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許されない罪、救われる心

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24部分:第三話 歪んでいく心その二


第三話 歪んでいく心その二

「それでもね」
「それでも?」
「やっていいことと悪いことがあるから」
 咎める顔であった。しかしそれは犯人に対してである。そうした意味では如月に対してだがそれでも彼女が犯人とは気付いていない。
「教室のこともロッカーのことも絶対にやってはいけないことだよ」
「絶対になのね」
「そう、絶対にね」
 その通りだというのである。
「相手が誰でも絶対に許さないから」
「私もよ」
 弥生もだった。怒った顔である。
「こんなこと絶対に」
「二人共厳し過ぎない?」
 如月は自分がしていることなので眉を顰めさせてこう返した。
「それって」
「じゃあ聞くわよ」
 弥生はむっとした顔でまた如月に言ってみせた。
「如月は自分がそうしたことをされたらどう思うの?」
「どうって?」
「前先輩にいじめられていたでしょ」
「う、うん」
 その話をされると内心ぎくりとなった。実際に今でも嫌な思い出である。できることなら思い出したくはない、そうしたものであるのだ。
「それで。嫌だって思ったのよね」
「それはそうだけれど」
「じゃあわかる筈よ。あんなこと絶対にしたら駄目よ」
「絶対に許せないよ」
 葉月も言う。
「何があってもね」
「だから。あいつにも問題があるかも知れないし」
「嫌ってもいいけれどやったら駄目なことがあるのよ」
「今の城崎の主張はちょっとおかしいよ」
 二人はすぐに言った。
「何でそんなこと言うのよ」
「この前までいじめは絶対に駄目だって言ってたじゃない」
「それはそうだけれど」
 二人にそう言われると弱かった。無意識のうちに顔を下にやってしまう。実際のところ気は弱いままで何も変わっていないのだ。
「それでも」
「とにかくね。いじめられていた時のことを忘れないで」
「それを他の人にしたら絶対に駄目なんだよ」
「う、うん」
 俯き加減のまま頷きはした。
「そうなの」
「そう。だからね」
「あんなことをしている奴は誰か絶対に突き止めてやる」
 葉月の方が強気で怒っていた。
「何があってもね」
「そうよね、本当にね」
 二人は完全に怒っていた。如月にもそれはわかった。だがそれでももう彼女は自分をコントロールできなくなっていた。そしてそれに気付いてもいなかった。
 それでだ。また三人と話すのだった。
「そうか、弥生と葉月がな」
「あの二人には絶対に見つからないようにしよう」
 四人で屋上にいる。そこで話をしているのである。
「見つかったら絶対にまずいことになるよ」
「そうよね。先生にチクられたりしたら大変だし」
「それは止めておく?」
「おおっぴらにやるのはね」
 それは、というのだった。文月と霜月の言葉だ。
「もっと陰に隠れた。二人に見つからないのでいきましょう」
「具体的に何をするんだよ」
「靴を隠すとかね」
 まずはそれであった。
「鞄の中に何か入れるとか教科書に落書きすつとかね」
「そうするの」
「それでいくの」
「そう、それでどう?」
 こう三人に対して話す。
 
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