背後にいるもの
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第四章
「その様にすればです」
「社内に入られるのね」
「この世界でもアメリカはアメリカです」
「信仰が重要ね」
「宣教師が神を説く催し位はどの企業でも許してもらえます」
こう言ってだった。
ヘミングウェーはこの話を持って来た社員に頼んで社内で自分達の神の説法を説く催しを開いてもらった、幸い社員の些細なイベントなので社長ではなくそうした部署の部長クラスの決裁それも快諾されるものなのであっさりと話は通った。
ヘミングウェーはそのまま、ボームはいつもの白衣ではなく牧師の服を着てそのうえで社内に入った。そして社員達にだった。
神の道を説いた、このこと自体は好評だったがここでだった。
ヘミングウェーはある社員に何気なくを装ってこう言った。
「この度のことを社長さんにお礼を申し上げたいですが」
「社長にですか」
「はい、社内で説かせて頂いて」
普通の宣教師の顔で語った。
「そのことについて」
「そうですか、では」
部長の裁定でもとだ、その社員も頷いてだった。
秘書に話したが今度はその秘書が来てだ、二人に言った。
「社長からの返事ですが」
「どうでしょうか」
「はい、それならとです」
ヘミングウェーはその話を聞いてこれが世間の事例に従ったものだということを内心思った。経営者には礼儀も必要ということだ。
「社長室にです」
「そうですか、では」
「案内致します」
秘書は事務的で別におかしなところはない、だが。
ヘミングウェーもボームも社長室に近付けば近付く程禍々しい瘴気を感じ取った、それでヘミングウェーはボームにアイテムを使ってテレパシーで囁いた。
「これはです」
「ええ、間違いないわね」
「社長は明らかにです」
「とんでもない人かね」
「とんでもない何かにです」
「憑かれているわね」
「そうでなければ」
とてもと言うのだった。
「これだけの瘴気はです」
「有り得ないわね」
「はい」
こうボームに答えた。
「これは」
「魔王クラスとはいかないけれど」
「相当高位の悪魔がです」
「いるわね」
「間違いなく」
「ではここはね」
「はい、社長室に入れば」
その時はと言うのだった。
「戦闘を覚悟しましょう」
「そういうことね」
「神具を出して」
そうしてとだ、ヘミングウェーは心で構えを取った。そうしてだった。
秘書に案内されてボームと共に社長室に入った、広いビロードが敷かれた絨毯の部屋の奥にノームの中年の太った眼鏡の女がいた。
秘書が部屋を後にしてからだ、ヘミングウェーはその女に言った。
「はじめましてと言いたいですが」
「違うというのね」
「貴女には違う言葉を贈ります」
「では何かしら」
「今から祓います」
こう言って身構える、隣にいるボームもそうしたが。
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