麗しのヴァンパイア
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第百十八話
第百十八話 作者の義務
博士は自分と同じくコーヒーとマカロンを楽しみながら自分の話を聞いている小田切君にさらに話した。
「わしが開発した兵器を必ず完成させるのと同じじゃ」
「小説もですね」
「筆を持って文字を書きはじめるとな」
「ネットだとキーボードを叩いてですね」
「書きはじめたならな」
その作品をというのだ。
「必ずじゃよ」
「完結させて」
「命を与えねばならんのじゃ」
このことは絶対だというのだ。
「何度も言うが作者の義務じゃ」
「じゃあほったらかしで未完にするのは」
「よくない、読者がどう思う」
博士はこうも指摘した。
「一体な」
「確かに。読んでる人にとっても」
「困ったことじゃな」
「はい、本当に」
「読者のことも考えてじゃ」
そのうえでちいうのだ。
「最後の最後まで書いてじゃ」
「完結させることは義務ですね」
「例えどんな形でもな。人気がなくとも飽きてもな」
そうした作品でもというのだ。
「やはりじゃ」
「完結させてそうして」
「命を与えねばならん」
絶対にというのだ。
「そこはよいな」
「僕が書いてもですね」
「うむ、励むことじゃ」
作品を完結させ命を与えることにというのだ。
「絶対にな」
「そうしないと駄目ですね」
「小田切君も頼むぞ」
そのことはというのだ。
「まことにな」
「努力します」
小田切君もこう博士に答えた。
「そのことは」
「ではな。しかしまことにじゃ」
今度は苦い顔で言う博士だった。
「青い花は誰か完結させてくれぬか」
「ドイツで誰か書いてませんかね」
「金色夜叉はまだいいのじゃ」
尾崎紅葉自身は簡潔させられなかった、だが後世に紅葉の志を受け継ぐ形でこの作品を完結させた作家が出てだ。
「全く、別の作家でもな」
「作品を完結させるべきですね」
「青い花もな」
またこの作品を話に出す博士だった、博士の文学に向けている気持ちは少なくとも真剣なものだった。
第百十八話 完
2018・12・26
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