戦国異伝供書
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第四十六話 砥石攻めその二
「我等は城に兵を進め」
「そしてですな」
「門も開けさせてな」
その矢沢家の者達にというのだ。
「攻め入ろう」
「さすれば」
「お主に任せる」
確かな声でだった、晴信は幸隆に告げた。
「この度のことはな」
「わかり申した。では」
「早速話をしてだな」
「その様に進めていきましょう」
「頼むぞ」
こうしてだった、幸隆は早速砥石城にいる彼の身内のところに人をやった、そのやった者達はというと。
真田の忍の者達だった、彼等は絶壁を何なく進みながらそのうえでこんなことを話していた。
「我等忍の者にかかればな」
「しかも真田の者達ならばじゃ」
「こんな道何でもないわ」
「我等は山に生きてきた者達ぞ」
それ故にというのだ。
「これだけの崖も何でもない」
「普通に歩ける様に進めるわ」
「ならばすぐに矢沢殿のところに行って」
「そのうえで話をしようぞ」
「うむ、そうするぞ」
彼等の中には幸村もいた、当然十勇士達もだ。
「そしてじゃ」
「はい、時が来ればですな」
「我等も動きますな」
「その時まで城の中に潜み」
「そのうえで」
「動くのじゃ、それまでは忍んでおくのじゃ」
こう言うのだった。
「よいな」
「何故忍がそう書くか、ですな」
「それは忍ぶ為」
「隠れる為でしたな」
「だからじゃ」
そうだからこそだというのだ。
「お主達もじゃ」
「わかっておりまする」
「大殿のところに矢沢殿の返事を知らせる者は送りますが」
「我等はです」
「話が整えば忍んでおりまする」
「城の中なり外なりに」
「そうせよ、敵の城の中だからこそじゃ」
幸村も崖を進んでいる、まるで跳ぶ様にして崖の僅かな足場から足場を進んでいっている。それは武士の動きではなかった。忍の動きだった。
「敵もまさかと思ってな」
「油断しますな」
「我等が潜んでいても」
「潜んでいるとは思いませぬな」
「祖父殿はそこもわかっておられる」
幸隆、彼もというのだ。
「敵の兵達に化けてじゃ」
「はい、服は用意しております」
「具足もです」
「それはもうあります」
「既に」
「それを着てじゃ」
服も具足もというのだ。
「時を待つぞ」
「そうですな」
「ではその時こそですな」
「我等も動きますな」
「だからこそですな」
「敵兵に化けておくのですな」
「そして隠れてな」
それでというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
今度は十勇士達も言ってきた、幸村はいるからこそ彼等も同行しているのだ。やはり彼等は何処でも同じである。
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