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戦国異伝供書

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第四十七話 義に従いその十三

「今わたくしが攻めましても」
「破れませんか」
「どうしても」
「殿でもそうとは」
「甲斐の虎の名は伊達ではありません」
 それはというのだ。
「ですから」
「その布陣を破られぬ」
「ですから」
「今は、ですか」
「隙を伺いますが」 
 それでもというのだ。
「それがなければ」
「退きますか」
「ここは敵地です」 
 景虎はこのことをよくわかっていた、敵地ならどうすべきであるかも。
「ですから」
「あまり長居はですな」
「出来ません、兵糧に不安が出れば」
 その時はというのだ。
「退きます」
「そうされますか」
「そしてです」
 退くその時はというと。
「必ずです」
「退く時こそ最も危ういですが」
「そこはわたくしが後詰となってでも」
 彼自らがというのだ。
「そうしてです」
「越後まで、ですか」
「退きます」
 そうするというのだ。
「その様に」
「いえ、その時は」
 兼続はここで自らが申し出た。
「それがしが」
「引き受けられますか」
「はい」
 そうするというのだ。
「その時は」
「総大将が後詰になることは」
「やはり」
 どうしてもというのだ。
「なりません」
「わたくしがどう思っていても」
「それはです」
 また言う兼続だった。
「あまりにも危険なので」
「すべきではなく」
「そうです、それはです」
「家臣がですか」
「引き受けます、そして」
 兼続はさらに話した。
「後詰を任じて頂くことは」
「そのことはですか」
「家臣にとってこの上ない名誉」
 こうも言うのだった。
「ですから」
「是非ですか」
「はい、この度の戦で」
 若し退くことになればというのだ。
「宜しくお願いします」
「それでは」
 景虎も頷いた、そしてだった。
 景虎は今は兼続と共に越後の軍勢において武田軍を見据えた、だが今は両軍共動きは全くと言っていい程なかった。


第四十七話   完


                  2019・4・23 
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