戦国異伝供書
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第三十四話 内外を治めその六
「家臣達と共にお仕えせよ」
「武田殿に」
「十勇士達と共にな」
「あの者達もとは」
「お主とあの者達は常に共におるな」
「はい、それがし達は主従の間柄ですが」
「それだけではないな」
「はい」
まさにという返事だった。
「我等は」
「友でありじゃな」
「義兄弟でもあります」
「ならばじゃ」
「あの者達もですか」
「全員じゃ」
まさにというのだ。
「連れて行ってじゃ」
「そのうえで」
「全員でじゃ」
十勇士達も含めてというのだ。
「武田殿にお仕えせよ」
「そして武田殿のことをですか」
「伝えずともよい」
「お仕えするだけでいいのですか」
「あの方にお仕えするならば」
幸村、彼がというのだ。
「お主にとって大いに学びになる」
「だからですか」
「学んでじゃ」
晴信の下でというのだ。
「今以上に大きくなるのじゃ」
「そうせよというのですか」
「そして時が来ればな」
「真田の家全体がですか」
「あの方にお仕えする」
「一族全てで」
「あの方はな」
晴信はというのだ。
「間違いなく大器であるからな」
「それ故に」
「そしてじゃ」
「そしてとは」
「お主もじゃ」
幸村もというのだ。
「あの方の下で学んでじゃ」
「大きくなるべきですか」
「うむ、お主は天下を治める者ではないが」
「それでもですか」
「天下一の武士になる」
「そうした者ですか」
「それでじゃ」
それでというのだ。
「大きく育つのじゃ」
「では」
「すぐに甲斐に行け」
十勇士達と共にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「あの方にお仕えせよ、そしてあの方が余計な血に塗れそうになるなら」
「その時はそれがしが」
「知恵を出してな」
そうしてというのだ。
「それを防ぐのじゃ」
「それがしは血は」
「戦の場で戦ってもじゃな」
「はい、それでもです」
幸村も昌幸にすぐに答えた。
「それ以外の血はです」
「嫌いじゃな」
「何よりも」
「ではその想いのままじゃ」
「武田様をですか」
「止めるのじゃ、あの方は王道を歩まれる方じゃ」
「戦で戦われ勝たれても」
それでもとだ、幸村も述べた。
「その時の血はいいとして」
「謀も必要にしてもな」
「その時以外の血は、ですな」
「いらぬ、先にお父上を弑せずに済んだことはよかったが」
これが山本の献策であることは昌幸も知っている。
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