせめて『大事な、大切な人達を護れる正義の味方』になりたいと思っているんです」

…もう、それだけ聞ければ十分だ。

「…騒がしくしてしまってすまなかった。凛、私は霊体化して屋根の上で警備でもしていよう。キャスターの結界があるからあまり関係ないがな…」
「ちょ、アーチャー…!?」
「ああ、それと言い忘れたが私も聖杯に叶えてもらうほどの願いはないことは以前に伝えたな? だから凛が衛宮志郎に協力するというならば私も意見に賛同し協力しよう…」

私はそれを伝えて屋根の上まで足を運ばせ夜空に輝く月を見上げた。
…衛宮志郎は切嗣の願いをあえて否定せず、尚且つ借り物ではなく自己の確立した願いを持っている。
そして私の願いはこの世界では潰えたことを自覚し、そして代わりに絶対に護らなければいけない“大事な人”が出来た。
目的無き今、残されしは我が身に与えられた使命『サーヴァント』…この狂った聖杯戦争を終わらすこと。
ゆえに、いざという時にはこの身を犠牲にしてでもマスターである凛ともども“我が妹”を守ってみせよう。
そしてこの世界の“衛宮士郎”となるはずだったものよ…貴様に頭を下げることはしたくはないが、このような奇跡を体現させてくれたことを心より感謝する。


Interlude out──

 
 

 
後書き
アーチャーには真実を知ってもらいました。 
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