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邪悪を断ち切るもの

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第四章

「これまでの異形の者達は貴様が生み出したな」
「如何にも。私は自ら命を生み出すが」
「只の命ではないな」
「皆兵器だ、下らぬこの世界を滅ぼす為のな」
「貴様の研究は世界を滅ぼす為のものか」
「俗物達に溢れたな」
「よくいる感じの狂人ですね」 
 千歳は科学者を見つつ嫌悪の目で述べた。
「これは」
「全くだ、そしてこの娘もだな」
「そうだ、私が生み出した兵器でだ」
 そしてとだ、彼は言うのだった。
「その中でも最高、モンスターになればだ」
「察しはつく、一人で一国を滅ぼせるまでにか」
「ドラゴンそれも私が生み出したそれになるのだかなら」
「外道の考えそうなことだ」
 日毬は淡々とだが怒りに満ちた声で述べた。
「貴様の様なな」
「俗物に私の考えはわからんよ」
「わかるつもりもない、そしてか」
「その娘は実は時間が経ると真の姿を出す様にしたが」
 その時間はというと。
「あと少しだ、脳に埋め込んだ細胞が動いてな」
「脳にか」
「他の兵器にも入れたが」
「この娘にもか」
「そうした、見るのだ」 
 見れば少女は呻いていた、床の上でもがき苦しんでいる。そしてその中で次第に闇の色をしてあちこちに触手や突起、足のある異常な外見のドラゴンになろうとしていた。
「苦しい、痛い・・・・・・」
「さて、間もなく彼女はドラゴンとなりだ」
 科学者の口調はいよいよ勝ち誇ったものになっていた。
「ここから出てこの国を滅ぼすがどうする」
「感謝する」
 日毬は少女に身体を向けている、今は科学者に背を向けそのうえでの言葉だった。
「聞きたいことは全て聞いた」
「その娘に殺される覚悟は出来たか」
「この娘を救い出せる方法はわかった」
「何っ!?」
「脳か」
 ンヤダクのものからドラゴンのそれになりつつある少女の頭を見た、その顔にも触手や脚が出ていて実に異様なものだ。身体も徐々に大きくなってきている。
 だが日毬はその異形の顔も冷静に見つつだった、浪泳ぎ兼光を抜き。
 少女に向けて一閃した、刃は少女の身体に当たらなかったが。
 確実に何かを切った、日毬はそのうえで科学者に背を向けたまま言った。
「私の目は武道を極めた者の目だ」
「武道だと」
「一旦極めそこからさらに進んだな」
 仏教でいう悟りを得た、だが悟ってもまだ先があるのが仏教だ。それは武道も同じで極めるつまり極意に達してもさらに腕を上げていけるのだ。
「その目を以てすれば身体の気の流れも強く見ればわかる」
「だからだというのか」
「禍々しいものが脳にあるのならだ」
 それがわかればというのだ。
「跡は強く見ればわかる」
「それでというのか」
「今この娘を異形に変えるものは断ち切った」 
 そうして潰したというのだ。
「後は優れた医師に見せて確実に取り除くがこれで大丈夫な筈だ」
「馬鹿な、その様なことが」
「馬鹿なではない、私の腕を知らず得意気に全て話した貴様の失態だ」
 日毬は科学者にこの事実を突きつけた。
「そしてだ」
「そして、今度は何だ」
「私はもう一つすべきことがある」
 科学者に背を向けたままだ、だが隙はなかった。少なくとも科学者が襲える様なそれは。
「それを果たそう」
「これからか」
「生きるだけで害を撒き散らし命を弄ぶ外道」
 まさに科学者のことだった。
「せめて一太刀で地獄に送ってやる」
「そんなことが出来るのか、私もまたこの身体を」 
 科学者もまた異形の姿になった、鬼から悪魔を思わせるそれになり日毬と彼女の隣にいる千歳に襲い掛かったが。 
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