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火を吐く王子

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第二章

「再び出陣して宜しいでしょうか」
「そのうえでか」
「そうした者達を成敗してきます」
 巨人や魔物達をというのだ。
「そうしてきます」
「わかった、ではだ」
「再びですね」
「出陣してくるのだ」
「王子よ」
 今度は宰相が王子に感極まった顔で申し出た。
「王子が留守の間はお任せ下さい」
「宮中に何があってもか」
「私めが王と国を守ります」
 こう言うのだった。
「そうさせて頂きます」
「そうか、ではな」
「はい、留守はお任せ下さい」
「叔父上と国を任せたぞ」
「それでは」
「王子よ、お帰りをお待ちしていますぞ」
 他の廷臣達も王に言ってきた。
「その間は我等にお任せを」
「賊だけでなく魔物達まで成敗されるとは」
「我等王子の勇気と国を想う心に打たれました」
「それではです」
「留守の間はお任せ下さい」
 こう話してだ、そしてだった。
 王子は彼等の見送りを受けヒルデブラントそして名のある勇者達を連れて今度は巨人や魔物達の成敗に向かった。
 王子が出陣した後でだ、宰相も廷臣達も暗く沈んでいる王に言った。
「王よ、頼もしいですな」
「我が国にあそこまでの方がおられるとは」
「何と有り難いことか」
「あの方がおられるなら国は安全です」
「先は確かですな」
「そ、そうであるな」
 王は今回もかと思いつつ彼等に応えた。
「まさか自分から見出してな」
「そうしてですから」
「何と頼もしいことか」
「いや、王はお子がおられませんし」
「丁度いいですな」
「そうであるな」
 ここで王は認識させられた、自分は確かに王だが。
 子がいない、息子も娘もだ。それではだ。
「余の後はな」
「必ずです」
「王子が次の王になられます」
「それではです」
「後の憂いはありません」
「うむ、しかしどうなるやら」
 王はまだ希望を見ていた、彼だけのそれを。そうしてだった。
 王子に何かある様にまた祈った、だが今回の祈りもだった。
 空しく終わり王子は今度は大軍を引き連れて帰ってきた。
「隣国と戦になりましたが」
「その戦もか」
「勝って併合しました」
「ではその者達は」
「かつて敵国の兵達で」
 それでというのだ。
「新たに我が国に降りました」
「何ということだ」
「敵でした皆勇敢で高潔な者達です」
 王子はその敵兵達のことも話した。
「ですから」
「我が国の兵としたか」
「勝手にして申し訳ありません」
「いや、いい」
 それはとだ、王は王子に答えた。
「見事だ」
「そう言われますか」
「うむ、隣国を倒しただけでなくその兵達まで降し国の兵にするとはな」
「敵の王も叔父上に臣従を誓い民達もです」
 その者達もというのだ。 
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