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戦国異伝供書

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第四十六話 砥石攻めその八

 遂に崖を登りきった、その前には開かれた城門があった。横田はその門を見て兵達に対して会心の声で言った。
「よいな」
「はい、これよりですな」
「門が開かれております」
「ではその門を潜り」
「そうして」
「そうじゃ」
 まさにというのだった。
「城の中に入るぞ」
「崖を越えましたし」
「ならですな」
「後は城に入る」
「だからこそ」
「この度は」
「そうじゃ、城を攻め落とすぞ」
 横田は自ら刀を抜いて先頭に立って門に向かった、兵達も彼に続いてそうしてだった。彼等が城の中に入り。 
 城の兵達を倒していく、それを見て遂に城を守っていた者達も断を下した。
「これでは仕方ない」
「左様ですな」
「ここは退きましょう」
「もうどうにもなりませぬ」
「城の中は乱れてです」
「敵の兵達も城に入ってきております」
「これはどうにもなりませぬ」
 それでと言うのだった。
「ここは去りましょう」
「城は捨てるしかありませぬ」
「何とか兵達をまとめ」
「そうして下がりましょう」
「そうするしかありませぬ」
 こう話してだった。
 彼等は仕方なく城を出て逃げだした、これで砥石城は完全に武田家のものとなり勝鬨は夜に行われた。
 晴信は翌朝主な将帥達を連れて城に入った、そこで功のあった矢沢と幸村、横田、そして幸隆に対して言った。
「この度の勝ちはな」
「我等のですか」
「功じゃ」
 まさにと横田に言うのだった。
「お主達のな」
「左様ですか」
「褒美を取らす」
 それも大きなものをというのだ。
「是非な」
「それは何より」
「全くです」
 幸隆も笑顔で言う。
「この度のことは」
「有り難いことか」
「はい、それでは」
「うむ、是非な」
 横田と幸隆に言うのだった。
「好きなものを取らす」
「それでは」
「その様に」
「それではな、そして」
 晴信は今度は矢沢に顔を向けて言った。
「まさかじゃ」
「最初からですか」
「お主が当家についておるとはな」
「それがしも真田一族なので」
 それでとだ、矢沢は晴信に答えた。
「ですから」
「それでじゃな」
「兄上からお話を頂いておりました」
 幸隆を見ての言葉だ。
「そしてです」
「機を見ておったか」
「その機会がです」
「今来たからか」
「はい」
 だからこそというのだ。 
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