戦国異伝供書
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第三十一話 九州攻め前その六
「今のわしがある、だからな」
「お母上にはですな」
「殿はこれまで孝行を尽くされていますが」
「この度もじゃ」
今もというのだ。
「茶会を催した時にな」
「お茶を楽しんで頂き」
「茶会についてもですな」
「楽しんで頂く、茶はわしが煎れる」
「ですな、その茶は」
「殿ご自身がですな」
「煎れてじゃ」
そのうえでというのだ。
「楽しんで頂く」
「そして菓子もですな」
「お出ししますな」
「そうじゃ、そちらも楽しんで頂くぞ」
「わかり申した」
「そのこともまた」
二人は自分達の主の言葉に応えた。
「そしてそのうえで」
「出陣ですな」
「そうする、それでじゃが」
明智は二人にあらためて言った。
「島津家の勢いは凄い」
「大友家は風前の灯です」
「このままでは攻め滅ぼされてしまいまする」
二人も九州の情勢について述べた。
「立花殿と高橋殿が頑張っておられますが」
「それでも劣勢は否めません」
「このままでは押し潰されます」
「そしてその次は龍造寺家でしょう」
「そうなるな、若し岩屋城を攻め落とされると」
明智はここでこの城を話に出した。
「大友家の滅亡は時間の問題となる」
「岩屋城といいますと」
この城について斎藤も述べた。
「今や大友家の要地ですが」
「それでもな」
「はい、小さな城だとか」
「そうじゃ、兵は千人も入れぬという」
「その様な小さな城では」
「島津家の大軍は防げぬ。高橋殿が入られているが」
高橋紹運だ、立花道雪と並ぶ大友家の名将であり忠義の心も彼と並んで強い人物だ。
「高橋殿でもな」
「抑えきれませぬな」
今度は秀満が言ってきた。
「島津家は五万です」
「五万の薩摩隼人に攻められるとな」
「どうにもなりませぬな」
「そうじゃ、だからじゃ」
それ故にというのだ。
「このままだとな」
「あの城は攻め落とされ」
「そのうえで」
「一気にじゃ」
まさにというのだ。
「先程も言った通りな」
「大友家は滅ぼされますな」
「そうなりますな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「如何に立花殿、高橋殿が頑張ろうとも。それにじゃ」
「お二人のご子息ですな」
斎藤が応えた。
「あの方もおられますが」
「それでもな」
「無理がありますか」
「そうじゃ、相手が悪い」
島津家だからだというのだ。
「ここで殿が出陣を言われたことはな」
「よいことですな」
「若し遅れていれば」
その時はというと。
「大友家は滅ぼされてな」
「そしてですな」
「我等は九州に入るのに苦労しておった」
博多等港を抑えられてだ、こうなってしまうと本州から九州には船で行くしかないがそれが難しくなるのだ。
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