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報道しない自由

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第一章

               報道しない自由
 この時日本で深刻な疑惑が起こっていた。
 ある政党がとある国の日本人拉致に関わっていたというのだ。
「拉致していい人間の名簿をあの国に渡していた?」
「そんなことをしていたのか?」
「これ犯罪だろ」
「とんでもない話だろ」
 ネットでこの疑惑が出た時忽ち騒動になった。
「これが日本の政党のすることか?」
「あの政党工作機関か?」
「こんなこと許されるのか」
「問題だろ」
 誰もがこう書き込んだ。
 だがそれはネットだけのことだった、マスコミはというと。
「新聞何処も報道しないな」
「テレビもだぞ」
「雑誌でも言わないぞ」
「何処も書いてないぞ」
「疑惑でも何処も書かないのか?」
「他のことなら何でも書くのにな」
 それこそ疑惑でもというのだ。
「スクープとか言ってな」
「それで書くっていうのにな」
「テレビでもやるだろ」
「それでどうしてなんだ」
「何で何処もこの話取り上げないんだ」
「これはおかしいだろ」
 ネットではこのことも大騒ぎになった。
「拉致に政党が関わってたってなんだよ」
「あの政党あの国と昔から親しかったけれどな」
「それにマスコミだってな」
「だから報道しないのかよ」
「これ洒落になってないだろ」
「仲のいい相手の悪事は報道しないのか」
「それが拉致でも」
 言うまでもなく犯罪行為だ、テロと言っていい。テロは言うまでもなく絶対に行ってはならないことだ。
 ましてやだ、その国はだ。
「あの国はテロ支援国家だぞ」
「世襲制の独裁国家で階級国家だぞ」
「そんな国の肩を持つのか?」
「それでこの報道か?」
「全く報道しないのかよ」
「これまずいだろ」
「洒落になってないぞ」
 誰もがネットに書き込んでいるうちに深刻なものを感じていた、知るべきことが知ることが出来ないのではと考えてだ。
「こういうことこそ報道しろよ」
「芸能人の浮気だの離婚だのよりもな」
「一つの政党がテロに関わってたんだぞ」
「しかも拉致していい人間を教えてたんだぞ」
「こんなの許されないだろ」
「本当にマスコミは何をやってるんだ」
「抗議しろ、抗議」
 自然とこうした意見が出て来た。
「マスコミ本社に電話をかけろ」
「さもないと何もならないぞ」
「マスコミに報道姿勢あらためさせろ」
「新聞にもテレビにも抗議しろ」
「雑誌出してる出版社にもだ」
 それぞれの新聞社やテレビ局、出版社の窓口の電話番号は調べればすぐにわかった、それで怒った者達はどんどん抗議をしたが。
 何も変わらない、それでネットユーザー達はこのことにも憤慨した。
「おい、何も変わってないぞ」
「相当通報したんだがな」
「俺各新聞社テレビ局に通報したぞ」
「俺もだ」
「俺は週刊誌出してる出版社全部にも抗議したぞ」
「それでどうして変わらないんだ」
 こう話した、やはりネットで。
「まだ何処も報道しないのかよ」
「これおかしいだろ」
「本当にあの国の肩持ってるのか?」
「あの政党にも」
「ひょっとしてマスコミもグルかよ」
 この危惧がここで出て来た。 
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