夢幻水滸伝
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第八十五話 侠気の者達その十一
「美味しいよ」
「そうだろ、おいらの言った通りだろ」
「お酢とお砂糖の匂いでわかって」
「それでな」
まさにというのだ。
「おいらも入ったんだよ」
「成程ね」
「それでな」
「それで?」
「今日はどれだけ食うか」
この店の寿司をというのだ。
「一体な」
「ううん、吉君よく食べるしね」
「特に蕎麦と寿司はな」
この二つはというのだ。
「本当にな」
「よく食べるわね」
「そうだろ、だからな」
「今もだね」
「何貫食うかだな」
「六十は食べるよね」
「そうだな、おいらいつも寿司はそれだけ食うよな」
幸田は今はこはだを食べつつ麻友に答えた。
「それじゃあな」
「六十貫食べることを」
「目指すか」
「味も楽しみながらね」
「そうするか」
寿司を持つ手を休めず食べ続けてだ、幸田は麻友に答えた。そうして実際には七十貫食べてだった。
店を後にした、そうして一緒にいた麻友に言った。麻友が食べた寿司の量は幸田の半分以下だった。
「いやあ、本当にな」
「美味しかったね」
「あんまり美味かったからな」
それでと言うのだった。
「すげえ食ったな」
「そうよね」
「ああ、それでな」
「満足したから」
「江戸城に戻るか、ただな」
「ただ?」
「城の中に帰ったら日毬ちゃんいるかもな」
自分達と同じ星の者である彼女がというのだ。
「それでお忍びで出たことをな」
「怒って来るかも?」
「ああ、日毬ちゃんそうしたことには厳しいからな」
だからだというのだ。
「城主、一つの勢力の棟梁たるものな」
「お忍びで出ないで」
「堂々と出てな」
そうしてというのだ。
「店にも行くべきだってな」
「あの人なら言うね」
麻友も言われて頷いた。
「実際に」
「そうだろ、日毬ちゃんは武士だからな」
「それも生粋のね」
「それでな」
それが為にというのだ。
「城を出るにはな」
「堂々とだね」
「そう言うからな、しかしな」
それでと言うのだった。
「ここはな」
「隠れてだね」
「それで何もなかった様にな」
そうした風を装ってというのだ。
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