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女神と星座の導きによりて

作者:草ナギ
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星24 聖域へ

 光政公に挨拶をして、聖域へ行く前に沙織とアイオロスへの手紙を簡単に書き、行く準備をします。
 何故光政公には話して二人には話さないのかって?
 二人の事ですから、引き留められるのは目に見えています。
 あの二人に引き留められては、私も決心を鈍らせてしまいますからね。
 仕方のない事です。
 
 「……言い訳、になってしまいますね」

 「真名様、何かおっしゃいましたでしょうか?」

 「なんでもありませんよ。それよりも、移動手段はなんですか?瞬間移動ですか?」

 小宇宙での移動は大分使っていないので、久しぶりに使ってみたいとは思いますが。

 「いえ、”彼ら”を使います」
 
 そう言ってコルウスはカラス達を呼び寄せます。
 ……鬼〇郎かな?
 恐らく、原作で沙織を攫った時の様な移動手段なのでしょうね。
 うん、まぁ、同じですね。移動手段。
 
 「聞きますが、私もですか?」

 「そのつもりでしたが、真名様が瞬間移動の方が慣れているとおっしゃられるなら、そちらでも構いません」

 こやつ、さり気なくディスってません?捕まえた事怒ってるんですかね?

 「いえ、貴方の慣れた移動手段で行きましょう」

 合わせてやんよ!仕方ないですから!ね!

 「わかりました。ではこちらのカラス達を。お前達、頼むぞ」

 そう言うと、私を運ぶ予定のカラス達は一斉に返事をしました。
 なんか、コルウス達を見ていたら、私が拗ねているみたいな態度ですね。さっきから。
 ちょっと反省です。いい年して大人げないですね。
 
 「よろしくお願いしますね。カラスさん」

 カァっとひと鳴きして返事をされました。言葉が分かるとは流石カラス。
 もしくはコルウスの技量ですかね?
 そしてカラスにつり下がり、紐をブランコ状にして座って運ばれます。
 勿論、カラス達も日本からギリシアまで行くのはキツイですから休み休みに孤島などに寄ったりしながら進みます。カラスさん、ふぁいとーですよ。
 そうして、数日立つとロドリオ村付近の場所に下りました。
 懐かしいですねぇ……。

 「真名様、長旅お疲れ様です」

 「いえ、カラス達のおかげです。ありがとう」

 カラス達に礼を言うとやっぱりというか、ひと鳴き聞こえ、それぞれ紐を解き、木々にとまりました。頭が良いですな。

 「此処からは私が先導します。仮面を付けていない貴女はまるで美しい女官候補にしか見えませんので」

 美しいは余計じゃい。

 「では、お願いします」

 魚座の黄金聖衣を呼んで纏えば一発なんですけど、今はもうディーテのモノ。そう勝手に纏えないんですよね。
 そう思いながらロドリオ村には入らず、直接聖域に向かいます。
 しばらく歩いているとコロシアムに着き、懐かしさで周りを見回しました。

 「此処は変わりませんね」

 「はい、兵の皆も、聖闘士達も日々鍛錬しております」

 「鍛錬も良いですが、座学はしているのですか?」

 そういうとコルウスはそっぽを向いて早足で聖域方面に向かいます。
 座学は得意ではないのですね……。
 コロシアムの端に居るというのに視線を感じます。
 そこには”彼”そっくりに成長しているアイオリアの姿がありました。
 いや、本当にそっくりですね?
 
 「真名様、どうかされましたでしょうか?」

 「いえ、なんでもありません。行きましょう」

 アイオリア、また会いましょうね……。

 そう気持ちだけでもと思い、見つめてくるアイオリアに微笑むと彼は何故か、たじろいて目を逸らしました。
 おや?微笑む位しかしてないんですけど。
 まぁ、大丈夫ですかね?
 しかし、聖域に来てしまった訳ですから、素顔はバレても良いのです。
 もう聖闘士ではない?もどきみたいなモノですかね?
 長年仮面を被っていませんのでこの際、殺すも愛すもないですよねー。
 そんな事を歩きながら考えていると、
 
 「真名様、この先は貴女様お一人でお上りください。私はこれ以上進んではいけないとの事で……」

 コルウスに言われてハッとしました。
 気付いたら、もう目の前には聖域の白羊宮前まで来ていました。
 
 「わかりました。此処までありがとうございました。コルウス」
 
 「いえ、そのお言葉だけでも勿体なきお言葉。此処までお連れするのが我が役目ですので、お気になさらないでください。では、失礼します」

 コルウスがそういうと来た道を戻って行きました。
 さて、上りますか。果たして何人の黄金聖闘士に会うでしょう?
 白羊宮、ムウは今居ないですからさっさと行きます。
 
 「あー、居ますねぇ」

 上って金牛宮前に居ます。
 そう、”居る”んですよ。恐らくアルデバランが。
 私が近寄って小宇宙を探ったら見つかりましたね、コレは。

 「果たして、無事に通れるのでしょうか?」

 まぁ、女は度胸!やーってやりますよ!
 そして、金牛宮に入っていく私なのでした。

 「こんにちはー!」

 金牛宮の真ん中あたりまで来てそろそろ出会うであろうアルデバランに挨拶しました。すると、柱の陰から元々大きかったですが、成長して大きくなった訓練用の服を着たままのアルデバランが出てきました。……本当に大きいです。

 「ほう、挨拶とは随分と余裕なのだな。だが、この聖域の女官ではなさそうだ。名を名乗れ」

 すっごく余裕そうに言ってきました。さて、それでは面白みがありません。
 ちょっといたずらでもしましょうか。

 「ふふっ、挨拶は大事ですよ?けれども名を名乗るのは今は出来ません。ご自分で当てられよ。御仁」

 「ふむ、確かに挨拶は大事だが名乗らないのであれば、仕方ない。当てると言っても、手掛かりも何もないのでは無理ではないか」

 「そうですか。では、こうしましょう」

 私は人差し指を一つ上げます。

 「?」

 「一発です」

 にやりとアルデバランに笑いかけました。

 「貴方は私に一発当てれたら、私は此処を去りましょう。そして、私が五回、貴方に触れたら此処を通してください」

 「…………」

 おお、どんどんアルデバランの小宇宙が高まってきましたね。
 さて、返答は?まぁ、分かっていますがね。

 「ふふふ、ははははは!俺も舐められたモノよ、良いだろう。女とて、容赦はせん。かかって来い!」

 ふふっ、そうではないと面白みがありません。

 「では、失礼して……」

 私がそう言うと、アルデバランに向かって走り出しました。

 「むっ、正面から来るとは!本当に舐められているな!」

 アルデバランはそう言って音速5、白銀聖闘士並みの速さで私を掴みに動きました。舐めているのは……

 「貴方ですよ!アルデバラン!」

 「むっ!?」

 光速で動く事が出来る黄金聖闘士であった私に、音速は止まって見えます。
 私を掴もうとしたアルデバランの手は、触れるか触れないかの瞬間に高く飛び上がり、アルデバランの頭部に手を置いて、改めて飛び上がりました。
 そして、アルデバランの背後に着地して向き直り、背中にタッチして直に離れます。思った通り、腕を伸ばし振り回す形で私に攻撃してきました。遅いですよ!

 「これで一、二回目」

 「くっ、お前、何者だ?俺の動きが分かっていた様だが……」

 ふふふっ、それは

 「秘密です。さて、あと三回ですよ?」

 「……どうやら舐めていたのは確かに、俺の方だったようだ。だが!」

 むん!と一声上げて気合を入れたようですね。そうでなくては!

 「今度はそうはいかん!」

 そう言い放ち、アルデバランの必殺技、グレートホーンを放つ態勢になりました。
 流石に黄金聖衣を着ていないので威力は多少変わりますが、着ないでくれて助かります。
 もしも着ていたら私も魚座の黄金聖衣を着ないと一発掠っただけでも大ダメージですからね。ある意味感謝です。
 
 「では、私もヒントでも出しますか!」

 そう言い、黄色い薔薇、パラライズローズを取り出します。
 聖域に居る人物達でパラライズローズを知っているのはアイオロスとサガ、年中者の三人のみ。アルデバランにはどう映るでしょうね?

 「薔薇……?アフロディーテの弟子か何かか?」

 なるほど、そう来ますか。

 「さて、どうでしょう?」

 「それに、俺は名乗っていないのに何故お前は俺の名を知っている?」

 おおう、バレましたか。さり気なく言ったつもりでしたので、意外と早かったですね。

 「それは……」

 「……それは?」

 「秘密です!」

 にぱっ!っと微笑みます。
 
 「ふっ、流石にそうそう教えてはくれんか」

 「そういう事です」

 「ならば、言いたくなる様にするまで!」

 気合をためる様な態勢になり、小宇宙が高まります。来ますね!

 「【グレートホーン】!!」

 勢いをつけて両手を突き出し、必殺技を繰り出しました。
 そして、私が立っていた場所まで黄金の小宇宙が襲いましたが、先程よりも高く飛び上がり、グレートホーンから逃れます。今度はアルデバランの真横に飛び降り、突き出している腕、肩にタッチして直に離れます。
 ちなみにパラライズローズを刺してからですけどね。
 すると、グレートホーンの技を放ち終わった時、アルデバランがガクッと膝をつきます。

 「これであと、一回」

 「くっ、このしびれる様な感覚は……!この薔薇か!ちぃっ!」

 パラライズローズをむしり取りましたが、もうすでに遅し。ですよ?

 「はい、チャックメイトです」

 私がそう言って近付いた瞬間、横に腕を振り上げ、私は後ろへ下がります。

 「そう簡単に上がらせてなるものか……!」

 「…………」

 仕方ないですねぇ。
 私は猛り立つ野牛と化しかけているアルデバランに近付かない様に遠くから薔薇を取り出し、投げつけ、また腕を振り上げる動作をした瞬間を狙ってもう一度薔薇を投げました。
 青い薔薇を。
 それを見たアルデバランは驚愕に目を染めて己の肩に刺さるキュアローズを見ました。 

 「お前……、いや、貴女は……。まさか」

 「やっと、わかりました?アルデバラン?」

 そう言いながら近づき、膝をついている為、私より低くなったアルデバランの頭に手を置き、撫でます。

 「大きくなりましたね、アルデバラン。元々私より大きかったですがね」

 「真名……真名なのか……?」

 そう言って確認してくるアルデバランに私は微笑みかけました。
 
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