八条学園騒動記
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第五百五話 水族館と動物園その十一
「好きな時に移動出来ないと」
「無理か」
「ええ、落ち着かないのよ」
「移動したら落ち着くんだな」
「私はね」
「根っからの遊牧民ってことか」
「だから今もゲル暮らしで」
「街を移っていってるか」
「そうしてるの、これが落ち着くのよ」
ナンにとってはそうだというのだ。
「本当にね」
「モンゴルの遊牧民はそうか」
「ええ、ただね」
「ただ。何だ」
「昔ながらの暮らしをしていても」
遊牧民のそれをしていてもというのだ。
「もうオルドはないからね」
「後宮はないか」
「男の人でもね」
「チンギス=ハーンも持っていたな」
「当然としてね、昔のモンゴルで偉い人は」
それこそハーンになる様な者はだ。
「奥さんを大勢持ってね」
「それは多くの国でそうだったな」
「そう、賑やかだったけれど」
「今のモンゴルにはないか」
「一夫一妻よ」
このことが法律でも定められているのだ。
「絶対にね」
「そこは違うな、やっぱり」
「ええ、そこはわかっていてね」
「何でも昔ながらじゃないか」
「オルドについてもね。あとね」
ナンはさらに話した。
「考えてみれば私草原の中でパソコンや移動式太陽電池も使ったし」
「ソーラーパネルだな」
「行商人の人と売り買いもしていたし」
一家単位でそうしていた、他には通販で空から送ってもらったりもする。
「そうなると文明の中にいるわね」
「そうだな、俺の言った通り」
「そうなっていたわ」
こうダンに話した、そして放課後は水族館に行ってイッカククジラを二人で観ることをまた約束するのだった。
水族館と動物園 完
2018・12・24
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