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頂上にあるものを

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第二章

「この坂道だって普通によく通ってるしな」
「いや、何か気合が入って」
 今はとだ、志郎は周大に答えた。その間も自転車を力を込めて漕いでいてそれで坂道を上っている。
「それでなんだ」
「たまたまか」
「そうだよ、けれどこの坂道を進まないと」
「ああ、先に行けないしな」
「頑張って上っていこうね」
 こう言ってそうしてだった、志郎は周大と共に坂道を自転車で上っていった。そうしてそのうえでだった。
 遂に坂道の頂上まで届いた、空には今も太陽がある。だが志郎はその太陽を見て残念そうに言った。
「お日様に全く近付けてないね」
「近付ける筈ないだろ」
 周大は志郎に横から頂上でも突っ込みを入れた。
「どういう発想だ」
「いや、坂の上の雲みたいに」
「雲だって掴めるか」
 そちらもというのだ。
「富士山にでも上るつもりか」
「じゃあ富士山を自転車で」
「あんなとこ自転車で上れるか」
 それは絶対に無理だとだ、周大はまた言った。
「そっちも無理だ、本当にお前は天然だな」
「駄目かな」
「駄目じゃないけれどおかしいだろ、けれど坂道は上ったしな」
 何だかんだでとだ、周大はそれはよしとした。
 そうしてだ、志郎にあらためて言った。
「先に行こうな」
「うん、そしてね」
「ツーリング場でな」
「一緒に走ろうね」
 志郎はこの時も笑顔だった、そうしてそのうえで周大と共に先に進んでいった。坂道の頂上を上った後でも。


頂上にあるものを   完


                  2019・6・26 
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