戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十四話 上田原の戦いその十一
「そしてじゃ」
「二郎様と孫六様にお渡しし」
「被ってもらってな」
そうしてというのだ。
「わしの影武者としてじゃ」
「働くのですな」
「わしはまだ動けぬ」
晴信は信繁に笑って述べた。
「しかしそのわしが出て来た」
「何故かと戸惑いますな」
「そしてじゃ」
さらにと言うのだった。
「わしが三人おる、ならばな」
「余計に戸惑いますな」
「そう仕掛けてな」
「敵を惑わして」
「攻めてじゃ」
そのうえでというのだ。
「敵を外の戦いで叩いてな」
「その後で、ですな」
「砥石城に向かう、城攻めはやはり敵の数が少ないと」
如何な堅城でもというのだ。
「攻めやすくなる」
「だからですな」
「そこを衝いてじゃ」
「攻め落とす」
「そうするとしよう、そしてじゃ」
「砥石城を攻め落とし」
「それからはな」
「葛尾城ですな」
「あの城を攻める」
そうして信濃の北を掌握するというのだ、こう話してだった。
晴信は諏訪の兜を二つ造らせてからだった、それぞれ信繁と信廉に渡して出陣した。勿論自分自身もだ。
晴信は出陣する兵達を本陣から見て山本に笑って話した。
「さて、今度こそじゃ」
「信濃の北をですな」
「手に入れる、しかしな」
「しかしとは」
「わしはむしろな」
その北を見てだ、晴信は言うのだった。
「それからがじゃ」
「気になりますか」
「やはりな」
「越後の長尾家ですか」
「あの者が気になる」
景虎、彼がというのだ。
「まだ会ってもおらぬしな」
「国を接してもいませぬな」
「しかしな」
「それでもですな」
「織田吉法師もそうであるが」
「運命を感じますか」
「勘助、お主星を見ることも出来るな」
晴信は山本に目を向けて彼に問うた。
「そうであるな」
「星見も八卦の占いも」
「ではどちらかでな」
「長尾殿を見ることをですか」
「頼めるか」
「わかり申した」
山本は晴信に即座に答えた。
「さすれば」
「わしは将星であるな」
「一際赤く大きな」
「左様か」
「日輪になるかの様な」
「天下を照らす日輪か」
「しかしどうも天下に大きな星が三つあり」
山本は晴信に自分が前に見た星野ことを話した。
「どれも輝いております」
「三つか」
「はい、一つが輝きを増せば」
それでというのだ。
ページ上へ戻る