八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百五話 紅茶とコーヒーその九
「いいんだろうね」
「悪い妖怪じゃないからですね」
「うん、それならね」
「神様や仏様も何も言わないですか」
「そうかもね、そりゃエリザベート=バートリーだと」
何でもハンガリーはアジア系なので姓のバートリーを最初に持って来ることが正式というけれど日本ではこの名前で通っている。
「もうね」
「神様仏様もですね」
「入れないだろうけれどね」
「もう魔物になっていますからね」
何百人も惨殺するなんて妖怪でもそうはない、人間とは思えない所業だ。
「それなら」
「入れないだろうけれど」
「妖怪でも人に危害を加えないのなら」
「もういいんだろうね」
「器が大きいですね、神様と仏様も」
「分福茶釜もお寺のお話だしね」
この有名な童話もだ。
「だからね」
「特にですね」
「この学園でもいいんだろうね」
「そういえば生き字引みたいな妖怪の人もいますね」
「あの博士だね」
「大学の悪魔博士」
「あの人は何歳なのかな」
このことに答えられる人はこの学園にはいない、それも一人も。
「一体」
「百歳普通に超えてますよね」
「百五十歳って噂あるよ」
「百五十歳って」
「仙人とも言われているよ」
親父もそうじゃないかとか言っていた。
「魔術とか錬金術とか知ってるとか」
「仙人というか魔法使いか」
「どっちでも有り得るよ、とにかくね」
「とにかくですか」
「あの人は身体が妖怪化していてもね」
「おかしくない人ですか」
「うん、もうね」
それこそだ。
「噂が本当ならね」
「百五十歳以上とか」
「長寿の限界超えてるから。妖怪じゃなかったら」
「仙人ですか」
「それに近いよ。サン=ジェルマン伯爵かも知れないけれど」
「サン=ジェルマン伯爵って」
後輩の子はこの名前を聞いて僕にこう言ってきた。
「昔の欧州にいたっていう」
「うん、何か凄い博学でね」
「不老不死だったんですよね」
「その話があるんだ」
「本当のことですか?」
「みたいだよ、実在人物だったし」
このことは間違いない。
「それに実際生没年がはっきりしないんだ」
「そうなんですね」
「死んだっていう年は記録に残っていても」
それでもだ。
「それ以降普通に見たって人もいるしね」
「普通にですか」
「ナポレオンと会っていたって話もあるし」
ルイ十五世の頃の人なのにだ、歳月を考えるとナポレオンが権勢を持っていた時に会える筈がないのだ。
「本当に不死身だってこともね」
「有り得るんですか」
「何でもフランスから来た子が言ってたらしいんだ」
僕と同級生の留学生の子の一人がだ。
「あの肖像画によく似た人が学園の近くにいたって」
「伯爵の肖像画にですか」
「そんな話もあるしね、学園でも会ってお話した人いるかもね」
「信じられない話ですね」
「そうだね、それでこの人も不老不死だっていうし」
「あの博士も」
「不老不死になっていても不思議じゃないよ」
身体が妖怪化しているにしてもサン=ジェルマン伯爵みたいに不老不死の薬を飲んでいてもどちらにしてもだ。
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