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戦国異伝供書

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第三十二話 青から赤と黒へその十

「高みに至られます」
「そうなりますか」
「はい、必ず」
「ううむ、そう言って頂けるとは」
「源次郎、お主は大名としては三万石が精々じゃ」
 信玄も幸村に述べた。
「それ位がな、しかし侍としてはな」
「その器は、ですか」
「器と言うか高みに昇れることはな」 
 それはというのだ。
「果てしない、文武共じゃ」
「何処までもですか」
「昇っていける、本朝でこれまでになくこれ以後もない」
「そこまでの侍にですか」
「なれる、いや」
 まさにとだ、信玄はさらに言った。
「必ずじゃ」
「なりますか」
「そうじゃ、だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「これからも励め、さすればじゃ」
「天下一の侍にですか」
「目指せ、そしてじゃ」
「なりますか」
「そうなるのじゃ」 
 これが信玄の幸村への言葉だった。
「よいな」
「わかり申した」
「その様にな」
「しかし。真田殿は素晴らしきご子息を持たれてますな」
 明智はここで幸村を見て真田昌幸に言った。
「実に」
「そう言って頂けますか」
「はい、源三郎殿もですし」
「二人も優れた子がいて」
「果報者ですな」
「そう言われますと」
 その二人の子達を見てだ、昌幸も答えた。
「それがしも」
「そう思われますか」
「はい、家督は源三郎に継がせますが」
「源次郎殿にはですな」
「この者は大名になっていますが」
 一万石の禄を貰っている、だがなのだ。
「それよりもです」
「文武にですな」
「励んでもらい」
 そしてというのだ。
「この者が目指すなら」
「天下一の侍にですな」
「なってもらいますか」
「それがし天下一でなくとも」
 それでもとだ、幸村はまた言った。
「文武に励むことは好きです」
「ならばですな」
「これからも学問と鍛錬、修行を続け」
「そうしてですな」
「己を高めていきまする、一人ではありませぬし」
 ここでこうも言った幸村だった。
「十勇士達がいます」
「あの者達ですか」
 明智は十勇士達のことも聞いて述べた。
「一騎当千の忍の者達ですな」
「そして拙者にとって掛け替えのない者達です」
「臣ですな」
「そして友であり義兄弟でもあります」
「そこまで絆が強いですか」
「死ぬ時も生きる時も共にいるとです」
 まさにというのだ。
「誓っていますので」
「その十勇士達と共に」
「それがしは己を高めていきます」
「そう思われていますか」
「それがしもその真田殿を見て」
 兼続も言ってきた。 
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