戦国異伝供書
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第三十二話 青から赤と黒へその四
「それで今もじゃ」
「朝等はですな」
「そうしたものを口にしておる」
「今も」
「そしてそれがな」
「最高の美味ですな」
「朝に美味いものを食うとな」
それでと言うのだった。
「やはり違う」
「元気が出ますな」
「だからわしはな」
「朝にですな」
「麦飯等を食うておる」
母やねねが漬けた漬けものをというのだ。
「今もな」
「よいことですな」
「それで小竹よ」
今度は羽柴から弟に話した。
「お主もじゃ」
「子をですな」
「もうけよ」
「わかっていますが」
それでもとだ、秀長は兄に難しい顔で答えた。
「どうにも」
「これまでのわしの様にか」
「出来ませぬ」
「ううむ、お主もな」
「子にはですな」
「苦労しておるのう」
このことを羽柴も言った。
「羽柴家の血か」
「やはり子がおらぬと」
「うむ、さもないと一門にはならぬからな」
「欲しいですな」
「折角大名になってもな」
それでもというのだ。
「誰も子がおらぬのでは」
「やがてなくなりますな」
「一代でな、だからわしもじゃ」
羽柴もというのだ。
「わしもほっとしておる、そしてじゃ」
「それがしもまた」
「子がおらぬとな」
「ですな、では」
「そういうことでな」
「ううむ、そういえば徳川殿は」
幸村は今度は家康を見て言った。
「お子は」
「はい、有り難いことに」
「多くおられますな」
「竹千代もおり」
嫡男の信康をはじめとしてというのだ。
「多くいてです」
「恵まれていますな」
「有り難いことに」
「それは何よりですな」
「それがしも嬉しく思っております」
子沢山であることはとだ、家康も述べた。
「そして奥ともです」
「仲はですか」
「よいです。一時離れていましたが」
信長に言われてそうしていた時のことも話した。
「今は駿府においてです」
「お二人で、ですな」
「暮らしています。そしてこの世を去るまで駿府にです」
「おられたいですか」
「駿府が一番治めやすく」
領国である駿河、遠江、三河の三国をというのだ。
「しかもです」
「よい土地ですな」
「これ以上はないまでに。ですから」
「駿府にですか」
「終生いたいとです」
考えているというのだ。
「その様に」
「左様ですか、それがしも駿府に行きましたが」
「よい場所ですな」
「まことに。海の幸も美味く」
「上田では食せぬからのう」
幸村の兄である信之も言ってきた。
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