戦国異伝供書
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第二十八話 天下の政その二
「それで麦もじゃ」」
「作らせるのですな」
「とかく色々と作らせてな」
あちこちの国でだ、このことは。
「民を食わせよ、そして菜種や綿もじゃ」
「そうしたものもですな」
「民達に作らせますか」
「そうせよ」
食物以外も作れというのだ。
「そうしたものもですか」
「作らせてじゃ」
そうしてというのだ。
「民達を豊かにさせよ」
「そうもさせますか」
「それに菜種の油や綿の服が増えれば」
そうなればというのだ。
「商いにもなる、また脂や服が多いとな」
「便利ですな」
「そうじゃ、麻の服は夏はよいが」
この季節に着るにはというのだ。
「しかし服はどうじゃ」
「寒くて適いませぬな」
「しかし綿は違うな」
「冬も暖かいですな」
「だから綿の服を増やす為にもな」
民達が冬に着て暖かく過ごせる様にというのだ。
「ここはじゃ」
「綿をですか」
「大いに作らせるのじゃ」
「そうしますか」
「左様、あと紙も筆も大いに作らせ」
このことにもだ、信長は言及した。
「より世に広めよ」
「紙や筆も」
「それで儲ける者が出れば儲けさせよ」
こちらでもというのだ。
「よいな」
「紙といいますと」
丹羽が言ってきた。
「あれは本朝以外の国にも売れますな」
「本朝の紙は質がよいと言われておるな」
「はい、ですから」
「そうしたものは売ることじゃ」
そして儲けることだというのだ。
「瀬戸物もじゃがな」
「ああしたものも売り儲ける」
「左様じゃ、して南蛮に銀があまり流れぬ様にせよ」
今度は銀の話だった。
「金もな」
「石見の銀や佐渡の金ですか」
「そうせよ、そのこともな。それとな」
「それと、といいますと」
「民達を南蛮に売る者がおるな」
信長の目が厳しくなった、そのうえでの言葉だった。
「近頃」
「そのことですが」
林が信長に剣呑な顔で申し出た。
「九州の大名達で、です」
「戦で捕まえた侍や女達を売っておるな」
「これが本朝の中ならまだよいですが」
尚織田家はそうしたことはしていない、捕らえた侍も兵も自軍に組み入れ女達には手出しをしないからだ。
「それがです」
「南蛮の者達に売ってな」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「儲けているとのことで」
「そして売られた者はな」
「本朝の外の国で奴婢になっているとか」
「民を奴婢にすることは許さぬ」
断じてとだ、信長は言い切った。
「何があろうともな」
「それでは」
「そうしたことをする者がおれば取り調べてじゃ」
「若しそれが事実ならば」
「容赦するでない、火炙りか鋸引きじゃ」
極刑の中の極刑にせよといのだ。
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