夢幻水滸伝

「どうかって言ったんだよ」
「そういうことだな」
「おう、じゃあな」
「それでだな」
「攻めるぜ」
「わかった、だが東北にも空船があってだ」
　日毬は幸田の会津若松城の攻め方をよしとしつつも相手である東北のことについても彼に話をした。
「そして城にも対空砲がある」
「それだよな」
「そのこともわかっているな」
「ああ、空船があるとな」
「相手も対抗手段を講じてだ」
　そうしてというのだ。
「用意してくる」
「何処でもそうだよな」
「あらゆることも対策が用意される」
　これもまた世の中の摂理である、この世界でもそれは同じだ。
「だからだ」
「あちらも対空をやってきてるな」
「そういうことだ、相手も空船があってだ」
「対空砲があるな」
「大砲に投石機にな」
「色々あるな」
「それを撃って来る」
　日毬は幸田に淡々として話した。
「だからだ」
「このことには注意してな」
「攻めることだ、いいな」
「おうよ、そうしてだな」
「あの城を攻め落とす、そしてだ」
「それからだよな」
「まだあの者達が戦うというのならな」
　その時はとだ、日毬はさらに話した。正面を向いているその表情は強く鋭いものになっていた。まるで今刀を抜く様な。
「さらにだ」
「攻めてくんだな」
「仙台も秋田も、そして」
「蝦夷もな」
「五稜郭もな」
　この城もというのだ。
「攻め落とすぞ」
「あそこもか」
「そうするぞ」
「ああ、しかし五稜郭か」
「あの城に何か思うところがあるか」
「いや、おいら行ったことがあるんだよ」
　その五稜郭にとだ、幸田は日毬に話した。
「あっちの世界でな」
「観光でか」
「ああ、おいらの家族と麻友っちの家族でな」
「その時も一緒だったのか」
「お互い小学生だったな」
　その時の話だったというのだ。
「おいらは五年で麻友っちが四年でな」
「その時にか」
「おう、それでな」
　そのうえでというのだ。
「五稜郭に行ってな」
「そうしてか」
「あそこは知っててな、好きな場所なんだよ」
「そこで戦うとなるとな」
「感慨があるか」
「どうもな、あと土方さんが死んだところ見たぜ」
　新選組の副長だった男だ、五稜郭での戦いの時は陸軍奉行並として戦った。
「その場所をな」
「あの人はあそこで死んだな」
「おう、それでな」
「その場所を見たか」
「ここかってな、しかしこっちの世界だとな」
「五稜郭はあるがな」
　しかしとだ、日毬も答えた。
「新選組はなくだ」
「それでだよな」
「土方歳三もいない」
　その五稜郭で死んだ人物はというのだ。