戦国異伝供書
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第四十七話 義に従いその八
「お会いしたその時に」
「左様でありますか」
「しかし」
それでもとだ、景虎は言うのだった。
「わたくしは貴方がわかったつもりです」
「拙者もです」
晴信もこう返した。
「そのことは」
「左様ですか」
「はい」
そしてと言うのだった。
「それでもです」
「そのことは」
「そしてです」
まさにと言うのだった。
「拙者はです」
「これからですね」
「戦いまする」
「どうしてもですか」
「天下に進み」
そしてと言うのだった。
「そのうえで天下を治め」
「この戦乱をですか」
「必ず」
晴信は確かな声で答えた。
「収め泰平をです」
「もたらすおつもりですか」
「その考えです」
「わたくしはです」
景虎は晴信に答えた。
「天下にお仕えし」
「そうしてですか」
「天下を立て直し」
この乱れた天下をというのだ。
「そしてです」
「そのうえで、ですか」
「天下を収めたいとです」
「お考えですか」
「貴方は覇道を歩まれますね」
「それが必要だと思う故」
晴信の返事は迷いがなかった、それも一切。
「だからこそ」
「そう言われますか」
「そのうえで」
さらに言うのだった。
「貴殿と織田殿を」
「あの御仁もまた」
「供にと考えています」
共ではなかった。
「その様に」
「わたくしは貴方と織田殿は」
「共にですな」
「天下にです」
「公をですか」
「建て直してもらいたいですが」
自分と共にというのだ。
「なりませぬか」
「拙者の考えは違います故」
これが晴信の返事だった。
「貴殿は覇道と言われましたが」
「必要だと言われましたね」
「はい、しかし拙者の道は」
「覇道ではないですか」
「言うならば王道です」
それだというのだ。
「言うならば」
「そちらの道ですか」
「そうです、覇道ではなく」
「王道ですか」
「幕府を潰すなぞはです」
そうした考えはというのだ。
「ありませぬし」
「そうなのですか」
「武は何故必要か」
自身の道にとってというのだ。
「それはです」
「戦国の世だからですか」
「何にするにあたっても」
まずはというのだ。
「それが必要です、武で道を開き」
「そうしてですか」
「国と民をです」
「治められていますね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
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