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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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たたかい

ベルはリヴェリアの膝の上で、頭を撫でられていた。

「ベル。お前のお爺様の教えは前に聞いた。だが時と場合にもよるだろう」

「…………ぁい」

「女に幻滅したか?」

「………少し」

「でも私達は大丈夫だろう?」

「はい」

「なら、大丈夫だな」

リヴェリアの手にモフっと柔らかく反発するベルの髪。

暫くそうしていると、不意に地面が揺れた。

そして響く咆哮。

くわえて…

━━━━━━━━━━━━━━アァッッ!!!

不快な叫び。

赤子の声のようで、不吉な叫び声。

「ヴァリツァイフっ…!」

ベルはリヴェリアの膝から飛び降り、急いで鞭を出す。

「クスタル!」

棒になった鞭を地面に突き刺す。

宿屋の床を伝い、地面へ広がる雷が、ベルの知覚その物となる。

「食人花っ…!」

「なんだと!?」

ベルが宿屋から飛び出し、リヴェリアが追う。

「リヴェリアさん! 後衛お願いします!」

振り返ったベルが叫ぶ。

「お前はどうする!」

「前衛に行きます!」

人混みの中での会話が終わると、二人はそれぞれの持ち場につく。

「メルニテ!」

握った鞭が片刃の大剣と化す。

ベルは大きく飛び上がると、広場で冒険者を襲う食人花目掛けて剣を振り下ろした。

「ノーテ・ルビード!」

バチチッ!と剣から紫電が迸る。

雷は光速の数分の一で魔石に達し、一撃で砕いた。

「次っ!」

ノーテ・ルビードの魔力に反応して、ベル目掛けて食人花が殺到する。

その一体一体にヴァリツァイフを突き刺しノーテ・ルビードを使う。

それと並行して、広場からの離脱も行う。

十数匹を倒した頃には、ベルは広場から300メートルほど距離を取っていた。

ベルは魔力を撒き散らしながら、食人花を屠ふってゆく。

「っ…バルグレン…!」

激しい魔力の消費で、ベルの視界が揺らぐ。

スゥ…とベルが息を吸った。

「リヴェリアさん! 僕ごと燃やしてください!」

そのメッセージを聞いたリヴェリアは、迷う事なく詠唱を始めた。

「【間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣――我が名はアールヴ】 」

リヴェリアがベルに杖を向ける。

「待てアンタ!? じぶんの子を焼く気か!?」

別の魔法使いが止めようとする前に、リヴェリアの詠唱が完了する。

「【レア・ラーヴァティン】!」

最大火力の攻撃が、ベルの周囲を薙ぎ払った。

一方ベルは向かってくる炎に対し、双刃を掲げた。

ベルへと向かった炎は双刃に吸い込まれ、人一人分の安全地帯ができる。

ベルが顔を横に向けると、オレンジの炎の中で食人花がもがき苦しんでいた。

一体、また一体と灰になる。

全ての食人花が焼き尽くされると、双刃が周囲の炎を全て飲み込んだ。

「ちょっとオーバーチャージかも…」

ベルは自分の内に渦巻く莫大な魔力に意識を向けた。

刹那。

━━━━━━━━オオオォォォッッッ!!!


雄叫びと共に、巨体が現れた。

「なんだよ……あれっ!」

ベルからかなり離れた位置に、奴はいた。

緑色の、雌型の食人花。

食人花を蛸の触手のように束ねた脚。

そこにロキファミリア幹部陣が攻撃を加える。

ベルが見ただけでも、幹部陣は有効打を与えられていなかった。

「囮が要るっ…」

ベルが得物を持ち替えた。

双剣から、長剣に。

「ヴェルニー」

ベルが風を纏い、中を蹴る。

交戦圏に侵入し、再び双剣に持ち替えたベルを、触手が襲う。

「フランロート!」

深紅と黄金の焔を纏ったベルの一撃が触手に浅い傷をつける。

深く切る必要は皆無。

中に焔を送り込めれば、燃え尽きる。

ブチブチブチィ…!

「バカなっ!?」

別の触手が、焔が回る前に切られた触手を引きちぎった。

「兎君! 本体をやらないとダメだよっ!」

「面倒なっ…!」

ベルは焔を纏ったまま触手の有効範囲から離脱する。

ォオオオアアァァァ……!!!

雌型の食人花がベルに視線を向けた。

自分を燃やしうるベルを脅威と見なしたのだ。

「こっちに来いっ…!」

ベルがバックステップで後退する。

ドシュッ! と全力の触手が一本つきだされる。

「プラムオーク!」

触手とベルの間に幾本もの火柱が上がる。

火柱を一つ通る度に、触手の外皮は焼け、ベルの下に届く頃には中程から焼け落ちていた。

フランロートを発動したまま、ベルが駆ける。

ベルが野原に雌型の食人花を誘きだす。

「【間もなく、()は放たれる。忍び寄る戦火、(まぬが)れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き」

リヴェリアの詠唱と共に、膨大な魔力を伴ったマジックサークルが現れる。

ォォォォォオオオオオオォォォォッッッ!?

雌型の食人花が振り返る。

「もう遅い!」

触手をうねらせ、雌型の食人花がリヴェリアに突進する。

触手がリヴェリアに殺到する。

雌型の食人花が勝利を確信した時。

リヴェリアがさっと飛び退いた。

霧散するマジックサークルと魔力。

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ。】」

そして、新たに紡がれる詠。

ァァァァァアアアアァァァァァッッッッ!?

雌型の食人花の遥か後方。

丘の上で一人呪文を唱えるレフィーヤ。

「【帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】」

魔力が、収束する。

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ!】」

大瀑布。

滝のように、焔の矢が降り注ぐ。

焔の中で雌型の食人花が苦しむような、悲痛な叫び声をあげる。

火の矢が止むまでの十数える程の間に、雌型の食人花の体は燃え上がり、所々を黒く焦がしていた。

そこに幹部陣の猛攻が突き刺さる。

触手が何本も断たれる。

アアアアアァァァァァァァァァッッ……

大きく仰け反った雌型の食人花。

次の瞬間、その上半身を切り離した。

髪を揺らし、逃走する。

後方からの魔法で凍てつきながらも、その体を街の端…崖から投げ出す。

下の湖を見て、安堵した。

だが…

ヴォン…と雌型の食人花の目の前に闇が現れた。

刹那、闇から九つの雷が迸る。

それは上半身だけになった雌型の食人花の顔を胸を腹を手を突き抜けた。

電流が流れ、魔石が粉々に砕け散る。

そうして雌型の食人花は、その体を灰へと変えていった。 
 

 
後書き
え? ベルが強すぎ? 一応Lev2ですし? まともには戦ってませんし? 
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