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実はリア充

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第四章

「滅多にないから」
「じゃあ俺は平凡の平凡でか」
「そう、かえってね」
 まさにというのだ。
「幸せなのよ」
「そうなんだな」
「そうよ、お家も普通の郊外の一軒家で」
 父親がローンで買ったものだ。
「ワンちゃんもいるでしょ」
「普通の柴犬な」
 ちなみに名前は雌なので花子となっている。
「本当に」
「その普通の柴犬もね」
「滅多にないか」
「ワンちゃん飼えないお家もあったり変なワンちゃんだったりもするし」
「怖い犬とかいるしな」
「吠えたり噛んだりね」
「そう思うと俺ってかなりか」
 ここで晋太郎はこの考えに至った。
「相当か」
「そうよ、幸せだと思うわよ」
「そうなんだな」
 晋太郎は亜理紗の言葉に応えた、だがこの時はまだ考えが至った段階だった。しかし家に帰るとだった。
 そこでだ、妹の由依を見た。中学三年で背は一四〇位と小柄だが。
 愛嬌のある顔立ちに胸が異常に大きい、小柄な身体だが八十八は普通にある。その妹も胸はともかく普通の成績で普通の性格だ。
 それでだ、こう彼に言うのだった。
「お兄ちゃん、先にお風呂入る?」
「ああ、それじゃあな」
「じゃあ早く入ってね、私ちょっと勉強あるから」
「御前受験生だしな」
「そうK高受けるから」
「ああ、公立の」
 県内で結構有名な進学校だ、妹は彼より成績がいいのだ。
「あそこか」
「そう、この前の模試で合格確実って出たから」
「それならか」
「もっと頑張ってね」
 そうしてというのだ。
「絶対に合格するから」
「そうか、頑張れよ」
「ええ、じゃあ今から勉強するから」
 ごく普通の兄妹のやり取りだった、特に仲がいい訳でもなく悪い訳でもない。両親共関係は悪くなかった。
 ここでやっぱり自分は恵まれていると思った、そしてそれは翌朝起きて朝食を食べて身支度を整えてだった。
 家から駅まで歩いていこうとするとだ、妹が言ってきた。
「お兄ちゃん、文奈さんからメール来てるよ」
「えっ、あの人からか」
 二人にとっては従姉である、実家は別の県だが大学がこの近くなので学生用のマンションに一人暮らしをしているのだ。
「ってことは」
「うん、今日もね」
「送ってくれるんだな」
「何でも女の子が一人で出歩くとかね」
「不用心だからか」
「うん、それでね」
 妹を軸に置いていてというのだ。
「今日も私を中学校に送ってくれて」
「俺もか」
「ええ、駅までね」
「何か悪いな」
「そうね、けれど文奈さんがいいって言うから」
 それならというのだ。
「それならね」
「今日もか」
「是非受けろ、もうこっちに来るってね」
「メールで言ってるんだな」
「そうよ」
「相変わらず強引だな」
「けれどいつも私達のこと思ってくれてるじゃない」
 その従姉はというのだ。 
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