戦国異伝供書
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第四十話 上田領有その四
「あの方の下で、です」
「泰平になるか」
「それがしはそう確信しています」
「だからこそじゃな」
「はい、それがしはお館様の器を見る為に信濃に送られましたが」
「そしてその目で見てか」
「わかりましたので」
それでというのだ。
「それがしはです」
「必ずか」
「はい、父上も叔父上達も説得し」
「そしてじゃな」
「祖父殿もです」
真田家の当主である真田幸隆、彼もというのだ。
「説得致します」
「わかった、しかしな」
「しかしとは」
「お主はとりわけ忠義の心が強いな」
「その心がですか」
「これまでは仁や信の心が強いと思っておったが」
それがというのだ。
「そうした心よりもじゃ」
「忠義の心がですか」
「強くてじゃ」
それでというのだ。
「その強さは鋼の如きの様じゃな」
「それがしはそこまで忠義が強いですか」
「そう思う、他の心も強いが」
その中でもというだ。
「今わかった」
「そうですか」
「それはお主の気質じゃな、そして他の心も強く」
仁や信の心もというのだ。
「お主は道を間違えぬ」
「そうなのですか」
「その心が折れることもなかろう」
例え何があってもというのだ。
「決してな」
「そうであればいいですが」
「しかもお主にはじゃ」
ただ心が強いだけでないとだ、ここでだった。
信之は彼の後ろにいる十勇士達も見て微笑んで述べた。
「この者達もおるしな」
「この者達ですか」
「そうじゃ」
「この者達はそれがしの家臣であり」
そしてとだ、幸村も十勇士達を見て話した。
「義兄弟であり友である」
「何よりも強い絆で無図ばれておるな」
「十一人が全て」
「そうであるな、ならばじゃ」
「それがしに何があろうとも」
「大丈夫じゃ」
明るく笑っての言葉だった。
「お主はな」
「ではこの者達は」
「お主にとっては宝じゃな」
「何よりも尊い」
「お主は欲はない」
信之はこのこともよく知っていた。
「何に対してもな」
「はい、富や地位やそうしたもには」
「興味がないな」
「これが」
どうもと言うのだった。
「生まれてこのかた」
「興味を示したことがないな」
「食することが出来れば」
それが粗末なものでもだ。
「よいです、武具や馬はよいものが欲しくとも」
「それでもじゃな」
「強くは」
「思っておらぬな」
「はい、名剣や名馬よりも」
「使う者の腕じゃな」
「使う者の腕がよくしかも手入れを怠らねば」
そうであればというのだ。
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