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戦国異伝供書

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第三十話 九州攻めに向けてその十

「あってはなりませぬ」
「では堺についてもな」
「そうした人買いは」
「堺の奉行所にも行っておく」
 そこにもというのだ。
「見付ければな」
「その時はですな」
「容赦は無用とな」
 それも一切、という口調だった。
「言っておく」
「事実なら死罪ですか」
「それも言った通りにな」
「火炙りや鋸引きですか」
「そうさせる」
 死罪の中でも最も厳しいものに処するというのだ。
「必ずな」
「そしてそのことは」
「堺だけでなくな」
「天下の全てで」
「そして南蛮と商いをしている街はな」
 特にと言うのだった。
「それぞれ奉行所を置くが」
「神戸や横浜にも」
「奉行所には強く言っておく」
「そして人買いを許さぬ」
「民達を外で奴婢にはさせぬ」
「そして中でも」
「そうじゃ」
 例え何があろうともというのだ。
「奴婢にはさせぬ、農民や町民としてな」
「生きてもらいまするか」
「その様にする、しかしな」
「はい、本朝ではどの様に腐った僧でも」
「そこまではせぬ」
 信長は利休に怪訝な顔で述べた。
「民を奴婢にするなぞな」
「寺社の荘園の民達も普通に暮らしておりました」
「そうであったな」
「はい、しかし南蛮では」
「伴天連の僧達がじゃ」
 まさにというのだ。
「率先して奴婢を使ってじゃ」
「働かせていますな」
「わしは腐った坊主達は大嫌いじゃ」
 だからこそ厳しく対している、信長はよく学び徳のある僧は認めるが堕落した僧達は忌み嫌っているのだ。
「しかしな」
「南蛮の場合は」
「本朝のそうした坊主達以上にな」
「腐っていますな」
「しかも他の教えを認めずな」
「信じている者を徹底的に殺すとか」
「その様なこと延暦寺でもしなかった」
 かつて信長が衝突し腐っている者が多かったこの寺でもというのだ。
「あの寺でもじゃ」
「そうしたことはですな」
「考えもしなかった」
 その時点でなかったというのだ。
「到底な」
「殿、十字軍はご存知ですか」
 そっとだ、利休は信長に問うた。
「南蛮のことですが」
「何じゃ、それは」
「はい、実はあちらの文献を本朝の言葉に訳し」
「その中にあった言葉か」
「そうなのですが」
「十字というとあれか」
 信長はまずはこの言葉から考えた。
「漢字の十、島津家の家紋にもあるが」
「それは本朝のことですな」
「うむ、これが南蛮となるとな」
「はい、あちらのお守りになりますな」
「ロザリオというな」
「それを掲げるということです」
「そうした軍勢か」
 ここで十字軍の軍という言葉にも述べた。 
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