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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と回想、I・アイランド編
  NO.096 回想《1》 I・アイランドへ

 
前書き
更新します。 

 



出久は自室でカーテンも締め切って光が入らないようにして、暗い部屋の中でベッドに横になりながら思考に耽っていた。
こんな自堕落に時間を過ごしていても、何の解決にもならない……。
オールマイトがこれからは自身の育成に専念すると言ってくれたのだから、自分もまた頑張らないといけない。
そうは考えていても、まだ心がそれに追いついていないのが現状であった。
まだ、自身がオールマイトの事を間接的にとはいえ終わらせた事についての責任を重く受け止めていて、立ち上がる勇気がまだ湧いてきていないのだ。

「(ダメだ……こんなことじゃ、ダメなのに……こんな時に弱気な僕が何度も顔を出してくる……)」

影の自身が何度も『お前のせいだ』『お前のせいでオールマイトが終わったんだ』と囁いてくるようで、ただでさえ落ち込んでいる心にさらにダメージを与えてくる。
そう何度も自身に問いかけていても突破口は見つからない。

「「「にゃー……」」」

出久の部屋で飼っている数匹の猫たちも元気のない声で鳴く。
ちなみに三匹いるのだが、それぞれ『ベレト』『シャミ』『ケット』と出久に名付けられている。
言わずもがな、出久のヒーロー名を決める時にみんなから挙がった候補の中から選んで付けてある。
出久はすり寄ってくる三匹の頭を力なく撫でながらも、どうすれば……と困り果てていた時であった。



―――ポンッ♪



強化合宿の時にヴィラン連合・開闢行動隊に誘拐された際に無くしていたものだと思っていた携帯を相澤が運よく拾っていたらしく、届けてくれたのだ。
ちなみに、これを拾った際の相澤の心境は計り知れないものだったとここに記載しておく。
その携帯のメール着信音が鳴り響いて、落ち込む気持ちで力が入らないながらも画面を見る出久。
そこにはこう書かれていた。




『デクちゃん、久しぶり。メリッサです。
ニュースを見ましたが、とてもつらい思いをしたんだね……。
本当ならすぐにでもデクちゃんのもとへと駆け付けたいんだけど、なかなかI・アイランドから外に出るのは難しいからこうしてメールを送ることにしました。
きっと、マイトおじさまの件でデクちゃんはひどく落ち込んでいると思うの。
だから気休めにしかならないけど、私もデクちゃんが早く立ち直れるように祈っています。
そして、きっとデクちゃんが将来苦労すると思うから、今からデクちゃん向けのサポートアイテムを開発できるように私ももっといろいろと勉強をするね。
パパがマイトおじさまのためにいろいろ作ったように、私もデクちゃんのためにもっと将来は出来る事を増やせるように頑張る。
だから、頑張って! デクちゃん! いえ……ヒーロー『出雲』!!』




「メリッサ、さん……」

そう書かれていたメール内容に出久は自然と涙を流す。
きっと、今でも見えないところでは自身の事を中傷している人はたくさんいると思う。
それが怖くてネットを開いて検索することもできないでいる。
しかし、こうして応援している人も少なからずいてくれることに感謝の気持ちを感じていた。
今すぐにでも返信をしたいけど、今はどうしてか嬉しい気持ちが溢れてきていて言葉に詰まるかもしれないから少ししてから返事を返そうと出久は思い、少しの気持ちの和らぐ感じを味わいながらも、出久はまだつい一か月前のメリッサとの出会った場所である『I・アイランド』での出来事を思い出していた……。











…………時は遡る事、夏休みがまだ始まったばかりの時である。
出久はオールマイトに誘われて、専用ジェット機に乗ってサポートアイテムの本場である『I・アイランド』へと向かっていた。
そして海の上に見えてきた建造物を見て、隣の席で寝ているオールマイトを起こすように声を上げる。

「オールマイト! 見てください!」
「んあっ……? どうしたんだい、緑谷ガール?」
「見えてきましたよ! I・アイランド!!」

それで二人はジェット機の小さな窓から覗ける景色を見て、出久はこんな場所に来れる事に至福感を味わっていて、オールマイトは久しぶりに顔を見る親友に対して想いを馳せていた。

「一万人以上の科学者が住んでいて、学術人口移動都市、通称“I・アイランド”に夏休み早々に来れるなんて夢見たいです!」

それでもう喜びが表に出てきているのか尻尾はピンと伸びきっていて、猫耳なんて逆立ってしまっている。

「緑谷ガール、尻尾と耳がすごい事になっているから少し落ち着こうか。……しかし、こうして喜んでもらえると招待した甲斐があるね」

だが、そこで出久は少し俯いたのを見てオールマイトは少し怪訝な顔になるが、

「ですが、本当に僕なんかが着いてきてもよかったんですか……?」
「そういう事か。大丈夫だよ。招待状には同伴者も連れてきていいと書かれていたしね」
「ですが、それって家族とかが普通じゃないんですか……?」

オールマイトの同伴者としてはまだ無名で、しかも学生である自分が着いてきてしまってもよいものなのかと不安になる出久。
オールマイトはそんな不安を吹き飛ばすかのようにある事を言い放った。

「私と緑谷ガールの間には、血よりも濃いもので結ばれているだろう? ワン・フォー・オールという絆で……」
「ッ! はい!!」

それで出久の不安はもうすでに消え去っていた。
頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んでいる。
オールマイトはそんな出久の笑みに見惚れそうになっていたが、一度咳払いをした後に、

「それより、緑谷ガールはこれから気を付けた方がいい」
「はえ……? なにに関してですか?」
「まだそんなに自覚がないようだけど、君は雄英体育祭や保須事件、そしてインゲニウムの治療などと、知名度はまだ少ないが、それでも少なからず緑谷ガールの名は世の中に知られてきているからね。
そして私が同伴だから決してないとは思うが、君の個性に目を付けてくる研究者達も複数いてもなんら不思議じゃないからね。
ただでさえオール・フォー・ワンという特大の例とは別にして、個性を複数持っているという数少ない実証例でもあるんだから、気を付けて行動をするんだよ? それと知らない人に声を掛けられても着いて行っちゃだめだからね? 君、まだまだ女子として色々と危ういし……」
「は、はい……気を付けて行動します」
「うん。いい返事で大変よろしい。くれぐれも頼むね」

そんな約束が交わされている中で、

『えー、当機はまもなくI・アイランドへの着陸態勢に入ります』

というアナウンスが聞こえて来たために、オールマイトは立ち上がって自分達以外に人はいない事を確認していた。

「オールマイト? どうしたんですか?」
「いやね。これからはなかなかにしんどくなるなとね。なにせ向こうに着いたら……私はマッスルフォームで居続けないといけないからね!」

そう言いながらもオールマイトの体から煙が上がっていき、トゥルーフォームから次第にマッスルフォームである筋骨隆々の伊達男の姿へと変化していく。
そして来ていた服をすぐに脱ぎ捨てるとそこにはいつものオールマイトのヒーローコスである『ゴールデンエイジ』の姿になった。


「さて、それじゃ緑谷ガールもヒーローコスに着替えたまえ。学校に申請して持ってきているんだろう?」
「はい!」

それで出久は脱ぎ捨てるようにすぐに着替えてしまったオールマイトとは違い、女子更衣室へといそいそと入っていって発目の手で仕上がった『コスチュームγ』のヒーローコスチュームへと着替えたのであった。




そして、ここで出久は新たな友達となる少女と出会う事になる。


 
 

 
後書き
はい。というわけで【猫娘と回想・I・アイランド編】のスタートです。
前半と後半で出久のギャップがすごいですね。 
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