ある晴れた日に
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135部分:妙なる調和その七
妙なる調和その七
「もう行くんだろ?」
「あっ」
言われて気付く千佳だった。
「そうね。それじゃあ」
「行きなよ。俺はここにいるからよ」
「まだ歌うのね」
「夕方までここにいるさ」
笑って千佳に言った。
「ここいな。だからさ、今は」
「ええ、またね」
「学校でな」
こう別れの言葉を交えさせて別れた二人だった。正道は一人になってもずっとそこでギターを奏でていた。しかしやがてそこにまた一人来たのであった。それは。
「奇遇ね」
「ああ、帰って来たのかよ」
今度来たのは未晴だった。いつもの制服とは違って淡い茶色のロングスカートに白いガーディガンにブラウスという格好である。かなり落ち着いた身なりである。
「球場から」
「勝ったわ」
微笑んで正道に言ってきた。そこに座ってギターを持っている正道。
「阪神はね。勝ったわよ」
「それは何よりだな。ところでよ」
「咲達?」
「ああ、あいつ等は何処なんだよ。甲子園で一緒だったんだろ?」
「今少年達と合流してるわ」
「あいつ等とかよ」
「横浜も勝ったのよ」
横浜ファンの明日夢についても話されるのだった。
「関東じゃヤクルトも勝ったしソフトバンクも巨人に勝ったしね」
「いいこと尽くめだったんだな」
「西武は負けたけれど日本ハムは勝ったし」
「たまには負ける時もあるさ」
さりげなく恵美のことを気遣った言葉だった。彼女が西武ファンなのはもう皆知っている。
「今年の西武は確かに強いけれどな」
「それでね。大抵のチームが勝ったし」
「しかもソフトバンクは巨人にかよ」
「ええ、それもあって」
咲がソフトバンクファンなのだった。しかも皆が皆巨人を非常に忌み嫌っている。これについては正道も完全に同じなのは言うまでもない。
「だから佐々君の店で御祝いすることになったのよ」
「だからあいつ等と一緒じゃねえのかよ」
「私は。ちょっと家に用事があって」
「用事!?」
「ちょっとね。お客さんが来るから」
「だから別れたのか」
「そうなの。お母さんの古いお友達が来られるから」
微笑んで正道に述べるのであった。
「それでなのよ」
「へえ、そうなのか」
ギターを手に静かに未晴の言葉を聞いて声で応えていた。
「それで帰って来たのか」
「そういうこと。音橋君はやっぱりここで音楽よね」
「ああ、そうさ」
未晴のその問いに頷いて答えた。
「いつもと同じさ、やっぱり俺はな」
「音楽なのね」
「さっき委員長も来たぜ」
千佳のことも話すのだった。
「ここにな」
「そうなの」
「スピッツの曲聴かせたよ」
このことも話した。
「空も飛べるはずな」
「ああ、あの曲ね」
その曲を聴かせたと聞いて頷く未晴だった。
「あの曲。いいわよね」
「竹林もスピッツ好きなのかよ」
「嫌いじゃないわ」
微笑んで正道に言葉を返すのだった。
「スピッツはね」
「竹林もかよ」
「小田和正も好きだし」
「ああ、あの人な」
小田和正と聞いて思わず声を大きくさせる正道だった。
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