八条学園騒動記
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第五百四話 露出とファンタジーその八
「それでね」
「ずっとお母さんを看病してて」
「確か結核だったかな」
「結核だったの」
「癌だったかな」
ジョルジュの記憶はこの辺りは曖昧だった。
「作者さん自身死ぬ病気だったかな」
「ううん、厄介ね」
「それでお母さんが死ぬ直前にね」
「自殺したのね」
「そうらしいよ」
「悲しい結末ね」
「コナンは強いけれど」
そして逞しい、野生や野蛮と言っていいその強さでどういった困難も乗り越えてみせるのが魅力だ。
「作者さんはそんなコナンにね」
「自分の理想を見ていたかしら」
「それで書いたのかもね」
「ううん、そうだったのね」
「まあとにかくね」
「コナンの作者さんは自殺してるのね」
「三十歳かそれ位でね」
その若さでとだ、ジョルジュは残念そうに話した。
「ああした露出を確立させた人だけれど」
「露出のことはいいとして」
むしろジュリアにとっては嫌なことだ、表情にもそれが出ていた。
「それでもね」
「長生きしてね」
「書いて欲しかったわね」
「それはね」
「ジョルジュも思うわね」
「今の作家さん百歳でも書く人いるよ」
この時代ではわりかし普通である。
「それが僅か三十歳とは」
「残念よね」
「本当にね」
「そうだよ、看病疲れでもね」
「死ぬべきじゃないね」
「自殺はよくないわ、死にそうな病気でも」
例えそれに罹っていてもというのだ。
「必死にね」
「生きるべきだっていうんだね」
「そうよ、諦めないでね」
「それが大事だね」
「あたしの理想はね」
「死にそうになっても」
「死ぬその瞬間までね」
まさにその時までというのだ。
「必死に生きる」
「それがいいんだね」
「人間死ぬわ」
絶対にとだ、ジュリアは言い切った。
「そうなるわ、何時かはね」
「そしてその何時かまで」
「絶対にね」
「生きるべきよ」
死ぬその瞬間までというのだ。
「何があろうとも」
「それが人間だね」
「ええ、人はね」
「必死に生きる」
「最後の最後まで」
「そうあるべきなんだね、まあ僕もね」
ジョルジュ自身も言った。
「それはね」
「同じ考えよね」
「自殺は好きじゃないよ」
「そうよね」
「だってそれってどれだけ悲しいか」
自殺、それはというのだ。
「自分を殺すとかね」
「だからなのね」
「自殺って大抵凄く辛くて悲しくて」
「その中でなるから」
「そう思うとね」
「ジョルジュとしては」
「もうね」
それこそというのだ。
「すべきじゃないよ」
「このことは」
まさにと言うのだった、ジュリアも。
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