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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第14話

~メンフィル帝国大使館・執務室~

「そ…………んな…………それではリィンさんやエリス達はわたくしやエレボニアの為に敢えてメンフィル帝国軍に…………っ!」
事情を聞き終えたアルフィン皇女は愕然とした後悲痛そうな表情を浮かべた。
「そしてその結果としてアルフィン皇女も知っての通りリィンはヴァリマールでクロスベル侵攻軍の空挺部隊の多くを撃破し、エリス達と共にルーファス・アルバレアを討ち取った活躍を評されて”少佐”に昇進した。リィンは戦後のエレボニアの処遇について口出しできる立場を目指しているとの事だから…………”少佐程度の地位で満足はすまい。”更に昇進をする為にもリィンはエリス達と共に今後の戦争で積極的に敵将クラスの撃破等の”戦場の手柄”をその手に掴み取る事を考えているだろうな。」
「……………………リィンさん……………………」
リウイの推測を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情を浮かべた。
「――――それとリィンはクロスベル防衛戦での”手柄”の件で既に目的の一つである”メンフィルが求めるアルフィン皇女の処罰を穏便な内容にする件”についても”半分は目的を達成する事ができた”から、今頃自分達がやろうとしている事は決して無謀でも無駄でもないことに実感しているだろう。」
「え………それはどういう事でしょうか……………?」
そしてリウイの口から自分の件についての話が出るとアルフィン皇女は不思議そうな表情で訊ねた。

「今回のクロスベル防衛戦での手柄の件でメンフィル帝国政府はまだ決まっていなかったアルフィン皇女の仕え先をリィンさんに決定したのです。」
「……………………え……………………わたくしがリィンさんに…………?あ、あの、幾ら手柄の件があるとはいえ、何故メンフィル帝国政府はわたくしの仕え先をリィンさんに決められたのでしょうか…………?”帝位継承権”を持つわたくしは敗戦後のエレボニアでも利用する事はできると思われるのですが…………」
イリーナの答えを聞いて呆けたアルフィン皇女は戸惑いの表情でリウイ達に訊ねた。
「メンフィル帝国はエレボニアの内戦勃発時万が一エレボニアの領土に隣接しているメンフィル帝国領であるユミルも内戦に巻き込まれた際に対処する臨時のメンフィル軍をユミルに派遣しなかった件で、ユミルの領主一家である”シュバルツァー家”に”負い目”があった為元々”シュバルツァー家”もアルフィン殿下の仕え先の有力な候補として挙がっていたのですが、今回のリィンさんの手柄の件でシュバルツァー家の跡継ぎであるリィンさんに決定したとの事です。」
「―――そういう訳で万が一今回の戦争でエレボニアが滅亡しても、アルフィン皇女は”リィンの使用人兼娼婦”という名目でシュバルツァー家に保護されることになるだろう。…………――――よかったな、アルフィン皇女。現時点でアルフィン皇女の処罰は穏便な内容になっているも同然の上、万が一リィンが心変わりをしてアルフィン皇女に関係を迫ってもアルフィン皇女としてもそれ程抵抗感はあるまい。何せアルフィン皇女にとってのリィンは親友であるエリスの兄であり、夏至祭、内戦ではリィン自身の活躍によって受けた恩がある上、エレボニアの滅亡を防ぐ為に今回の戦争に参加したのだからな。」
「………………………………」
「あなた、最後のその言い方は幾ら何でもアルフィン皇女に失礼ですよ。」
エクリアの説明の後に興味なさげな様子で指摘したリウイの指摘を聞いたアルフィン皇女が複雑そうな表情で黙り込んでいる中イリーナが呆れた表情でリウイに指摘した。

「いえ、リウイ陛下の仰っている事は何一つ間違っていませんわ。…………不謹慎ではありますが、わたくしが一生お仕えし、貞操も捧げる相手がリィンさんである事を知った時正直な所安心すると共に、”嬉しさ”も感じましたから…………」
「え………ではアルフィン皇女はリィンさんの事を…………」
困った表情を浮かべて語ったアルフィン皇女の答えを聞いたイリーナはアルフィン皇女がリィンに想いを寄せている事を察して目を丸くしてアルフィン皇女を見つめた。
「……………………――――話は以上だ。仮にも敵国の皇女が護衛もつけずに現れたのだから、本来ならば拘束すべきだろうが…………大使館設立時から世話になり続けているリベールとかつての戦友であり、恩もあるオリヴァルト皇子に免じてそのまま祖国に帰る事を許してやる。今日はもう遅いから大使館に泊まり、明日に祖国に帰国するといい。必要ならばアリシア女王やグランセルのエレボニア大使館に務めているダヴィル大使に連絡を取るがどうする?」
そして話を打ち切ったリウイはアルフィン皇女に今後の事について伝えた後アルフィン皇女に判断を訊ねた。
「………………………………いえ、わたくしはわたくしが犯した罪を償う為にも祖国には2度と戻らないつもりでここに来ましたから、どうかメンフィル帝国から処罰を受ける事になっているわたくしを”処罰”として、わたくしの御仕え先であるリィンさんにお仕えできるように手配をしてください。」
しかしアルフィン皇女はリウイ達も予想もしていなかった答えを口にした。

「何?―――自分の言っている事がどういう事なのか、理解しているのか?」
「はい。現時点を持ってわたくし――――アルフィン・ライゼ・アルノールはメンフィル帝国の要求通りエレボニア皇族の身分を捨て、処罰内容であるリィンさんの使用人兼娼婦として、今後も戦い続きになるリィンさんの御力になりますわ。勿論使用人兼娼婦としての役目を務めるだけでなく、”主”であるリィンさんの望みを叶える為にも此度の戦争、リィンさん達と共に”エレボニア帝国”と戦う所存です。必要であるならば、誓約書も書きます。」
「な……………………メンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争にメンフィル・クロスベル連合の戦争相手である皇族のアルフィン皇女、貴女が”メンフィル・クロスベル連合側”として戦争に参加するなんて一体何を考えておられるのですか!?」
リウイの問いかけに対して決意の表情で宣言したアルフィン皇女の宣言にリウイとエクリアと共に血相を変えたイリーナは一瞬絶句した後信じられない表情でアルフィン皇女に訊ねた。
「リィンさん達――――シュバルツァー家から受けた恩を返す為…………そして今回の戦争の勃発の元凶の一人としての責任を果たす為に、”かつてのエレボニア皇女として”滅亡の危機に陥っている祖国の滅亡を防ぐ為に、そして…………エレボニアの為に自ら”エレボニアの裏切り者”という”咎”を背負ったリィンさん達と共に”咎”を背負う為にも、わたくしはリィンさん達と共にエレボニア帝国と戦います…………!」
「アルフィン皇女…………」
「………………………………」
アルフィン皇女の決意を知ったイリーナは驚き、エクリアは驚きのあまり目を見開いてアルフィン皇女を黙って見つめ
「……………………決意は固いようだな。――――――いいだろう。アルフィン皇女――――いや、”我らメンフィルの新たなる戦友になることを決めたアルフィン”の申し出、”メンフィル帝国軍エレボニア帝国征伐総大将”リウイ・マーシルンの名において受理する。」
アルフィン皇女――――皇族の身分を捨ててただの”アルフィン”としてリィン達の仲間になる事を決めたアルフィンの目を少しの間見つめてアルフィンが”本気”であることを悟ったリウイはアルフィンの申し出を受ける事にした。

「本当にアルフィン皇女の申し出を受理するのですか、あなた!?」
「……………………エレボニアはともかく、リベールにも話を通さず勝手に決められてよかったのですか?この件をリベールが知れば、間違いなくその件について何か言ってくると思われますが…………」
リウイの判断にイリーナが驚いている中エクリアは真剣な表情を浮かべてリウイに確認した。
「万が一その件でリベールが何か言ってきた時はパント達にアルフィン皇女はメンフィルの処罰の件で今後の先行きが不安だったが、クロスベルの迎撃戦での”手柄”として戦後に実行されるはずだったアルフィン皇女の処罰内容である”リィンの使用人兼娼婦”という名目でリィンに保護される事になったと言うように伝えておく。それに例えエレボニアが和解を望もうがアルフィン皇女がリィンに仕える事は”決定事項”だ。内戦の件で2度もリベールに免じて開戦を待ってやったのだから、今更文句は言わせん。」
「それは…………」
「…………確かに陛下の仰る通り、今回の戦争の件にリベールは”中立の立場として”エレボニアに対するメンフィルの要求内容について意見し辛い立場ですから、アルフィン皇女の件を知ってもその結末に納得せざるを得ないでしょうね。」
リウイの答えにイリーナが複雑そうな表情をしている中、エクリアは静かな表情で頷いた。

「あの…………内戦の件でリベール王国に免じて開戦を待って頂いたと仰いましたが…………」
リウイ達の会話内容が気になったアルフィンはリウイ達に訊ね
「……………実はアルフィン皇女もご存知のように内戦の最中に起こった出来事――――アルバレア公爵に雇われた北の猟兵達による”1度目のユミル襲撃”、カイエン公爵達貴族連合軍による”2度目のユミル襲撃”の件でそれぞれメンフィル帝国は王都(グランセル)にあるエレボニア帝国の大使館にそれぞれの襲撃に対する謝罪や賠償としてメンフィルが求める要求をメンフィルが決めた期日以内に実行しなければ、開戦する事を警告したのですが…………その時にそれぞれアリシア女王とクローディア王太女が仲介に入って、メンフィル(私達)に開戦を考え直すように説得し、リベールと盟を結んでいるメンフィル(私達)は盟友であるリベールに免じて内戦が終結するか”ユミル襲撃”のようなメンフィルとエレボニアの間で何らかの国際問題が発生するまで”開戦を止めるための3度目の要求”をする事を待つ事にしたのです。」
「最も2度目の説得の際は幾ら盟友のリベールの頼みであろうと『3度目はない』事やこれ以上エレボニアを擁護する事を行えば、メンフィルはメンフィルとエレボニアの戦争の際リベールを第三者――――つまり、”中立の立場として認めない為リベールの仲介には応じない”事を言い含めたがな。」
「そうだったのですか…………リウイ陛下、もし戦争が終結した際は、アリシア女王陛下達に感謝の言葉を述べる機会を設けてはいただけないでしょうか?」
イリーナとリウイの説明を聞くと目を丸くした後リウイにある事を頼んだ。
「そのくらいならいいだろう。――――明日にはリィン達の元に到着する手筈を整えるから、今夜は大使館で休むといい。」
「はい…………!」
翌日――――アルフィンはリウイの手配によってリィンの使用人兼娼婦、そしてメンフィル帝国の”義勇兵”としてリィンの元に送られる事になった。


1月15日、AM11:20―――

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦ヴァリアント・ブリーフィングルーム~

「それでリィンさん、先程ブリーフィングが終わったばかりなのにわざわざ私やフォルデ先輩どころかエリスさん達まで集めた理由を教えて頂きたいのですが…………」
「ああ、さっき内線でゼルギウス将軍閣下から入った連絡なんだが…………俺達の部隊に義勇兵が新たに一人追加される事になったから、その顔合わせの為に集めたんだ。将軍閣下の話によると何でもその義勇兵は俺やエリス達と知り合いだそうだが…………」
「え………私達とですか?」
「一体どなたが…………お兄様、その方はいつこちらに?」
ステラの質問に答えたリィンの答えを聞いたエリスは目を丸くし、セレーネは不思議そうな表情でリィンに訊ねた。
「今エリゼが迎えに行っているからもうそろそろ来るは『兄様、私達の部隊に配属された新たな義勇兵の方をお連れしました。』…………どうやら来たみたいだな。―――ああ、入ってくれ。」
セレーネの疑問にリィンが答えかけたその時扉がノックされてエリゼの声が聞こえ、リィンは入室の許可を部屋の外にいるエリゼに伝えた。

「…………失礼します。」
そしてエリゼが部屋に入ると、エリゼの後に”メンフィル帝国の紋章が刻み込まれたメイド服を身にまとったアルフィン”が部屋に入ってきた!
「な――――――」
「ええっ!?」
「まさか貴女は…………」
「おいおい…………どうなってんだ?」
「……………………」
自分達にとってあまりにも予想外過ぎる人物―――アルフィンの登場にリィンは絶句し、セレーネは驚きの声を上げ、アルフィンに見覚えがあるステラは信じられない表情をし、フォルデは困惑し、アルティナは呆けた表情でアルフィンを見つめ
「―――姫様!?」
エリスは信じられない表情で声を上げた。

「エリス…………っ!」
アルフィンはエリスに駆け寄るとエリスを抱き締め
「やっとまた会えたわね…………!クロスベル侵攻軍と戦った事は手紙で知らされていたけど、無事で本当によかった…………!」
「姫様…………あの、何故姫様がこちらに…………?というかその服装は一体…………」
抱き締められたエリスは抱き締め返しながらアルフィンの自分への気遣いに感謝した後、アルフィンと離れて戸惑いの表情でアルフィンを見つめた。
「―――”アルフィンさん”、積もる話はあるでしょうがまずは兄様達に自己紹介をお願いします。」
「はい。―――改めまして、此度エレボニア帝国征伐を行うメンフィル帝国の”義勇兵”の一人兼リィン少佐にお仕えする使用人兼娼婦としてリィン少佐の部隊に配属されることになった”アルフィン・レンハイム”と申します。どうかお見知り置きを。」
エリゼに促されたアルフィンはリィン達に上品な仕草で会釈をして自己紹介をした。

「……………………」
「リィンの使用人兼娼婦は例の要求内容だが、それを抜きにしても戦争相手の国の皇女がメンフィルの義勇兵としてここに配属って色々な意味で無茶苦茶だな、オイ…………」
「メンフィルが求めるアルフィン殿下の処罰の件については先日私もリィンさん達から教えてもらいましたが…………何故、エレボニアにいるはずのアルフィン殿下が我が軍に…………」
「それにアルフィン殿下はご自身の事を”アルフィン・レンハイム”と仰っていましたが…………」
「…………理解不能です。」
アルフィンの自己紹介を聞いたエリスは驚きのあまり口をパクパクさせ、フォルデは疲れた表情で溜息を吐き、ステラとセレーネは戸惑いの表情でアルフィンを見つめ、アルティナはジト目でアルフィンを見つめた。
「―――エリゼ!?一体どういう事なんだ!?」
そして石化したかのように固まっていたリィンは我に返ると事情を知っていそうなエリゼに血相を変えて訊ねた。

「リフィアからの話によりますと昨日の夜にアルフィンさんがロレントのメンフィル帝国の大使館にいるリウイ陛下達を訊ねて、兄様達が戦争に参加した理由を陛下達から聞かされた後にメンフィルがエレボニアに求める要求内容の一部であるご自身の身分を捨てて”リィン・シュバルツァーの使用人兼娼婦”という立場として兄様を支えるために…………そして、戦でも兄様達に協力するためにエリス達のように自らメンフィルの”義勇兵”になる事を陛下に申し出て、陛下はその申し出を受理して今に至ります。」
「ちなみに”レンハイム”はオリヴァルトお兄様がリベールの旅行時代に名乗っていたファミリーネームであり、オリヴァルトお兄様の産みの母親であられるアリエル様のファミリーネームでもありますわ。」
「そ、そうなんですか…………―――じゃなくて!?ご自身の身を顧みずにリウイ陛下達を訊ねた件に関しては百歩譲ったとしても、何故ご自身の処罰内容も陛下達から知らされた上でその内容を承諾し、更にはメンフィル軍の一員として殿下にとっての”祖国”であるエレボニア帝国軍と戦う事を決められたのですか!?」
エリゼの後に説明したアルフィンの説明に頷きかけたリィンだったがすぐに我に返ると疲れた表情でアルフィンに問いかけた。
「ふふっ、リィンさん達もエレボニア帝国との戦争による手柄で昇進して、”敗戦後のエレボニアの処遇について口出しできる立場”を目指す為に今回の戦争に参加なされたとの事ですから、わたくしも”元エレボニア皇家であるアルノール家の一員として”、祖国であるエレボニアの滅亡を防ぐ為にリィンさん達に協力する事にしたのですわ。」
「…………例え祖国の滅亡を防ぐ為とはいえ、アルフィン殿下はエレボニアに侵略するメンフィル(わたしたち)の一員としてエレボニア帝国軍と戦うという事は、エレボニアの民や貴族、それにご家族であるユーゲント皇帝陛下達からも”裏切り者”呼ばわりされる事も承知されているのですか?」
アルフィンの答えを聞いたステラは真剣な表情でアルフィンを見つめながら訊ねた。

「はい。リィンさん達――――シュバルツァー家から今まで受けた恩を返す為…………今回の戦争の勃発の元凶の一人としての責任を果たす為に…………そして…………エレボニアの為に自ら”エレボニアの裏切り者”という”咎”を背負う事を決めたィンさん達と共に”咎”を背負う為にも、わたくしは祖国を捨ててリィンさん達と共にエレボニア帝国と戦う事にしたのですわ。」
「アルフィン殿下…………」
「姫様…………」
「……………………」
アルフィンの答えを聞いたセレーネとエリスが辛そうな表情でアルフィンを見つめている中アルティナは静かな表情で黙ってアルフィンを見つめた。
「決意は固いようだし、もうここまで来ちまった以上姫さんもお前達のように後戻りはできねぇんだから、受け入れて姫さんをお前達で守ってやるしかないんじゃねぇのか?」
「………………………………はい……………………って、”姫さん”だなんてさすがにその呼び方は幾ら何でもアルフィン殿下に対して不敬だと思うのですが…………」
肩を軽く叩いたフォルデの意見に少しの間考え込んだリィンは複雑そうな表情で頷いた後ある事に気づいて呆れた表情でフォルデに指摘した。

「ふふっ、リィンさ―――いえ、”ご主人様”。先ほども自己紹介をしたようにわたくしはメンフィル帝国がわたくしに求める処罰内容である”エレボニア帝国皇女という身分を捨てて、リィン・シュバルツァーの使用人兼娼婦として一生仕える”事も承諾したのですから、今のわたくしはご主人様専用の使用人兼娼婦―――すなわち”メンフィル帝国の平民”ですから、わたくしへの呼び方はどのような呼び方で呼んで頂いても問題ありませんわよ♪」
「ブッ!?」
「姫様!?」
「……………………」
「え、え~っと…………アルフィン殿下…………―――ではなくてアルフィンさん、使用人はともかく”娼婦”とはどういう存在なのかもご存知で現時点でのメンフィル帝国が求めていたアルフィンさんへの処罰内容を本当に受け入れたのですか?」
アルフィンはリィンにウインクをして答え、アルフィンが自分を『ご主人様』呼ばわりした事にリィンは思わず吹き出し、エリスは驚きの声を上げ、エリゼはジト目でアルフィンを見つめ、セレーネは冷や汗をかいて苦笑しながらアルフィンに訊ねた。
「勿論リウイ陛下達から伺っていますわ。―――そういう訳ですので、わたくしの身体はご主人様だけのものなのですから、もしわたくしを抱きたければ、いつでも仰ってください、”ご主人様”♪」
(アハハハハハッ!これでまたご主人様のハーレムメンバーが増えたわね♪)
(ほ、本当にいいんでしょうか…………?)
(皇族を従者として侍らせるなんて…………!あぁ、これで我が主の”英雄”としての”格”がまた上がりましたね…………!)
(ふふっ、”女神”である私や”魔神”であるベルフェゴールを侍らせているから、”今更”だとは思うけどね…………)
アルフィンの宣言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ベルフェゴールは腹を抱えて笑い、メサイアはリィン達同様冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ふにゃりと顔を崩して嬉しそうにしているユリーシャの様子にアイドスは苦笑していた。

「「に・い・さ・ま~~~~~!?」」
「お、俺は無実だ――――――ッ!」
そして我に返ったエリゼとエリスは膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、微笑まれたリィンは思わず疲れた表情で叫んだ。


PM10:10―――

アルフィンが仲間になったその日の夜、自室に備え付けているシャワーを浴びたリィンはベッドに倒れこんだ。

~リィン少佐の部屋~

「きょ、今日は精神的な意味で疲れた…………まさか殿下が俺の部隊に配属されるどころか、現時点での処罰内容を受け入れて俺の使用人兼娼婦になるなんて…………」
ベッドに倒れこんだリィンは今日起こったとんでもない出来事であるアルフィンの件について思い返した。

わたくしの身体はご主人様だけのものなのですからもしわたくしを抱きたければ、いつでも仰ってください、”ご主人様”♪

「俺が望めば”帝国の至宝”と呼ばれたアルフィン殿下を…………って、何を考えているんだ、俺は!?ベルフェゴール達の件で最近淫行続きだったから、頭がおかしくなったのかもしれない…………心を落ち着かせるために寝る前に精神統一をしておくか…………」
アルフィンの自分に向けた発言を思い返してふと自分がアルフィンを抱いている様子を思い浮かべたリィンはすぐに我に返って精神統一を行おうとしたが、扉がノックされた。
「(こんな夜遅くに誰だ?)…………誰ですか?」
「―――アルフィンです。夜分遅くに申し訳ありませんが、入ってもよろしいでしょうか、リィンさん。」
「へ…………!?え、ええ、どうぞ。」
アルフィンが自分を訊ねた事に驚いたリィンだったがすぐに気を取り直して入室するように促した。

「…………失礼します。」
「アルフィン殿下、こんな夜遅くに自分に何の御用でしょうか?」
「ふふっ、何度も言っているようにわたくしは”エレボニア皇女”の身分を捨ててこの場にいますし、リィンさんはわたくしの”主”であり、メンフィル軍の”上司”でもあるのですからもっと気安い呼び方をして頂けないと、他の部下の方達に示しがつきませんわよ?」
「うっ。まあ、それについては可能な限り早く慣れるように努力します…………ハハ…………」
アルフィンの指摘に唸り声を上げたリィンは苦笑した。
「―――でしたら、すぐにでもわたくしの事をもっと気安い呼び方で呼べるようにわたくしも協力致しますわ。」
「へ。」
そしてアルフィンの言葉にリィンが呆けた声を出したその時、何とアルフィンは服を脱いで下着姿になった!

「ちょっ、殿下!?突然何を!?」
(うふふ、女がこんな夜遅くに男の部屋を訊ねた時点で何が起こるか普通なら”察する事ができるわよ”、ご主人様♪)
下着姿になったアルフィンを見た後すぐに慌てて視線をそらしたリィンを面白そうに見ていたベルフェゴールは結界を展開した。
「わたくしは”ご主人様”にお仕えする使用人であり、”ご主人様”の”性欲”を発散させる為の存在であるご主人様専用の”娼婦”。わたくしが本当の意味でご主人様専用の”娼婦”である”証”を作る為に、ご主人様の欲望のままにどうか存分にわたくしを犯してください。」
「い、いやいやいやいや!?た、確かに自分にとっては突然の出来事でそのような形で殿下を自分の元で保護する形になりましたが、自分はアルフィン殿下には幸せになってもらいたいと思っていますので、もっとご自分の身を大切にしてください!(ユリーシャの件といい、何で”こういう展開”が連続で続くんだ…………?)」
下着姿で迫ってきたアルフィンに対してリィンは必死な様子でアルフィンに考え直すように説得しようとしたが
「もう…………わたくしの知らない間に3人もの女性を増やしたにも関わらず、ここまで言ったわたくしの気持ちに気づかないなんてさすがにどうかと思いますわよ?」
「え……………………」
苦笑しながら答えたアルフィンの言葉を聞くと呆けた表情を浮かべた。

「――――好きです、リィンさん。あの1(ひとつき)前のパンダグリュエル……わたくしを解放してくださったあの日から。親友の兄君に対してではなく、エレボニアの皇女としてでもなく……一人の娘として、貴方という男性(ひと)を。叶う事ならばエリス達のようにわたくしも貴方の伴侶の一人に加えて欲しかったのですわ。」
「アルフィン殿下…………」
「リウイ陛下達からわたくしの処罰内容を聞いた時、不謹慎だと理解はしていましたが、それでも嬉しかったですわ…………わたくしにとって初恋の殿方に貞操を捧げる事が許され…………例えどんな形であろうと、好きな殿方が侍らす女の一人になれるのですから…………」
「……………………その、殿下は自分で本当にいいんですか?多くの女性達を侍らせている男である自分で…………」
アルフィンが自分に想いを寄せている事をようやく知ったリィンは複雑そうな表情でアルフィンに訊ねた。
「ふふっ、”元”とはいえわたくしも皇族なのですから、皇族や貴族に限らず富や権力を持つ者が多くの女性を囲っている事は珍しい話でない事は知っていますから、わたくしにとっては既に多くの女性を囲っているリィンさんが、わたくしをリィンさんの愛人の一人にする事について別におかしなこととは思いませんわよ。」
「いやいやいやいやっ!?例え皇族の身分を捨てられたとはいえ、アルフィン殿下を”愛人”にするなんてオリヴァルト殿下達にも顔向けできないようなそんな失礼な事はできませんよ!?」
「ではエリス達のように”妻”の一人にして頂けるのでしょうか?」
「そ、それは…………その…………殿下のお気持ちはとても嬉しいのですが、まずはエリス達に相談したいので、できれば保留にして頂きたいのですが…………」
期待を込めた表情のアルフィンに見つめられたリィンは何とか時間を稼ごうとしたが
「あ、ちなみにここに来る前にエリスもそうですがエリゼさんやセレーネさんにもわたくしのリィンさんへの想いを伝えて、わたくしもリィンさんに抱かれてエリス達と”同じ関係”になる許可もいただいていますから、エリス達に相談する必要はありませんわよ♪」
「………………………………」
アルフィンの答えを聞いて逃げ道が防がれた事を知ると表情を引き攣らせた。

「もしリィンさんがわたくしの幸せを願ってくれているのでしたら、どうかわたくしをエリス達のように抱いてリィンさんの愛人にしていただけませんか…………?」
「…………フウ。先ほども言ったように、殿下に限らずここまでしてくれる女性に対して愛人にするような失礼な事はしませんよ。女性の操を奪う以上、その責任は当然取らせて頂きます。」
「リィンさん…………!嬉しい…………!どうか、わたくしの事はこれから敬称なしで名前を呼んでくれませんか…………?」
リィンの答えを聞いたアルフィンは微笑んだ後リィンの胸に寄り添ってある事を要求し
「ぁ…………わかった―――”アルフィン”。アルフィンの事も必ず幸せにするから、改めてよろしくな……………………」
アルフィンの要求に一瞬呆けたリィンはアルフィンを呼び捨てにした後アルフィンを抱き締めてアルフィンに口づけをし
「…………あ…………(リィンさん…………)」
リィンに口づけをされたアルフィンは幸せそうな表情を浮かべて自分を抱き締めているリィンを抱き締め返してリィンの口づけを受け入れ、その後リィンに抱かれた。

こうして…………悲壮な決意でメンフィル帝国に向かったアルフィンは数奇な運命によって叶うはずがない恋を叶える事ができ、リィンの仲間として…………そして将来を共に生きることを前提とした恋人としてエリゼ達と共にリィンを支える事となった――――
 
 

 
後書き
というわけで予告していたのようにリィン側にアルフィン加入、そしてリィンハーレム入りですw 
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