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ある晴れた日に

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156部分:共に生きその六


共に生きその六

「あらすじは全部わかってるんだよな」
「台詞までわかってるよ」
 落ち着いて春華に返したのだった。
「ちゃんとね」
「本持ってるのかよ」
「家にあるんだ」
 そうした事情まで話した。
「だから安心して。脚本だって書けるよ」
「じゃあ脚本も決まりね」
「あんたで」
 主役二人の次にはそれが決まったのだった。実にあっさりと。
「じゃあ竹山君」
「うん」
 ここで千佳がその竹山に声をかけ彼もそれに応える。
「脚本、御願いするわね」
「わかったよ。じゃあ書かせてもらうよ」
「これで脚本も決まりね」
「後は配役だね」 
 脚本の欄を書き終えた加山が顔を前にやって言ってきた。実は彼もクラス委員だが仕切っているのは千佳になっているのがこのクラスである。
「それはどうするの?」
「とりあえず悪役は髭の意休だけれどね」
 また竹山が言ってきた。
「これって白い顔でかなりこい顎鬚で堂々とした悪党なんだ」
「悪党なの」
「幕府乗っ取りを頼むね。そんな奴なんだ」
「それだったら野本じゃないの?」
「なあ」
 皆竹山の話を聞いていて自然に彼に目を向けるのだった。
「悪役なら」
「そういうのを演じる為に生きているようなもんだし」
「で、俺かよ」
 話を振られた野本はここでいささか面白くなさそうな顔を皆に向けた。
「そんな理由で」
「別にいいだろ?」
「これってかなり目立つ役みたいよ?」
「ああ、目立つのか」
 目立つと聞いて早速乗ってきた野本だった。この辺りは流石と言う域に達している。
「じゃあ俺はいいぜ」
「はい、これで決まり」
「悪役は野本」
 これまた実にあっさりと決まったのだった。
「少年、思いきりやっちゃっていいからね」
「中森もな」
 早速主役二人に煽りが入る。何はともあれこれで悪役まで決まった。
「あとはお兄さんとお母さんだけれどね。助六の」
「はい、眼鏡君」
 咲はあっさりと桐生を推薦した。
「お兄さん役ならね」
「僕なんだ」
「嫌だったらいいけれど」
「まだ何も言っていないけれど何で僕がお兄さん役なの?」
「えっ!?そんなの決まってるじゃない」
 何を今更と言わんばかりの咲の言葉だった。その顔も笑っている。
「雰囲気よ」
「それだったんだ」
「だって感じが一番落ち着いてるし」
「そうだよな、確かに」
「桐生ってな」
 そして皆もそれに頷くのだった。言われてみれば確かにそうであった。
「じゃあお兄さん役も決まりで」
「桐生、それでいいよな」
「まあ別に」
 彼も目を少ししばたかせたりしているがそれでも反対はしなかった。
「推薦してくれるんなら」
「この役は結構頼りない役なんだよ」
 また竹山が言ってきた。
「助六が強い分だけね」
「ああ、じゃあぴったり」
「本当に」
「他にも意休の子分でくわんぺら門兵衛とか朝顔千兵衛なんてのもいるけれど」
 この二人の名前には皆すぐに顔を顰めさせてきた。
「何だその名前」
「ふざけてるの?」
「こういう名前も歌舞伎には多いから」
 また歌舞伎について述べて答える竹山だった。
「特に考えることないよ。格好も凄いし」
「そうなのかよ」
「そんな役なの」
「うん。まあこれは噛ませ犬みたいな大した役じゃないけれど」
「だったら坪本と佐々だな」
「そうね」
 この役もすぐに決まったのだった。
 
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