八条学園騒動記
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第五百二話 撮影の後でその六
「ほら、コッドケース」
「ああ、股間のね」
「あれは最悪よ」
「何で前を強調するのか」
「あのファッションは変態でしょ」
こうまで言うジュリアだった。
「幾ら何でも」
「変態なんだ」
「変態でしょ」
まさにと言うのだった。
「本当にね」
「あれは僕も嫌だけれど」
「変態とまではなのね」
「思わないよ、変だと思ってもね」
変と変態は違うというのだ、言葉にある意味は一文字加えられるかそうでないかで随分違う場合もある。
「変態とまではね」
「思わないのね」
「絶対に着たくないけれどね」
「そこはそれぞれね、まああの時代の欧州はね」
「タイツもだね」
「嫌よ、アラビアには生まれたいけれど」
「アラビアンナイト?」
アラビアと聞いてだ、ジョルジュはすぐにこの物語の名前を出した。
「あのお話?」
「シンドバットみたいにね」
「大冒険がしたいんだ」
「それかアラジンかアリババか」
「ああなりたいんだ」
「そう思ってるわ」
こうジョルジュに話した。
「あたしとしてはね」
「アラビアンナイトね」
「いいわよね」
「そうだね、シンドバットの冒険とかね」
「スリルがあって」
「何度も死にそうになってるけれどいいんだ」
「助かったらいいのよ」
このことは明るく言うジュリアだった。
「それでね」
「割り切ってるね」
「だってね」
それこそと言うのだった。
「それ位はね」
「もう普通なんだ」
「ファンタジーだから。そういた冒険がなくても」
「アラビアンナイトの頃のアラビアにいたいんだ」
「それかオスマン=トルコね」
このイスラムの国もというのだ。
「いいわね」
「大帝国だったね」
「物凄いお金持ちのね」
「軍隊も強くて」
「イエニチェリね」
この時代ではオムダーマン軍の艦載機の名前にも使われている。
「鉄砲持っていてね」
「強かったよね」
「大砲も多かったし」
この大砲の力でコンスタンティノープルを陥落させ長い歴史を誇っていたビザンツ帝国を滅ぼした。
「強かったわね」
「そうだったね」
「あの国にもね」
ジュリアはジョルジュに話した。
「住んでみたいわね」
「黄金時代のかな」
「ええ、スレイマン大帝の時の」
オスマン=トルコ絶頂期の頃の皇帝だ、この頃のトルコは欧州全土を合わせたよりも強大な国だった。
「あの時のイスタンプールにね」
「よさそうだよね」
「アラビアンナイトの時はバグダートでね」
「ハールーン=アル=ラシードの頃かな」
「それでね」
「スルタンみたいに暮らすんだ」
「普通の庶民でもいいわよ」
そちらもとだ、ジュリアはジョルジュに答えた。
「それはね」
「あっ、いいんだ」
「そっちも楽しそうだしね」
「そうした場所にいるだけで」
「ええ、イスラムだから異端審問とかないし」
イスラムではそうしたものはなかった、他宗教にも寛容であったことも影響していることは言うまでもない。
「残酷な拷問や処刑もね」
「イスラムはないからね」
「しかも自由だし」
当時のキリスト教と比べて遥かにだ。
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