八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百十一話 紅葉が見えてその十三
「一度は別れる様に言われた恋人のお父さんにも認めてもらって」
「それでなのね」
「幸せに死ねたから」
「蝶々さんよりいい感じね」
「蝶々夫人の後は暗い影があるから」
ピンカートン中尉の一家にだ、それが及ばないとはとても思えない。子孫の人達には幸せになって欲しいにしても。
「けれど椿姫は」
「ヒロインは亡くなっても」
「愛が成就しているから」
「いいのね」
「私はそう思うわ」
千歳さんはイタワッチさんに真面目な顔で話した。
「そうね」
「そうよね、ヴィオレッタは死んでも」
「それでもね」
「愛は成就して」
「それが残るのね」
「そう、幸せなものとして」
恋人の青年アルフレードの心にだ。
「だからいい結末よ」
「死ぬからって悲しいとは限らないのね」
「ええ、椿姫は」
ただアレフレードのお父さんは後悔していた、息子と別れてくれとヴィオレッタに直接言ってしまったことを。それがアルフレードと彼の妹を世間から守る為に父親つまり世間の代表とっしてしなければならなかったことにしても。
「むしろね」
「ヒロインは死んでも」
「幸せなのよ」
「ハッピーエンドなのね」
「私はそう思うわ」
「文学的ね、けれど」
イタワッチさんも考える顔になって述べた。
「いいわね」
「そう思えるのね」
「私はね、じゃあね」
「それじゃあ」
「椿姫、観るわ」
「そうするのね」
「絶対にね」
「私もそうするから」
千歳さんは是非にと言うイタワッチさんに微笑んで応えた。
「それじゃあね」
「一緒に観ようね」
「そうしましょう」
二人でそんな話をしているともう十二時を回った、それで僕達はもう寝ようというお話を僕がしてだった。
この日も寝た、そうして秋の夜の中ゆっくりと休んだ。
第二百十一話 完
2018・11・8
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