ベル・クラネルが魔剣使いなのは間違っているだろうか
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13話
シルに案内され、ヘスティアたちがいる部屋の前へとやって来た。
「神ヘスティア様にヘファイストス様、ベルさんが来ましたよ」
シルがそんな言葉をかけると扉が壊れるのではないかと思うくらい勢いよく開かれた。
「ベルくん!大丈夫かい、心配したんだよ!?また、正体なんてバレてないだろうね!?」
「お、落ち着いて、ください。神様!」
「落ち着いていられるかい!?さあ、怪我がないか確認するから服を脱ぐんだ!」
「シルさんやヘファイストス様がいるんですからそんなことできるわけないじゃないですか!」
「大丈夫ですよ!私は気にしません!」
「気にしてください!」
そんなふざけたやり取りをヘファイストスとヴェルフは呆れながら見ていた。
「ヘスティア、あなた少し落ち着きなさい。彼を見た感じ、怪我なんてないわよ」
「うっ、それもそうだね。ベルくん、ごめん」
「いいえ、僕を心配してくれていたのは分かっていましたから」
「それでは、私はここで失礼しますね」
シルはそのまま部屋をあとにした。
「それでヴェルフは僕に何を聞きたいの?」
「ああ、そうだな。緊急事態だったから途中になっちまったんだったな」
モンスターの脱走前に話していたことの続きをすることになった。
「ベル、いや魔剣使いとしてのお前に聞きたい。俺が造る魔剣をお前たちはどう思っている?」
「…正直、とてもかな悲しい終わりかたをする武器って言うのが僕と師匠の感想だったかな。でも、魔剣たちからしたらとても羨ましい存在でもあるみたいだよ」
「羨ましい?」
ベルはただ頷く。
「そう、主のために力を使い果たしたら眠りにつくかのように壊れる。持ち主や造り手からしたら悲しいのかもしれない。でも、魔剣たちからしたら最後まで主の役に立てて終われるって言うのが羨ましいみたいだ」
「その口ぶりからすると貴方が持つ魔剣は違うみたいね」
「はい。僕が持つ魔剣たちは僕が存命の限りいえ正確には契約者が居れば壊れても契約者の魔力をもとに直ぐに治される。そして、契約者が例え死んでも次の契約者が見つかればそのものと契約するか眠りにつき現れたら覚醒する。決して終わることはない武器。それが僕の持つ魔剣です」
ベルはとても悲しい口調で話す。そしてそんな話を聞いてヴェルフもそして鍛冶の神でもあるヘファイストスでさえ言葉を失った。あまりにもそれは辛いものだからだ。けして終わることはない。地上では死ねない神々はその苦しみをよくわかるのだ。
「だから魔剣たちからしたら羨ましいんだよ」
「…そうか」
ベルの返答にヴェルフは考える。自分が打つ魔剣のことをそしてこれから自分はどうしていきたいのかを。
「ベル、俺は魔剣を造ることが嫌いだ。持ち主を残して消えていっちまう。それがどうにも悲しくて、俺が造った意味がなくなっちまったような気がしてよ」
「……」
「でも、お前の意見とお前の持つ魔剣の意見を聞いて少し…本当に少しだが魔剣を作っていこうと思えたよ」
ヴェルフの言葉にヘファイストスは静かに驚いていた。何故なら、彼は魔剣を造ることをとても嫌っていた。造った魔剣だって自分が造るようにいったたった一本だけ。それ以降造ることはなくそのためその才能を無駄にしていることからファミリアのなかでも孤立していった。そんなヴェルフが作っていきたいという言葉出た。鍛冶師として彼の主神としてとても嬉しい一言だった。
「…そうか。なら、もしまた作り出したらその最初の一振りをみてみたいかな」
「おう!誰よりも最初に見せてやるぜ!」
二人のそんな会話を主神逹は優しい表情で見ていた。
「いつの時代も友情は見ていて心が温まるね」
「そうね。だから眷属たちは大切にしないとね」
再び視線をベルとヴェルフに向けるとそこには楽しく話す二人の姿があった。
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