魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
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第一部
第46話 動く
「おらアッ‼︎‼︎」
「シッ‼︎」
橙条は自分に掛かる重量を重くした状態で床を踏み込み、床を放射線状に破壊する。そして粉々になった床の破片を浮かせて、それらを仁に向かって飛ばす。
仁は魔法で作り出した投げナイフを大量に投げ、橙条が飛ばした破片に正確に当てていく。殆どは破片に突き刺さり、橙条の方へ届く事は無かったが、数本は破片を貫通し、橙条の近くの床に突き刺さる。
そんな戦い方を繰り返していた為、床はナイフと破片で、足の踏み場も無いくらい一杯になっていた。
「……チッ。このままじゃラチがあかねェ」
「まぁね。でも、このまま行けば貴様は三分後には降参しているだろうけどね」
「ハッ。どんな冗談だ。いいか? 『降参』っつって戦いから逃げていい時なんか、ぜってェにねぇんだよ‼︎」
橙条が吠える。
それに感化された様に、仁が橙条との距離を詰める。
重力と、尽きることの無い武器の戦い。
何方が勝つか、未だ誰にも予想出来ない。
◆ ◇ ◆
琴葉「響、ありがとう。そろそろ下ろしてくれて良いですからね」
響「やだ。もう少し」
琴葉「はいはい……」
「「「「「メイド狡い」」」」」
激しい戦いが行われている下で、こんなくだらない茶番が行われている事も、誰にも予想出来なかっただろう。
———二度目の天井崩落も。
「「「「ぎゃぁぁああああああああああ‼︎‼︎‼︎」」」」
「「「わぁぁぁあああああ(棒)」」」
反射的に、全員が瓦礫を避ける様に跳躍。無事、全員瓦礫の下敷きになる事は避けたが———
「……道、塞がっちゃったんですけど」
「「「「え」」」」
「地下牢獄の階段、此の先にしか無いんですけど」
「「「「え」」」」
「後ろも瓦礫で塞がってるし、他の通路無いんですけど」
「「「「え」」」」
「このままだと脱出不可能なんですけど!」
「「「「えええぇぇぇぇええええええええっっ⁉︎⁉︎」
◆ ◇ ◆
「だぁぁああああ‼︎」
「うおっ。こーちゃんが叫ぶなんて珍しいね」
「“珍しいね”? 貴様は良くそんな落ち着いて居られるな‼︎ それに“こーちゃん”は止めろ‼︎」
「あ、じゃあ神白主任」
「うわ、気持ち悪い」
「こーちゃんってそんなこと言うキャラだっけ?」
ってわけで俺です、青藍でーす。
昨日の夜囚人三人が脱獄して、一舎主任の要っちと二舎主任のまーさんが無断欠勤。
そして、計五人が向かった先はマフィアビル。
……ただのアホ‼︎ バカ‼︎‼︎ 小学生でもそんなことしないよ‼︎
あっ、てことはあの五人は赤ちゃん……
まぁ良いや。取り敢えず、そんな事があって、第一魔法刑務所内はマジで大騒ぎ。
「取り敢えず、私と青藍を中心とした五人くらいの看守でマフィアビルに乗り込むぞ。目標は五人の回収だ」
「流石に少なくない? 戦闘が目的じゃないとしても、流石にマズイんじゃ……」
「恐らく、橙条は警備に見つかり次第、口封じの為に直ぐに戦闘を始めるだろう。彼奴は決して弱くない。だから、マフィアのは彼奴の対応に追われるだろう。だから、そうやって対応に追われている所に少人数で忍び込んで、五人を回収して逃走する。どうだ?」
「おっけー‼︎ じゃあ橙条ちゃんと汐梨ちゃんと姐さん呼んでくる‼︎」
「は……? まぁいいか……」
四舎の看守室を飛び出しつつ、俺は電話を掛けた。
相手は看守長。この作戦の内容を報告する為に。
上手くいくかはわからない。
いかない確率の方がきっと高い。
だけど、何故か行かないといけない気がしたから。
まーさんと要っちが言っていた、“黒華琴葉”って言う人の事が気になって仕方がなかった。
その人について、大切な事を忘れてしまった様な気がしたから。
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