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戦国異伝供書

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第三十四話 内外を治めその一

                第三十四話  内外を治め
 晴信は甲斐の主となってすぐに積極的に甲斐を治めはじめた、戦をせずにまずは甲斐一国を治めにかかった。
 銭も人手も使えるだけ使って堤を築かせる中で彼は自ら堤を築いている場に出てそのうえで家臣達に話した。
「まずは堤を築いてじゃ」
「民と国を水害から防ぎ」
「またその水を使ってですな」
「田も増やす」
「そうしていきますな」
「そうせよ、畑にも使うのじゃ」
 水、それをというのだ。
「そして田畑も今以上に増やすぞ」
「特に田をですな」
「今以上にですな」
「そして葡萄等多くのものを植えて食って売る」
 そうしたこともせよというのだ。
「それも進めよ、また金山からもな」
「金を掘ってですな」
「その金を使い」
「それを政に使う」
「そうもしていきますな」
「先に言った通りにじゃ、とかく今はじゃ」
 まさにと言うのだった。
「戦よりも政じゃ、国を整えてからじゃ」
「そうしてですな」
「力をつけ」
「そのうえで」
「動くこととする、まずはじっくりと治めるのじゃ」
 甲斐の国をというのだ。
「よいな」
「わかり申した、そしてお館様」
 原が晴信に聞いてきた。
「甲斐の城ですが」
「それはよい」
「新たな城は築かれませぬな」
「その必要はない、甲斐の城は人じゃ」
「人ですか」
「人が堀であり石垣でありじゃ」
 そしてとだ、晴信は原に話した。
「城である、だから城を築くよりも今はな」
「人ですか」
「人が確かに生きられるまでにしてじゃ」
 そこまで豊かにしてというのだ。
「そこから信濃に進むからな」
「城を築くよりも」
「そちらじゃ、わかったな」
「それでは」
 原はここまで聞いて納得した、そのうえで晴信に言葉を返した。
「我等も城となり」
「働いてくれるな」
「その様に」
 こう言うのだった。
「させて頂きます」
「それではな」
「そしてですな」
「うむ、それでじゃ」
「今は、ですな」
「堤を築く」
 川にというのだ。
「これ以上はないまでに確かな堤をな」
「そしてその堤で、ですか」
「もう川を氾濫させぬ」
 二度とと言ってだ、そしてだった。
 晴信は人も金も多く使って堤を築いていった、その他にも田畑や街、道等の政を行い甲斐の国全体を整えていっていた。
 こうして甲斐は日に日によくなっていった、信繁はその状況を見て兄に話した。
「もう倍程はです」
「国がよくなっておるか」
「以前と比べますと」
「やはり国が確かでないとな」
 晴信は弟に強い声で応えた。 
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