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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第十四話



「――……あれ…あれって……?」


――クラトス師匠との朝の鍛錬を終わらせ、甲板からホールに入ると、何やら神妙な面持ちでメリア、アンジュ、メルディ、ハロルド、リタといったメンバーが揃っていた。


「――…どうやら、ある程度の解析が終わったようだな」


「そのとーり。どうやら、光気丹術は憶測通り、ソウルアルケミーの一端だったみたいよ」


隣に居たクラトス師匠の言葉の後、ハロルドが此方に気付いたのかそう言いながら此方に近付いてきた。
ソウルアルケミー……確かリタが研究してた魔術の曙…だっけ?





「えっと……それで……?」


「一応調べて分かった事は、生物全てに『ドクメント』があるって事ね」


「…『ドクメント』……?」


「そね、まぁ直接見たほうが早いわね」


知らない単語に思わず首を傾げるとハロルドはそう言ってリタ達の元へと歩いていき、僕とクラトス師匠もそれについて行く。
そして少しして、リタがメルディに手を伸ばすと――




「――……ほぅ」


「――…これは…!?」


「………輪っか…出た…」


メリアが言ったとおり、突如、奇妙な音と同時に、メルディの体の周りに数個程の白色の光の輪が現れた。





「――これが、ドクメント。これの場合はメルディの情報、あるいは設計書みたいなものと思って。物質はまず、このドクメントというエネルギー体ありきなの。自分の設計書を持って、皆生まれてくる。これは生命の営みでもあるの」


「……こんな輪にそれ程……すごいな」


リタの説明を聞きながら思わずそんな言葉が漏れた。だって確かに大きいけど、こんな細い輪に人の情報が詰まっているなんて想像もつかない。


「驚くのはまだこれからよ。これをさらに細かく見ると……」

そう言って、リタは何かを呟くと、先程現れた輪の周りにもう一つ大きめな白い輪が現れた。


「これは潜在能力とか、病気になりうる要素とか、設計書のさらに細かい所ね。ドクメントと物質体は互いにフィードバックしあってるの。治癒術ってのは、実はここに干渉して傷や疲労を治したりするの」


「いわゆる『呪い』って奴も、実はこのドクメントに干渉して相手にダメージを刷り込むわけ」


リタの説明に続け、ハロルドがそう続ける。ドクメント、かぁ……本当に凄いな……。


「このソウルアルケミーはドクメントをいじったり、作り出したりする技術。ミブナの里に伝わる人工精霊もこれの応用よ」

「ドクメントをいじるって……大丈夫なの?」


「ドクメントの中の、ヒトをヒトたらしめている設計をいじる事が出来るんだもの。それは…ヒトの存在や形を変えてしまう事も出来るかもしれないわね」

それって色々ヤバいんじゃ……って……つまりそれって……。


「成る程な。つまり、今起きている生物変化は、この仕組みで起きているかもしれない、という事か」


「現段階じゃ正解って事かしら。じゃあ、ドクメントを閉じるわね」


クラトス師匠の言葉にリタが頷いてそう言った後、メルディの周りに出ていたドクメントはゆっくりと消えていった。






「――う~……メルディ、何か、クラクラするよ~」


「……大丈夫……?」


ドクメントが消えたと同時にフラつくメルディをメリアが支える。
それを見たリタは苦い表情を浮かべた。


「ごめん。無理をさせてしまったわね。本来、不可視のものを、今は無理矢理可視状態にしてるから、被験者には負担がかかってしまうのよ」


「細かいドクメントの展開も危険ね。本当は細かいトコまで解析させてもらいたいけど」


そう説明していくリタとハロルド。そうなんだ……それじゃ人工精霊は…?


「それじゃ…人工精霊はどうやって出来てるの…?」


「人工精霊の場合は、人工的にドクメントを作り出すところから始まるわ。ドクメントは、精妙な非物質エネルギー。術者の念、自然界の気なんかを掛け合わせてドクメントを作るの。んで、その人工ドクメントエネルギーの振動数を、濃密な状態へ落とすと実体化するってワケ。
あ、ほら。聖者が何もない所から、食べ物や衣類を出して人々に与えたって話とかあるでしょ?あれは、この技術の為と言われてるわ。マナ、自然界の気、術者の意識を持って非物質状態でドクメントを構成して。そのドクメントの振動数を落としてやると物質になっていくのよ」



ハロルドの長い説明に頭がこんがらがったいく気がした。ただ分かったことと言えば……それってどんだけ凄い事だよ。


「でも……実質そんな事って…」


「まあ、術者の精神力や技量によってまちまちよ。そこまでの力を持つ様な精神力の持ち主は滅多にいないと思うわ。この技術は、そうそう簡単に使えるもんじゃないわね」




「……だよね。そんな事出来る人がいればそれこそ大騒ぎだし…だからこそしいなの人工精霊も暴走したんだろうね」


シリアスな空気の中、不意に『どうせアタシなんか……』とか聞こえた気がした。







――――――――――――



「――……リタ、ハロルド…ちょっとお願いがあるんだけど」


ホールに集まっていた面々が解散した後、僕はリタとハロルドについて研究室に入り、二人の前でそう口を開いた。


「――何よ急に改まって…面倒事なら勘弁よ」


「それで、なになに~お願いって?新しい薬の実験台になってくれるなら喜んで聞いてあげるけど♪」

リタが面倒そうに、ハロルドが楽しげな笑みを浮かべながらそう言ってきたが、僕は真剣な表情で二人を見る。
僕のお願い……それは先程のドクメントの説明を受けて…自分自身に気になった事…。



「僕のドクメントを……展開して欲しいんだ」


「……アンタ、さっきの話聞いてた?どうせ、アンタの記憶の事についてだろうけど…これは、調べる対象に相当な負担が掛かるのよ?それこそ記憶なんて事になったらどんだけ深く調べるか……――」


「ううん。別にそこまで調べなくていい。ただ……展開してくれればいいんだ」



「……どういうこと…?」

僕の言葉にリタが先程までの面倒そうな表情から一気に表情が変わりそう聞いてくる。
それもそうか…いきなり現記憶喪失設定の僕がそんな事いいだしたらなぁ…。
でも………。


「……理由は上手く言えない。だけど…お願い。少しの間でいいから、展開してください」


「……アンタねぇ…」


「いいんじゃない?展開してあげれば」


僕の言葉に、どこか怒ったように見えるリタが言いかけた時、ハロルドがそう口を開いた。



「調べられる対象がどうなるか本人も知ってのその言葉だし。それに、衛司の場合はこうなったらだーいぶ諦めないわよ」


「……分かったわよ」



ハロルドのその言葉に、リタは一度深めな溜め息を吐くとそう言って僕の前に立った。
…良かった……後でハロルドに感謝しとこう。


「……先に言っとくけど、アンタも知っての通り、ドクメントを展開される対象はそれなりに疲労するから、辛くなったり、気分が悪くなったら直ぐに言うこと。分かったわね?」



「うん…。宜しくお願いします……」


リタの言葉に僕は頷いてそう言った後、ゆっくりと目を閉じる。自分なりの意識集中である。
因みに現在、研究室には僕とハロルドとリタしかいない。
もしも僕の考え通りなら……この事実を知るのは出来る限り少数がいいからだ。

そして目を閉じて数秒後、自分の周りに奇妙な音が聞こえた気がした。多分、ドクメントが展開されたんだろう。
そして――



「――…嘘……何よ、これ…」


「――ふぅん……成る程ねぇ…」


少しして聞こえ始めた、驚いた様子の声と、意味深に調べるような声。
そして、僕はゆっくりと目を開けると……――


「……やっぱり、か…」


僕の周りに展開されたドクメント。それは先程、メルディに展開された白く、綺麗な輪ではなく――今にも崩れそうに脆く、やや灰色に近い物であった……。






 
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