戦国異伝供書
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第二十九話 安土入りその八
「一体」
「さて。それがしは朝廷のことはあまり」
蜂須賀家は元々尾張と美濃の国境にいた国人達だ、それでは都特に朝廷のことに疎くても仕方のないことだった。
だからだ、彼も信長に申し訳なさそうに話した。
「申し訳ありませぬが」
「そうか、ではな」
それではとだ、信長はあらためて述べた。
「新五郎か十兵衛にな」
「聞かれますか、若しくは細川殿に」
「あ奴は特に詳しいな」
「代々都におられましたし」
幕府に仕えてだ、細川家はそうした家でありしかも細川自身は将軍のご落胤である。
「あの御仁にも」
「聞いてな」
「そのうえで」
「あの家のことを知るか」
高田家のこともというのだ。
「そうするか」
「そうですな、やはりです」
「都、朝廷のことはな」
「その方々に」
「聞くとしよう」
「それでは」
まさにと頷いてだった。
信長はすぐに彼等から話を聞いた、するとすぐにまずは明智に言った。
「そうか、高田殿はか」
「はい、妙にです」
明智もこう答えた。
「おかしなことが多いです」
「それも家でじゃな」
「はい、高田家自体が」
こう信長に答えた。
「何しろ応仁の乱があろうともです」
「都に残ってか」
「しかも何故か屋敷も無事で」
「あの乱では都は灰燼に帰したがな」
「それがです」
そうした状況でもというのだ。
「高田殿、三位殿ですな」
「うむ、位はそうじゃな」
「あの方のお屋敷は無事で尚且つです」
「財もか」
「はい、無事で」
そうだというのだ。
「今も都に残っています」
「それは面妖じゃな」
信長は明智のその話に心からこう思った。
「あの乱で何もないとはな」
「それも今の今までです」
「都に残っておったか」
「都落ちせず」
「あの時公家の方々の多くは都落ちされていましたな」
今度は林が言ってきた。
「駿府や山口、一乗谷なぞに」
「その他の街にもな」
「左様でしたな、無論そうでない方々もおられましたが」
「しかしずっと都におるとはな」
「妖しいですな」
「そのこともな」
「しかも神事を司る家ですが」
それでもというのだ。
「どういった神事か」
「それもじゃな」
「どうも詳しくです」
「わかっておらぬか」
「宮中の噂では昔から左道に手を染めておるとか」
「左道か」
「そちらで昔からです」
高田家自体がというのだ。
「隠然たる力を持っておるとか」
「それで応仁の乱でもか」
「はい、残ったのではとです」
「言われておるか」
「屋敷についても。とかく得体の知れぬ家です」
「あの家については」
最後は細川が難しい顔で言ってきた。
「それがしも聞いておるだけですが」
「やはり左道か」
「平安いえそれこそ飛鳥の頃からです」
そこに都があった頃からだというのだ。
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