| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『魔術? そんなことより筋肉だ!』

作者:蜜柑ブタ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SS3 槍兵の殺(や)る気

 
前書き
ランサーの酷い扱いです。


ランサーファン、注意。 

 

 因果を逆転させる呪いの槍。
 その名は、ゲイボルク。
 死という結果を導くため、あらゆる事象をねじ曲げる魔槍だ。

 なのだが……。


「悪いな坊主! 死んで貰うぜ!」
 ゲボルクの持ち主であるランサークラスこと、クー・フーリンがその赤き槍を、衛宮士郎に突き出した。
 しかし。
「ふんっ!」

 ガキンっ!

 瞬間。上半身の服が破れるほど膨張した筋肉が、心臓めがけて突き出された槍の先端を弾いた。
「なっ!?」
「危なかった…。この鍛え抜いた大胸筋がなかったら、心臓一発だった……。」
「大胸筋、鍛えたぐらいで俺の槍を防げるかよ!!」
 たまらずツッコミを入れてしまった。
 槍を握っていた手が、ジーンッとちょっと痺れている。それだけで、あの士郎の筋肉の強度が分かる。そしてイヤでもこれが現実なのだと知らしめる。信じたくないが、現実だ。もう一度言う…現実だ。
 ゲボルクは、必ず、心臓を穿つという呪いを持つ槍だ。もう一度言う、“必ず、心臓を穿つ呪いを持つ槍”だ。
 そんな伝説のある槍を大胸筋だけで防いだのだ。
「おーい、そこにいるの遠坂だよな? これ、どういうことだ?」
「えっと…、その…。って、アーチャー!? なに、倒れてんの!?」
 慌てる凛の横では、アーチャーがうつ伏せで倒れていた。別に攻撃されて倒れたのではない。めまいを起こして自分で倒れたのだ。
「はあっ!」
「っ、フンっ!!」
 再度ランサーが槍を突き出し、士郎の心臓を狙ったが、気づいた士郎が再度気合いを入れて槍を防いだ。
「っきしょう…! なんつー硬さだ!? おまえ、英霊か?」
「なんでさ? 人間だけど?」
「嘘吐け。」
 否定する士郎を、逆にランサーが否定した。
「ホントに人間だって。なあ、遠坂。」
「アーチャー! ちょっと、起きなさいよぉ!」
「おーい…。」
「すげぇな、坊主。…例え人間だとしても、その筋肉はどうしたよ?」
「鍛えたんだ!」
「鍛え…。それだけか?」
「ああ。」
「嘘吐け。」
「本当だ。」
「………マジか?」
「マジだ。」
「フーーーーーン…、そうか…そうか。」
「なにさ?」
「それなら、俺を楽しませてくれよ!」
 ランサーが槍を構えて切っ先を士郎に向けた。
「なんだなんだ?」
「お前の筋肉と俺の槍…、勝負と行こうぜ!」
「はっ? …まあ、いいけど。でも、おまえ強いのか?」
「あったり前よ! クランの猛犬たる、このクー・フーリン! 押して参る!!」
「なっ! クー・フーリン!?」
「行くぜ、坊主!」
「うりゃ。」
 バチンッ
「んぎゃっ!!」
 槍を手に士郎に襲いかかったランサーだったが…、デコピン一発で弾き飛ばされ、何度もバウンドして倒れた。
「クー・フーリンっつたって…、こんなやせっぽちなはずないよなぁ……。自称か?」
 尻を突き出す形でうつ伏せで倒れているランサーと、アーチャーを起こそうと揺さぶっている遠坂を残し、士郎は鞄を担いで帰ったのだった。
 その頃には、膨張していた筋肉は元の大きさに戻っていた。





***





 士郎は、誰もいない家の玄関の電気を付けて、ただいまーっと言って靴を脱ぎ、家に上がった。
 そして、晩ご飯は何にしようかな~っと、暢気に独り言を呟きながら家の中を歩いていると、ふいに立ち止まった。
「! ーーふんっ!」
「チッ!!」
 背後から槍を突かれたが、背筋に力を入れて防いだ。
「おまえ!」
「背中からでもダメか…。」
「土足で上がるな!」
「ツッコミどころそこかよ!?」
 ランサーが思わずそうツッコミ返した。
「何しに来た!?」
「俺と勝負しやがれ、坊主!」
「もう勝負はついただろ!」
「リベンジだ!」
「そうか…。なら、納得するまで戦ってやる、表出ろ!」
「おう!」
 二人は、表に出た。
 そして、戦いが始まった。
 ランサーが、その機動性を生かして槍を連続で突き出す。
 それを士郎は、すべて避ける。
「おめぇ…、パワーだけじゃないのか…! すげぇな! ほんとすげぇ!」
「どういたしまして!」
「オラオラ! 避けてばっかじゃ終わらないぞ!」
「おらぁ!」
「あぶねっ!」
 突きのような蹴りが来たので、ランサーは、間一髪で避けた。
 その瞬間だった。
 カッと光が発生し、そこに一人の美しい少女が現れた。
「ーーー問おう。貴方が私のマス…。」
「ほげぇ!!」
「俺の勝ちだ。」
 発生した光で一瞬止まったランサーが、再び士郎のデコピン一発で吹っ飛びバウンドして倒れた。
「……………………えっ?」
「誰だ?」
「あの…、これは?」
「何って…、俺に挑んできたやつを撃退しただけだけど?」
 M字に足を開脚状態で倒れているランサーを指さし、士郎がそう言った。
「! サーヴァント! 下がってください。」
「いや…、もう倒したから…。それより、君は?」
「あ…、私のことはセイバーと…。」
「じゃあ、セイバー。今、サーヴァントって言ったけど、アイツのこと…。あれ?」
「逃げましたね。」
 ふと見ると、ランサーの姿が消えていた。
「ま、いっか。」
「!?」
 セイバーは、縮んでいった士郎の筋肉を見て驚いた。
「どうした?」
「あの…失礼ですが、貴方は…、何者なのですか?」
「俺? 俺は衛宮士郎。筋肉魔法の使い手だ。」
「きんにくまほう?」
「っと言っても、まだまだ修行中なんだけどな。ユーリ兄ちゃんには、まだまだ届かない。」
「はあ…。」
 セイバーは、どう反応すれば良いのか分からず困ったのだった。

 セイバーは、知らない。これから自分の身に降りかかる、筋肉という名の理不尽に……。

 
 

 
後書き
体内にある鞘が反応し、セイバーもついでに召喚。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧