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夢幻水滸伝

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第八十八話 会津の攻防その三

「贔屓ってのはよくねえからな」
「治めるならですね」
「どの国も民も贔屓しない」
「公平に、ですね」
「無事に治めていきますね」
「おうよ、特に東北は寒いうえに開発が遅れてるからな」
 幸田は宮沢達が危惧しているこの状況を正確に把握していた、そうした意味で三人の懸念は杞憂であったがそれを彼等が知る由はない。
「かなり金も人も使ってな」
「そのうえで、ですか」
「積極的にですか」
「治めてな」
 そうしてというのだ。
「豊かにするぜ」
「そうですか、では」
「ああ、その時はな」
「東北は、ですね」
「関東そして蝦夷と同じくな」
 武者小路にあらためて話した。
「豊かにするからな」
「わかりました」
「やっぱり政が第一だよ」
 何といってもという言葉だった。
「それも公平にだよ」
「一部を優先すると」
「絶対にそこでしくじるからな」
「よく貴族優先政治等ありますね」
「それ潰れてるだろ」
 そうしたことを行った政権はというのだ。
「そうだろ」
「はい、他の層の反発を受けて」
「おいらが思うにそんな政をする奴はな」
 どういった輩かというのだ。
「失格だな」
「治める者として」
「ああ、試しにそれをおいら達の日本でやるとな」
「票が集まりませんね」
 武者小路は民主政治に例えて話した。
「やはり幅広い政策でないと」
「そうだろ、そんな政をしたらな」
 それでとだ、幸田はまた言った。
「結局駄目なんだよ」
「最大多数の最大幸福」
 有島はこの言葉を出した。
「それですね」
「そうだよ、だから関東だけってのはな」
「棟梁もされないですね」
「そりゃ政も出来る限界があるさ」
 どうしてもとだ、幸田は関東の棟梁として政を担ってからこのことを痛感していた、人手や予算のことからそうなったのだ。
「けれどな」
「やはり出来る限り、ですね」
「広い範囲で公平にな」
「政をしていくべきですね」
「そうだよ、だから東北も手に入れたらな」
 その時はというのだ。
「ちゃんと治めてくぜ、それもかなり力を入れてな」
「ないがしろにはですね」
「絶対にするものか、蝦夷だってな」
 この地もいうのだ。
「治めてくぜ」
「こちらの世界では千島や樺太も領土になっていますね」
 遠藤が言ってきた。
「それではですね」
「ああ、そうした場所までな」
「しっかりと治めますね」
「まだロシアはシベリアを進んでる最中でこっちには来てないしな」
 このことを幸いとしてとだ、幸田はこうも言った。
「だったらな」
「今のうちにですね」
「そうした場所も固めていくぜ、あとな」
「あと?どうされました」
「そのロシアの女帝には気をつけろよ」
 幸田は遠藤だけでなく武者小路と有島にもエカチェリーナのことを真剣な顔で話した。
「必要とあれば徹底してやるタイプみたいだからな」
「聞いています、敵は容赦なく攻撃し」
「そして弾圧も行いますね」
「多くの者を生き埋めにしたそうですね」
「ああ、しかも尋常じゃねえ強さだ」
 ただ必要となれば冷酷になれるだけでなく、というのだ。 
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