八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百十九話 午後の競技その十
「ご兄弟とか子供さん小さいうちによく亡くなってるよね」
「中原中也とかな」
「あの人息子さん二人いたけれどな」
「二人共すぐに死んでるんだよな」
「小さいうちに」
「そうだったしね」
徳川綱吉が江戸近辺に施行させた生類憐みの令もそもそも跡継ぎが欲しくてだったが実はこの人は跡継ぎを僅か五歳で亡くしている、とにかく昔は子供はよく死んだのだ。
「しゃぼん玉の歌だってね」
「あれ本当は子供の歌なんだよな」
「子供がすぐ死ぬからな」
「しゃぼん玉に例えたんだよな」
「実は」
「そうだったっていうし」
このことは実際にそうらしい。
「何ていうかね」
「それじゃあな」
「座敷童もな」
「実際そうだったかもな」
「そうかもね、こけしなんかも」
この東北の有名な土産ものの一つもだ。
「子供の供養だよね」
「子消し、だよな」
「水子とかいう話もあるしな」
「そう考えるとこけしも怖いな」
「ちょっと見たら不気味だしな」
「東北がこうした話多いことは」
このことについても考えていった。
「飢饉とか貧しさもあったのかな」
「あったぜ」
秋田生まれの屋良君が言ってきた。
「それな」
「やっぱりあったんだ」
「ああ、間引きもな」
「あったんだ」
「言われてるよ」
東北ではというのだ。
「生まれても育てられないだろ」
「だからだね」
「いなかった、生まれなかったってことにしてな」
「間引くんだね」
「そんなこともあったんだよ」
「それもこけしの元だったんだね」
「みたいだな、水子や早いうちに死んだ子だけじゃなくてな」
こけしについて俗に言われている話だけでなくだ。
「間引かれた子供もな」
「こけしに入っているんだね」
「みたいだな」
「そう思うとこけしにあるものってね」
「深いし怖いだろ」
「そして悲しいね」
「俺あまりこけし好きじゃないんだよ」
屋良君は眉を顰めさせてこうも言った。
「そんな話があるからな」
「ああ、だからだね」
「こけし見てたら怖いって思う時もあるんだよ」
「そうした話がある後ろにあると思うとそうなるよね」
「何かそうした子供が見てるって思うとな」
こけしの顔はそうも見える、微笑んでいる顔が多いけれどこう考えるとこの笑みも不気味ではないだろうか。
「どうしてもな」
「怖くなって」
「好きじゃないんだよ」
「そうなんだね」
「俺人形とか能面も嫌いだしな」
「人形もなんだ」
「魂が宿るっていうだろ」
だからだというのだ。
「それも悪い魂がな」
「悪霊だね」
「この学校でも動くマネキンの話とかあるだろ」
「ああ、標本模型とかね」
理科室のそれがだ。
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