ある晴れた日に
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
230部分:オレンジは花の香りその十三
オレンジは花の香りその十三
「そんな感じなんだよな、何かな」
「お母さんってこと?私が」
「ああ、そうだよね」
野本の今の言葉に相槌を打ったのは桐生だった。
「確かにそうだね。そんなポジションだよ」
「そうなの」
「って自覚ねえのかよ」
「今までそうだったんじゃねえのか?」
「私は別に」
皆から突っ込みを入れられてもそれはないのだった。それどころかきょとんとした顔にさえなってしまっている。
「そういうのは」
「そこが未晴のいいところなのよ」
「そうそう」
またここで五人組が未晴に寄り添いながら笑顔で話す。
「飾らないし気取らないし」
「偉そうにもしないしね。それどころか謙虚だし」
「だから私達未晴大好きなのよ」
「それはいいけれどな」
正道はそんな五人と未晴を冷めた目で見つつ言ってきた。
「御前等それでもな」
「何かあるのかよ」
「甘え過ぎだろ、竹林に」
こう春華に返すのだった。
「昔からそんなのか?ひょっとしてよ」
「別にそれはよ」
こう言われると普段の強気さが弱まる春華だった。
「うち等だって未晴に気を使ってるしよ」
「そうよ。未晴友達だし」
「もう大親友なのよ。それで甘えてるって」
「けれど頼りきりだな」
正道はまだ言うのだった。
「それもかなりな。違うか?」
「うっ、それを言われると」
「ちょっと」
とりあえず自覚はある彼女達だった。それを考えればまだ救いがあるというものだった。
「だけれど。未晴が困った時は私達も」
「フォローしようって」
「竹林のフォローが十なら御前等はどの位なんだよ」
今度の正道の突っ込みは数字まで出してきたものだった。
「一かそれ位だろうがよ」
「ま、まあそうかも」
「っていうか未晴の失敗ってねえ」
「見たことないわよねえ」
「なあ」
正道の数字を出してまでの突っ込みには五人組も狼狽を隠せない。それぞれ顔を見合わせて言い合うがこれで立場はかなり弱いものになった。
だがそれでもだった。五人はまだ言う。
「それでも。未晴が困ってたら絶対に」
「見捨てるつもりなんてないし」
「未晴だから」
「竹林だからかよ」
「だから友達なのよ」
静華がいささか必死な顔になっていた。
「ずっと一緒にいる。それで何で見捨てるのよ」
「それは絶対なんだな」
「当たり前よ。未晴に変なことする奴いたら」
静華は自然と構えを取り出していた。空手のその構えである。ここで彼女が習っているその空手が出て来たのだ。中々筋のいい動きと構えを見せる。
「私がぶっ飛ばしてやるわよ。この拳でね」
「そういや御前黒帯だったな」
「空手部だったよな」
「そうよ」
男組の突っ込みにも構えを取ったまま述べる。
「痴漢でも変態でもね。勝てるわよ」
「随分と自信があるんだな」
「小学校の時からやってたからね」
誇らしげな顔で右の拳を前に繰り出す。やはり筋のいい動きだ。
「今二段よ」
「蹴りはしねえのかよ」
「だって今スカートだし」
だからそれはしないというのだった。
「そんなのしたらそれこそ」
「黒い下着が見えるってか?」
「私黒なんて持ってないわよ」
坪本のさりげないがかなり仕込んである突っ込みに何も考えず答えた静華だった。
ページ上へ戻る