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戦国異伝供書

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第四十四話 上田原の戦いその七

「あの城を上田原から攻めるよりたやすいしな」
「だからですな」
「そこから葛葉城を攻め」
「信濃の北の戦を決しますな」
「そうしますな」
「そうする、そして信濃の北もじゃ」
 そこもというのだ。
「確かに治めるぞ」
「お館様は必ず、ですな」
 甘利は晴信の今の言葉に思わず笑みになった、そうしてそのうえで晴信に対してこう言うのだった。
「国を治められますな」
「攻め取った土地をな」
「田畑も街も」
「治めずしてどうする」
 晴信も笑って応えた。
「戦は攻め取るだけのものか」
「違いまする」
「そうじゃ、折角領地を手に入れるなら」
 それならというのだ。
「しかとじゃ」
「治める」
「そうすべきですな」
「そう考えておる」
 これが晴信の考えだった。
「だからわしは手に入れた領地はじゃ」
「しかとですな」
「ご覧になられて」
「治めてな」
 そしてというのだ。
「豊かにしておるのじゃ」
「信濃の南についても」
「そうされていますな」
「無論北もな、信濃全てで七十万石じゃが」
 石高ではその程度になる。
「七十万石もな」
「豊かにすればですな」
「その時は」
「遥かに豊かになる」
 七十万石以上にというのだ。
「そうなるからじゃ」
「甲斐にしても同じで」
「信濃も然りなので」
「だからですな」
「あの国もですな」
「治めてな」
 豊かにするというのだ。
「これまで以上にな」
「そしてその力で、ですな」
「やがては」
「上洛じゃ」
 二人の老臣にもだ、晴信は話した。
「それを目指すぞ」
「そうされるなら」
 甘利は上洛について晴信に述べた。
「信濃の南を抑えているので」
「だからじゃな」
「信濃の木曽路からです」
 そこからというのだ。
「美濃に入り」
「あの国を手に入れてな」
「そこから近江に至り」
「都となるな」
「そうなるかと」
「そうじゃ、しかし美濃の斎藤家も強い」
 晴信はこのことを見ていた。
「主の道三殿もな」
「蝮と言われる御仁で」
「策謀も気になるが」
「戦の際杯も見事ですな」
「そうした御仁じゃ、だからな」
 それ故にというのだ。 
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