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八条学園騒動記

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第五百十三話 素晴らしきかな文学その十一

「高名な哲学者、思想家と言われてな」
「実は、よね」
「ナチスを支持したとかな」
 ハイデッガーのことだ、存在と無という著作で知られているがこの人物はこちらのことで批判を受けてもきた。
「あるしな」
「ああ、ナチスね」
「まあナチスは状況がな」
 当時のドイツの、というのだ。
「洒落になってなくてな」
「経済崩壊しててね」
「食うにも困っていたしな」
 居酒屋で飲んでいるとその間に物価が上がっていたという程のインフラだった。そこまでのインフレだったからだ。
「それでな」
「ヒトラーの演説も凄かったのよね」
「それでな」
「ついついよね」
「騙されてな」
 そうしてというのだ。
「それもあったからな」
「そうよね」
「仕方ない部分があったがな」
 ナチスに支持されることはというのだ。
「やっぱり」
「そうよね」
「ただな、どう見ても胡散臭いカルト教団に騙されるとかな」
「そうした思想家もいるわね」
「これを見たらな」
「その思想家は馬鹿よね」
「そうとしか思えないからな」
 それこそというのだ。
「だからな」
「思想家っていってもね」
「それぞれだな、というか結論はな」
 それはというと。
「誰でもわかる様な文章を書けないだけでな」
「その人についてはよね」
「読む価値があるか」
「そうなるわね」
「やっぱり真理は単純なんだろうな」
 洪童はナンシーにこの結論を述べた。
「結局のところは」
「辿り着く為に苦労しても」
「そんな難しい文章でやたら書くものじゃないんだ」
 真理、それはというのだ。
「本当に簡単でな」
「誰が読んでもわかる」
「そんなものだろうな」
「それを変に難しく書くと」
「かえってだ」
「おかしくなる、いえ」
 ここでだ、ナンシ―は自分の言葉を訂正させて述べた。
「実は真理を語っていない」
「そういうことだろうな」
「簡単ね」
「そうだな、まあ真理がわかってもな」
 それでもとだ、洪童はまた述べた。
「その真理を実現出来るか」
「それは別問題ね」
「知ることと実行はな」
「そこはまたね」
「別のことだろうな」
 洪童はシェークスピアを読みつつナンシ―に述べた、そこに書いてあるものは人の愚かさ確かに真理であった。


素晴らしきかな文学   完


                  2019・2・23 
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