八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百二十二話 日本の悪役その九
「よくなかったかもね」
「そうした人でしたか」
「当時から見てもかなり保守的な考えで」
保守的と言われていた天保の改革の水野忠邦以上だったかも知れない、勿論寛政の改革の松平定信よりもだ。
「それで芸術家肌故の完璧主義者で」
「徹底してやる人だったので」
「しかも彦根藩の藩主だったから」
「そのこともありますか」
「彦根藩って名門だよね」
「井伊家ですね」
「譜代筆頭でね」
「徳川四天王の家ですね」
「そうだよ、井伊直政の家だよ」
徳川家康に仕えた家臣団の中でもとりわけ有名だった人達だ、それでこの称号さえ付けられたのだ。
「それで大老までする家柄でね」
「名門で」
「そう、名門でね」
それでだ。
「その意識も強くて」
「その藩主になられて」
「しかも本来はなれなかった人だから」
井伊家の人でも十数男の順番だとそうなる、本当に何処かに養子にでも行かないとどうしようもない状況だった。
「余計にね」
「そこで思いが裏返って」
「部屋住みの人が藩主になったから」
「部屋住みの鬱屈した気持ちも」
「それがひっくり返ってんだろうね」
「お殿様になって」
「しかも井伊家が幕府を守る家の筆頭だったから」
四天王の家、譜代筆頭の家だ。武田家に倣った赤備えもまたその誇りと思いをさらに強くさせたのだろう。
「余計にね」
「そうした使命感を持って」
「ああした行いにさせただろうから」
「大老にならなくても」
「都の守護職になったら」
「大変なことになっていましたか」
「ブレーンの長野って人も同じ考えの人で」
この人が止めるどころか助長させた人だ。
「もう出す考えが全部ね」
「井伊直弼さんを助長させたのですね」
「同じ様な思想でね」
しかもだった。
「元々歌人で茶道も学問も好きだったそうで」
「井伊直弼さんと同じですか」
「芸術家だったから」
「その気質が出てしまって」
「悪くね」
それが為にだ。
「井伊直弼を助長させたし」
「止める人がいなかったのですね」
「止めるべき人がそうで」
しかもだ。
「元々人の話聞く人じゃなかったみたいだし」
「ドラマ等では頑固であることが多いですね」
「だから反論する人はとんどん蟄居にしたし」
それで言う人もいなくなったとのことだ、
「余計に悪かったみたいだよ」
「悪循環ですね」
「そうだね、だからまだ大老になってよかったかもね」
「都で大変なことをするよりは」
「安政の大獄も沢山の人が死んだけれど」
これからの日本を思うと生きていればという人達がだ。
「西郷隆盛さん達が死んだら」
「余計にですね」
「大変だったからね」
日本の未来を考えるとこの人達が死んだらそのダメージは計り知れない、そこまでのものだと思う。
「本当にそもそも藩主にならなかったら」
「よかったですか」
「そうした人だったよ」
「そうですか」
「悪人ではなかったのは間違いないよ」
人間としての性質はだ。
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