ある晴れた日に
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115部分:谷に走り山に走りその十一
谷に走り山に走りその十一
それが終わり帰りのバスまで行く途中で。G組の面々は結構に文句を言っていた。
「何かこの山道行きより辛くないか?」
「そういえばそうね」
春華の言葉に明日夢が頷く。
「何でだろ。同じ道なのに」
「つうか石多いよ」
春華はうんざりとした調子で足元に転がっている石の一つを山道の外に蹴りだした。右手には山の木々があり左手は開けてそこから緑の山々が連なっているのが見える。その中で不平を述べているのである。
「行きよりも。何でだよ」
「ええ、それはね」
ここで田淵先生が皆に答える。
「昨日ここで猪が出たからよ」
「猪!?」
「そんなもんがここにいるんですか」
「山には猪がいるものじゃない」
平然と驚く皆に答える先生だった。
「それはね」
「いるものって」
「滅茶苦茶危ないじゃないですか」
「猪って」
「大丈夫よ」
しかしこう生徒達に返す先生だった。
「だって。ここは餌が豊富だし」
「豊富だからって」
「ひょっとしてこの石は」
「あちこち掘り返した結果でしょうね」
「そういえばあそこ」
「そうよね」
坂上の言葉に凛が頷く。見れば道のすぐ側に穴があった。それが何なのか彼等は今の先生の話からわかったのである。
「じゃあやっぱり猪がここに」
「やばいだろ、普通に」
「だから。猪だからっていっても怖がることがないのよ」
怖がってさえいる皆にまた言う先生だった。
「だって。餌が豊富なんだから」
「そう言いますけれど猪なんかいたら」
「突進されたら」
「こっちから何もしないと大丈夫よ」
そう言って全く怖がる様子のない先生だった。
「猪にしろ熊にしろね」
「熊って」
「まさかそれも」
「最近は出ていないわよ」
熊を話に出してもいつもの調子の田淵先生だった。
「だから安心していいわ」
「去年はそうだったわね」
江夏先生がそれに応えて言う。
「確かね」
「そうよ。だから大丈夫よ」
「去年は出ていないって」
「それって」
つまり一昨年は、ということが話の流れでわかる。皆それを聞いて顔を青くさせる。昨夜とはまた違った青さだったがそれでも青くなっているのは間違いなかった。
「何でそんなところでキャンプを」
「危ないじゃないですか」
「危なくないわよ」
「そうそう」
思いきり心配そうな彼等にまた言う二人の先生だった。
「それに見つけたらすぐに捕まえて」
「食べるから」
「ああ、そういえばそれかよ」
ここでふと佐々が声をあげた。
「うちの店に時々来るあれってここからだったのかよ」
「あら、そういえば佐々君のお家って」
「飯屋です」
田淵先生に対して答える佐々だった。
「飯屋ですけれどね。時々猪や熊の肉も入るんですよ」
「それって飯屋のメニュー!?」
横から話を聞いていぶかしむ顔になる奈々瀬だった。
「普通出ないわよね」
「大魔神でも出るけれど?」
明日夢は明日夢で言う。
「普通に。焼き鳥でも野鴨とか雀とかダチョウもね」
「鴨とか雀はわかるけれどダチョウも?」
「そうよ」
落ち着いた顔で奈々瀬の言葉に答える明日夢だった。
「ダチョウも手に入るしその猪だってね」
「どうやって手に入るのよ」
奈々瀬にはそれが不思議だった。
「そんなのが。一体」
「まあ独自のルートで」
その辺りは企業秘密であるらしい。
「それでなのよ」
「独自のルートって」
「結構普通に手に入るわよ」
また言う明日夢だった。
「熊はともかく猪はね」
「そう簡単にいくの?本当に」
「結構安く済むしね」
彼女の言葉ではそうらしい。
「味もいいし」
「ええ、味はね」
奈々瀬もそれは知っているようであった。
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