天王寺動物園にて
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第六章
「そうした常識は弁えているということだろう」
「そうなのですね」
「あの雷帝もな」
「敵にも礼儀を払うということですね」
「そうでなくては国、あそこまでの大国を治めることは出来ない」
「そうなのですね」
「ただ強く恐ろしいだけなら」
そうした要素のみならというのだ。
「国を治められない」
「それで、ですね」
「我々にもフェニックスを贈ったのだ」
今回はというのだ。
「敵であってもな」
「そう思うと雷帝さんも凄いですね」
「そうだな、そしてだ」
「はい、どうやらですね」
「今回の件が神託だったな」
「私の」
千歳は日毬に頷いて応えた、そしてだった。
蟹の殻を外してその中身を喰らいつつ酒、熱燗にしたそれを飲んでいるとだ。その目の前にであった。
一振りの赤く輝く刀身の刀が出て来た、千歳はその刀を手に取ってから日毬に話した。
「エペタムですね」
「確かアイヌ民族に伝わる魔の刀だな」
「はい、自ら動いて人を斬る」
「そうしたものだったな」
「ご存知ですか」
「私は武家の出だ、刀剣は好きでな」
それでとだ、日毬も蟹を食べつつ千歳に話した。
「それであらゆる国や民族の刀剣を調べていてだ」
「このエペタムもですね」
「知っていてだ」
それでというのだ。
「言ったのだ」
「そうでしたか」
「そしてだ」
日毬はさらに言った。
「その刀が君の新しい神具か」
「はい、私を護って自分から戦ってくれる」
「護り刀か」
「そう心の中で告げられています」
千歳はその刀を手に取りつつ日毬に話した。
「今は、そして」
「そのうえでだな」
「試練を乗り越えて強くなったことも」
「実感しているか」
「はい」
まさにとだ、千歳は日毬に微笑んで答えた。
「そうなっています」
「それは何よりだな」
「新たな神具を手に入れて強くなった」
「そうだな、ではな」
「はい、後はですね」
「この蟹と酒を楽しんでな」
日毬もせっせと蟹を食べている、甲羅を必死に外しつつ中身を食べている。そうしつつ千歳に言うのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「明日次の場所に行くか」
「そうしますか」
「この地でやるべきことは果たした」
千歳の神託による試練を果たした、それでというのだ。
「ではな」
「明日ですね」
「大坂を旅立とう」
「いい街ですから名残惜しいですが」
「私もそう思う、だが我々にはやるべきことがある」
日毬もやや名残惜しそうに千歳に応えた。
「だからだ」
「また来る機会を待つということで」
「明日旅立とう」
「それでは」
千歳は日毬のその言葉に応えた、そしてだった。
二人は今は蟹と酒を楽しんだ、そのうえで店を出る時に動く巨大な蟹の看板を見てモンスターでなくてよかったとも思った。
天王寺動物園にて 完
2019・1・22
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